スパイダーマン:ホームカミングの魅力
note第一稿。
これは、とあるサイトに寄稿したものの、結局採用されず、公開から1年以上たってしまって旬も過ぎたということで、2017年7月10日に送ったものを加筆・修正した記事。まだホムカミは見てない状態で、初心者向けの紹介記事を書くという荒業w
ついに、全米などで待ちに待ったサマームービー、スパイダーマン:ホームカミングが公開された。アメリカの批評家や関係者向けの最速試写会では軒並み高評価、世界各国で公開してからの出だしは評判・興行収入共に好調!日本は8/11公開。
スパイダーマンとは、映画では文字通りクモの力を持ったヒーロー。壁や天井などに張り付いて移動、超人的なスピード、パワーなどが代表的な能力。蜘蛛糸は、ウェブシューターというリストバンドのような自作の機械を使って発射しているのだ。
新作「スパイダーマン:ホームカミング」(略称:ホムカミ)は、スパイダーマンというクイーンズのご当地ヒーローにはなったものの、どうやってスーパーヒーローになるのかが大きなテーマだ。ホムカミはこれまで公開された「スパイダーマン」3部作と「アメイジング・スパイダーマン」2部作とは大きく異なる、全く別の物語だ。しかし、ホムカミで「どうやってスパイダーマンのパワーを手に入れたか、なぜスパイダーマンになったのか」は描かれていないので、それを知りたい人は見ておこう。
筆者が一番注目していること、それは、ピーターは15歳の高校生だということだ。今作で一番強調したい所であり、今までの映画で描かれてはいたが、薄かった部分だ。アイアンマンことトニー・スタークとの親子のような関係や、ヴァルチャーをはじめとしたヴィランとの戦いはもちろん、学校の課題と部活(ピーターにとってのヒーロー活動)、行事を両立に苦労する姿が描かれる。彼のひたむきに頑張る姿、敵に打ち勝つ強さは、多くの人々に共感と勇気を与えてくれるのだ。だから、応援したくなる。
主役のトム・ホランドさんのスパイダーマンの何が最高か。本当に若い所と他のヒーローと同じ場にいてはしゃぐ所、曲を聴きながら帰宅する所、貧乏だからゴミあさりで古いPCやDVDプレイヤーを探り出して来る所、そして宿題がある所。本人が言うには、映画での一番の違いはピーターが高校生である所だという。だから、初登場の「シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ」でそのような所を見せてくれたのは、本当に素晴らしい。また、スタークをさん付けで(英語だとsir)で呼ぶ所も若々しい。今までMCUは大人や神が主人公だったが、やっと10代の若者が主人公として出てくるのだ。それはMCUにまだなかった。宿題に追われてる所が、筆者も高校の時そうだったのでとても親しみを感じる。ピーターは金持ちでも神でもない。等身大の高校生なのだ。私たちと同じように。
また、ピーターの通うミッドタウン・サイエンス&テクノロジー高校は優秀な生徒が多く、成績の良さが大事な高校だ。それにちなんだ行事が、アカデミック・デカスロン大会。デカスロンとは陸上の10種目競技を指す。アメリカの高校の精鋭達が7科目の学力、エッセイ、スピーチ、インタビュー、合わせて10種目で成績トップを競う大会だ。日本の高校生クイズのようだが全く違う。とにかく準備が大変そうだ。
もう一つ、重要な学校行事がある。それはタイトルにもある「ホームカミング」だ。ホームカミングと聞くと、「家に帰る」と連想する人も多いであろうが、まさしくその通り。大人の事情で言うと、ソニーが独占していたスパイダーマンの映画化権をマーベルと共有した事で、ある意味帰ってきたと取れる。次に行事としての意味。ホームカミングはアメフトシーズンの秋に行われ、ホームカミングキング/クイーンが投票で選ばれ、ダンスパーティーのメインで踊るなどのお祭り騒ぎ的なイベント。海外の青春ものが好きな人には馴染みがあるかもしれない。そして、ピーターの帰郷という重要な意味を併せ持つ。アベンジャーズの存在するMCUで、ピーターは自分の居場所はどこか、どこに帰るべきかを見つけようとするのだ。
メインキャストは皆若い。ピーター・パーカー/スパイダーマンを演じるのはイギリスのロンドン出身のトム・ホランド(21)。今年は「シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ」でシリーズ初登場のスパイダーマン/ピーター・パーカーを演じ、英国アカデミー賞新人賞を受賞した。彼はとにかくかわいい。それでいて、ダンスや体操の経験者だから、運動神経がとても高い。劇中のスタントは、ほぼ彼自身がこなしている。それだけでなく、コントも面白い。劇中の自撮り映像はトムなのかピーターなのか、その境目が曖昧で見ていてとても微笑ましい。来月の来日が楽しみだ。
ピーターの友人関係も大きく異なっている。私が一番注目している人物が、ネッド。ピーターは、やっと頼りになり、しかも闇堕ちしない(かもしれない)親友に出会えたのだ。思いがけない形でピーターの正体を知ってしまった彼は、ピーターの右腕になってサポートする事を決意。だってヒーローのサイドキックなんて最高じゃん!彼の愛されボディとオタク気質は何とも魅力的だ。演じるのはフィリピン系アメリカ人でハワイ出身のジェイコブ・バタロン(21)。
他にも、ディズニーチャンネル出身のスター、ゼンデイヤ(21)演じる謎キャラのミシェル、ピーターが密かに恋心を抱いている年上のリズはモデル出身のローラ・ハリアー(27)、金持ちで傲慢なフラッシュは「グランド・ブダペスト・ホテル」に出演したトニー・レヴォロリ(21)など、個性豊かな人物がホムカミを彩る。現実同様、白人社会ではない多様性を取り入れているのはジョン・ワッツ監督のこだわりでもある。
スパイダーマン:ホームカミングは老若男女関わらず誰もが楽しめる、素晴らしい作品だろう。筆者は未見だが、傑作だと信じている。ぜひこの映画を見に、劇場でひと夏の思い出を。
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