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内容チラ見せ。深呼吸和歌集R1「自分の鉱脈にツルハシを振り下ろせ」


やったー、本が届きました!
中身をすべてお見せできないので、チラ見せします!


TOP10(これは、見本誌バージョン)

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はじめに

 私は今年の8月に六十歳になりました。子どもの頃から飽きっぽく、何をしても長続きしないのは今も変わらず。仕事や趣味、学びとあちこち手を出してはとっちらかったまま、アッという間に還暦を迎えました。

 還暦の実感は全くないのですが、それでも「六十歳」という年齢は、四十、五十の節目とは全く違うリアリティを持って私に今後の生き方を問い詰めてくるようです。残りの時間がくっきりと見えてしまう感じでしょうか。3年前、姉が六二歳で他界したことも関係しているかもしれません。

 そんなわけで、ここ1、2年は人生にどうケリをつけていくか、棚卸しのようなことをずっと考えていました。やり残していることをやらなくちゃ、と。その一つに、若いころ諦めてしまった「美大で学ぶ」ことがありました。かなり悩んだ末、2019年に武蔵野美術大学通信課程に編入し、現在は4年生で油絵の卒業制作に取り組んでいます。この年齢で悩みながら大きなキャンバスに向き合えるのは、大変な反面かけがえのないことだと噛み締めています。

 ただ、まだ別に何かやることがあるのでは、という気がしてきたのも事実です。絵を描く中での発見や、自分のこれまでの様々な体験 = 親との関係、介護、親の家の片付け、独身で生きる = など、こんな私だからこそ伝えられることがあるのでは?でもそれにはどうしても自分の言葉が必要、と思うようになったのです。と同時に、発する言葉への責任についても考え始めました。

 そんなことを強く思っていたからか、たまたま友人のアーティスト・今井陽子さんの展示があるというのを知り、久しぶりに再会しました。同い年でいつも刺激を受けている陽子さんとのおしゃべりは永遠に続きそうでした。中でも特に私が食らいついたのが、彼女が昨年から参加しているという、橘川幸夫さん主宰のYAMI大学深呼吸学部と、そこから誕生した純喫茶キツです。

 何だそれ?怪しい。怪しいとしか言いようがない・・・。でも怪しいの大好きな私は、何か直感が働いたのでしょう。早速あれこれ調べ、陽子さんとの再会から2日後、何と深呼吸学部に体験入学という形で参加していました。

 そこにはハワイやマレーシア、北海道や四国など各地から大の大人が20人近く集まり、4〜5時間に渡ってZoomで橘川さんの講義を聞いたり各自のプロジェクトを発表したりと、全くもってカオスなのにみんな楽しそうな場がありました。

しかも、その時すでに 62回目!

 何だか分からないけど、何かある。そのあと食いつき気味でアーカイブを視聴して思いました。「ここでは本質の言葉が使われている。だからみんな集まっているのだな」と。

 武蔵野美術大学もまだ卒業していないというのに、今度はYAMI大学深呼吸学部に正式入学しました。1年生です。(授業料は毎月たったの千円ですが!)

 その後、何回か新入生の立場で気楽に参加していましたが、ひと月も経たないある日、陽子さん経由で橘川さんから私宛に宿題が出されました。「何千とある、橘川さんの『深呼吸する言葉』から、自分に贈るものを108個選んで提出すること」

一瞬ひるみましたが、ワインを飲んですっかり大きな気持ちになっていた私は、速攻で返信していました。「受けて立ちます!」

 実は入学前に陽子さんにちらっと聞いたり、アーカイブや、過去のスレッドに触れて薄々感づいていたのですが、深呼吸学部は1年を経て次のフェーズに入っていると言うのです。橘川さんの講義を聞いて原理を理解する、という段階は過ぎ今度は受講生たちがそれぞれのプロジェクトに主体的に取り組み、二期生をリードしていく番、らしい。

 そこで参加者全員に1年次の卒業課題として出されていたのが、誰かに贈るための「深呼吸する言葉」を108個選んで手紙も添える、というものだったのです。新入生の私にしてみれば「みんな大変だなあ、でも頑張れー!」と沿道でのんきに旗を振っていたのが、まさか自分もプレイヤーとして駆り出されるハメになるとは・・・。

 ただ、言葉と真剣に向き合おうと決めていたのは私です。そこへ、天がちょっとハードなレッスンを課したのだと、武蔵野美術大学の(手付かずの)卒業制作は見ないことにして、深呼吸学部の課題に取り組み始めました。

 「深呼吸する言葉」とは、橘川さんが吐き出したものには違いないけれど一体何なのかハッキリわからないまま。

 後悔するのにほとんど時間はかかりませんでした。2004年から綴られている膨大な数の言葉たちは、どれも魅力的過ぎて選ぶことなんて到底できそうもありません。まして、あまりのボリュームに、じっくり読んでいたら人生終わっちゃう、とかなり青ざめていたその矢先。ふと、強く目に飛び込んできた言葉がありました。


  人間は完成しない。
  森は、海は、完成しない。
  一本の松も一隅のシダも名木とはなり得ない。
  立ち止まってはいけない。
  納得してはいけない。
  這ってでも、借金してでも、はみ出すのだ。
  これが、僕たちのパワフルな悟りです。     
                 (1978)

 「はみ出すのだ」! 

 揺さぶられるような何かを感じました。そして思ったのが、どの言葉も橘川さんが世界を取り込みふっと出てきたもので、一切の嘘がない。世界そのものだ。だとしたら、これまで深呼吸する言葉を発してこなかったどんな人とも呼応して、必要とあれば向こうから飛び込んできてくれるはず。ならば、言葉との一瞬の邂逅を信じよう、と。

 それから超倍速での脳内ダウンロードが始まりました。面白いもので、慣れてくると、必要とする言葉は何か光るような、飛び出してくるような不思議な感覚になってきました。そうして約350個が選ばれ、そこからさらに絞って。

 今、108個の言葉たちが集まりました。橘川さんから投げられ、それを私が深く吸ってまた再び世界に差し出した連中です。どうぞ一緒に遊んで下さい。

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