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しぜんのかがくep.49(7/5)H3ロケット成功!だいち4号について

H3ロケットは、7月1日(月)12時6分42秒~12時19分34秒日本標準時)に打ち上げに変更になり、無事成功!おめでとう!今回搭載された地球観測衛星のだいち4号についてお話しします。

H3ロケット

H3ロケットは今年2月17日についに2号機の打ち上げが成功しましたね!現在、運用中の大型ロケット「H2A」は今年度の50号機で運用を終え、来年度以降「H3」に完全に移行します。(H3ロケットについて詳しくは、しぜんのかがくep.35をご覧ください。)安定的に打ち上げが成功すると、今後20年かけて年間6機の打ち上げが予定されているようです。低コスト(50億円)、信頼性、柔軟性(受注から打ち上げまで迅速に実施)で、国が開発する衛星だけでなく、民間の受注や世界中から利用してもらえる商業ロケットを目指しているんですね。

だいち4号

JAXAと三菱電機がおよそ320億円をかけて開発した地球観測衛星の「だいち4号」が打ち上がる予定です。
「だいち4号」は、2014年5月に打上げた「だいち2号」の後継機です。(だいち3号は、H3ロケット1号機で2023年3月7日に2段目エンジンに点火できず打ち上げに失敗してしまいます。)だいち2号については、しぜんのかがくep.35(3/1)で解説していますが、ちょっと復習です。
だいち2号は電波によるマイクロセンサー(Lバンド(波長24センチ)合成開口レーダ)を搭載しています。
電波だとその反射によって地表面の凹凸がわかるので、夜でも観測できることがメリットです。台風など悪天候でも観測できます。
「だいち2号」ではの高い空間分解能(3m)によって、1月1日発災の能登半島地震の地盤変化の4mの隆起も見れたんですね。(実際に国土地理院が現地に行って測定した数値と一致したそうです)

だいち4号がすごいのは、さらに災害状況をいち早く広い観測網より正確なデータを取得するため、デジタルデータの処理能力がかなりアップしています。

JAXA サテナビより

新たに採用するデジタル・ビーム・フォーミング技術(受信した電波を高速にデジタル処理、同時に最大4方向の観測を可能)で今までだいち2号で50kmだった観測幅を4倍(200km)に拡大し、地殻・地盤変動などの観測頻度を向上させています。

また、東西方向に700 kmもの広範囲(世界のSAR衛星(電磁波観測衛星)の中でも最大級)を一度に観測でき、道路や建物の損壊など被害の把握に役立つそうですよ。例えば名古屋から仙台(宮城県)までの広範囲が一度に観測可能になります。

干渉SARSによる地盤変化

JAXA サテナビより

あと立体的により地形が見やすくなります。
地球を回転するスピードが、年4回から年20回に増えるので、同一場所の観測が今までの5倍にできるようになります。同じ場所の上空を何度も通過できるんですね。地面の動きがより詳細に観測できるようになります。より正確な火山噴火の前兆(マグマが上昇して地面が盛り上がる)なども観測できるようになります。精度は数センチから数ミリの単位の変化も捉えられるようになるとか。

JAXA サテナビより

これにより、発災後の状況把握のみならず、火山活動、地盤沈下、地すべり等の異変の早期発見など、減災への取組において重要な役割を担います。
そのほか、船舶の安全や森林破壊、農業にも役立てられるそうです。

※森林監視としては、だいち4号は伐採された水路まで見えるようになるとか。

先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)JAXA

https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/alos-4/

https://www.jaxa.jp/projects/sat/alos4/index_j.html

だいち3号は光学センサーがありましたが、失われてしまいましたね。やはりレーザーだとカラー映像ではないんですよね。気象衛星のひまわり8号もカラー画像の精度良くなったことでより防災上にも天候の予測精度が上がりました。火災や黄砂、森林の変化も見れますよね。(ひまわりは静止画像衛星なので日本周辺の画像のみです。速度約3キロメートル/秒(12000km/h)ジャンボジェット機の約15倍の速さ)
今後はだいち3号に変わる光学衛星の開発は、民間での開発に期待がかかっているそうですよ。

防災ひとこと

「宇宙からの目はだいちのミクロを捉える。」

地震による地盤変化や洪水時の水位変化なども今はその場所に行って測定したり、水位標を直接観測、護岸に設置された超音波式水位計、または観測カメラで測定しているんですよね。地震測定装置や観測機もその場所の揺れが大きかったり氾濫が激甚化するほど観測機が壊れて正確にうまく測定できなくなることもあります。その際にその影響のない宇宙から細かい範囲まで見ることができるのは本当に有用だと思います。

宇宙上空638キロの地球周回軌道から数ミリの範囲が捉えられるとなると、例えば顕微鏡の接眼レンズから対物レンズの長さは平均16センチなんですよね。この長さを宇宙上空638キロの高さとすると、顕微鏡で1.25 nmが見えるくらいですね。ウイルスでも80から120nmなので、1.25 nmはその10分の1。ナノの世界とは電子顕微鏡レベルです。
地球のミクロの世界が見えるほどとは驚きです。

⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく



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