自殺考 1

 自殺を考えている人へ、自殺未遂6回の経験者として申し上げます。

 「自殺は簡単でも、楽でもありません」

 1.自殺は失敗する可能性が高い。
  厚生労働省の統計では、平成27年(2015年)の自殺者は、24,417人、これに対して、自殺未遂(自傷行為)で病院へ搬送されたのは、60,136人で、約2.5倍、自殺を試みて、成功する確率は29%でしかありません。
  自殺者の4割近くに過去の自殺未遂歴があるという報告もあります、つまり、自殺者の半分は、最低でも、過去に1回は自殺に失敗しているというというということです。
  私の経験から言っても、自殺は簡単にできるものではありません。

 2.自殺に失敗して、重度の障害が残る場合がある。
  首吊り、入水、焼身自殺の場合、酸素不足により脳細胞が損傷し、障害が残ります。フランク永井氏は、首吊り自殺に失敗し、脳細胞に損傷を受け、会話が不自由になり、記憶力が落ちるなどの障害が残りました。
  脳細胞の損傷により、身体の自由を失えば、死にたくても死ねなくなります。
  これに加えて、入水自殺の場合は、肺の障害、焼身自殺の場合は重度のやけどによる障害が加わります。
  飛び込みや飛び降りの場合は、肢体損傷や切断、全身不随、脳障害、内臓障害などの後遺症が残ります。
  薬物自殺の場合、内臓への障害が残ります。かって自殺によく使われた農薬のパラコート(現在は製造販売禁止)の場合、肺線維腫を発症し、肺に障害が残ります。

 3.自殺は痛いし、苦しい。
  「完全自殺マニュアル」では首吊り自殺は、簡単で確実な手段だと書いてありますが、前述のフランク永井のケースでも判るように、あれは「嘘」です。
  実際に、首吊りをすると、縄が首に食い込んで非常に痛い。また、すぐに意識を失うとか言われていますが、そんなこともありません。
  首吊り自殺は、縄が首に食い込んで痛い、呼吸が止まって苦しい、顔は鬱血して爆発しそうになります。首吊り死体が舌を出しているのは、鬱血で舌が飛び出るためです。
  飛び込みや飛び降りの場合、実行してから急に気が変わり、死にたくなくなる場合があります。サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジから飛び降りて、生き残ったケースでは、飛び降りた瞬間に自分が悩んでいた全ての問題の解決策が判って、落ちている間、酷く後悔したそうです。このような場合、ひたすら後悔しながら死ぬわけですが、そうなるかどうかは、実行するまで判りません。
  青木ヶ原樹海で見つかった自殺死体には、助けを求めるメモが残っていました。人は簡単に気が変わります、即死でない限り、後悔しながら死ぬことになるかも知れません。
  薬物自殺の場合、前述のパラコートでは、肺が破れるほどの猛烈な咳に苦しめられたあげく、肺の機能が失われて窒息死しますが、死ぬまで、何日かかかります。それまで、咳や呼吸困難で苦しむことになります。
  市販薬や処方薬は、よほど大量に飲まない限り、死ねませんが、薬のオーバードーズも、非常に苦しい。私は誤って抗うつ剤を制限量以上飲み、オーバードーズになって、薬が抜けるまで、非常に苦しみました。

 結論として言えば、「楽に死ぬ方法はありません」。自殺は失敗する可能性が高い上、失敗したら、今より大幅に悪い状態になる危険性があります。

 私には、あなたの事情は判らないので、自殺するなとは言いません。しかし、自殺を考える時は「自殺は簡単でも、楽でもない」ことを忘れないようにしてください。