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人格発達の権利を!〜津久井やまゆり園事件から4年〜

神奈川県相模原市、津久井やまゆり園で19人の命が奪われた事件から4年の月日が流れました。

当時、息子は、5歳で、知的障害児が通う療育園に通っていました。
そして、私は専業主婦をしていました。

元児童指導員だった私は、児童発達支援の現場を経て、いまは、障害福祉サービスの事業所(就労継続支援と生活介護)で支援員(社会福祉士)として、働いています。

自分が成人施設で働くことになるとは…
想定外でした。

就労支援に関わるようになり、この一冊との出会いがありました。

高原浩さんの「飼い殺しさせないための支援 障害者が自立していく現場のリアル」(河出書房新社)です。

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高原さんは、板橋区成増にある就労移行支援と就労継続支援B型の事業所「ftl ビジネス・スクール/ビー・ワーク」の施設長・サービス管理責任者をされています。

利用者さんの自立、就労に向けて、一人ひとりと真剣に向き合う様子が著書からわかります。
感銘を受けたところに蛍光ペンで線を引いたら、線だらけになりました。


特に、最後の第18話「人格発達の権利を徹底的に保障せねばならぬ」は、泣きながら読みました。

高原さんが、NHKの「”ともに、生きる”〜障害者殺傷事件2年の記録〜」という番組を観た感想が書かれてあります。

事件で、刃物で数カ所刺され、負傷した男性。
家庭に戻り、年老いた両親との生活が再び始まりました。
父親は、息子と「心を入れて付き合うようになった」と。
息子さんがおにぎりを食べながら
「おにぎり、おいしい!」と破顔一笑。
母親は、言葉での受け答えができるようになった(=成長発達し続けている)息子の様子に感動して、「こんなの初めてです!」と笑顔をこぼされていたそうです。

この親子について、高原さんはこう書かれています。
「文字どおり、寝込みを襲われるような形で恐怖と不幸のどん底に突き落とされた家族でしたが、被告人や世間に対して何かを求めるのではなく、自ら行動することで成長するこの家族は、被告人の考えの浅さと間違いを無言で証明しているように思えます」

そして、被告人について
「被告人は、僕らの仕事についての本質を何一つ理解できないままに、その表面だけを撫でまわして、振り回されるだけ振り回されて離職したのではないかと、僕は推測します」

僕らの仕事についての本質…
その答えのひとつと思われることが、著書の締めくくりとしてあげられていました。

「この子らが、生まれながらにして持っている人格発達の権利を徹底的に保障せねばならぬ」

知的障害のある子どもたちの福祉と教育に一生を捧げた、社会福祉の実践家、糸賀一雄さん(故人)の言葉です。

障害福祉サービスが増えて
その事業所が増えて…
いつのまにか、
糸賀先生の存在や思想を知らない現場のスタッフが増えてしまいました。

津久井やまゆり園の事件の被告人も、そのひとり。

多くの犠牲者を出してしまったこの事件から、福祉の現場で働く者たちは何を学ばなければならないだろうか?

そして、私は当事者の親でもあります。

両方の立場から考え…
これからも
問題提議をして行きたいと思います。

亡くなられてしまった方々のご冥福をお祈りします。
今もなお、心身の痛みに苦しむ方々が少しでも癒されますように。

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