M-1という大会。

私が好きな芸人さんは、どちらかというと、漫才師が多い。コントを主体にやっている芸人さんが、たまに漫才をやっているのを見ると嬉しくなる。

本を読むのが好きな私は、言葉を巧みに使う漫才の方が、感覚的に好きなんだと思う。

フットボールアワーが優勝した2003年あたりからM-1を見始めた私は、数々の決勝のネタを見てきた。

そんな中で、TVやライブでネタを見ながら、「こんなに面白いのに、なんで決勝にいけないんだろう？」と好きな芸人さんや、面白い漫才師さんを見ながら思うことが多々あった。

が。

M-1にはM-1の戦い方があって、まずはそこにある程度合わせるようなネタであること。あとは「運」。これが大事。という結論に至った。

…これはあくまで私の持論。というか、当たり前のとこを言っている、とも思うので、あえて言う必要もないのかもしれないけど、思ったことをそのまま話してみたいと思う。

まずはネタについて。

M-1には４分という時間制限がある。1回戦にいたっては２分しかない。

当然、笑いどころはあればあるだけ良いのだが、ボケとツッコミをたくさん入れれば良いというわけでもない。時間制限がある分、質の高いものが求められる。余計なボケツッコミを入れれば、それが時間のロスになるし、笑いの量も減る。振りが長くて、ボケツッコミでドカンと笑いをとる、というタイプのネタであっても、質が高ければインパクトは残せる。小さい笑いがたくさんあるのも大事だが、それよりも、拍手笑いが起きるような場面が少なくとも３回あれば、うまくいけば、準決勝くらいまでは残れるのではないかと思う。

今まで優勝してきた人たちのネタを見ると、余計なやりとりがほとんどないように思う。ここはちょっと弱いな、と思うボケやツッコミがほぼない。４分という時間の中に、極限まで面白さを詰め込んでいる。前フリみたいなものが極端に少なく、笑いどころもわかりやすい。

故に、ネタの設定、言葉の選び方、間の取り方が普通の漫才よりも、かなりシビアになる。「ん？今のはどういうこと？」「そんな言葉知らない」…みたいなことを観てる側が思ってしまうと、考えてる間に時間が過ぎてしまう。かと言って、分かりやす過ぎると面白くないし、多少は捻らないと面白くない。そのバランスが難しい。

「大会」である以上は、ルールがないと成り立たないし、そのルールがあるからこそ、最大限に自分達の武器を活かして、活躍できる人たちが決勝にいき、優勝できるんだと思う。

あとは「運」。

ネタが面白い、というのは最低条件ではあるが、実力だけでは勝てないのがM-1の面白いところ。

決勝でもよく「ネタ順が…」と言われるが、決勝に至るまでの1回戦から順番は大事だし、それは運次第。

観ているお客さんも運によると思う。お客さんのリアクションによって、芸人さんのモチベーションが変わってくる、というのと、お客さんによって笑いどころが違う時もあるから、ネタの中の取捨選択をする時に、選択を誤る可能性がある、という影響があるから。単純に笑ってくれる、笑ってくれないという問題やお客さんの好みの問題もあるけど、こういう影響も少なからずあると思う。

あと、これはスポーツ選手にも言えることだと思うが、ちゃんと自分たちのピークをM-1に持っていけるか、ということも大事。運も実力も関わってくる部分。

色々とネタを観ていると、このネタを見るの、もう○回目くらいだな、ということが多々ある。普通は回数を重ねると面白い部分だけ残って、無駄なところは削ぎ落とされるのではないかと思うが、時々そうじゃないこともある。また、言葉が微妙に違っていたり、間の取り方だったり、テンポだったり、細かく見ていると、その時々で違っている。

この細かい違いがM-1だと、とても大事になってくると思う。その違いだけで、微妙に笑いの量が違ってくるし、制限時間があるからこそ、１つ１つの笑いの作り方がとても重要なのだ。その面白さのピークをちゃんとM-1にもっていけるかどうか、である。

…とまぁ、偉そうに語ってきたが、芸人さんはあえて言わないだけで、こんなことは百も承知だろう。こんなことを語っている私は全くネタを作れない。

だからこそ、面白いネタを１から作って、舞台でできる芸人さんを心から尊敬している。

私が好きな芸人さんで、M-1に参加しているのはEXIT、ニューヨーク、ダイタクの３組。でも正直、今の実力で優勝するのは３組とも厳しいと思っている。そりゃあ応援しているから、優勝してほしいとは思うけど、客観的には厳しいだろうな、というのが正直なところ。

EXITの漫才は面白いけど、M-1で勝てる漫才とはちょっと違う。ニューヨークはネタのチョイスを間違えず、ニューヨークらしい毒をちゃんと入れたネタができれば、決勝はいけると思う。ダイタクもネタのチョイスを間違えなければ、準決勝まではいけると思うけど、決勝にいくにはもうちょっと、何か（大さんが噛まない、テンション間違えない、とか…）が足りない。

今年は誰が優勝するのか？

今から楽しみである。