ボツ案②「結婚式」【伝えたいことが20年分ある#3】
前回はこちらから↓↓↓
「110」は「I love you」。
最愛の人へのダイイングメッセージ。
ロマンチックな謎が解かれる物語に1番ふさわしい舞台といっても過言ではないのが、結婚式です。
前の節で紹介した「恋愛心理学者」の話よりも、普遍的で感動的で王道ストーリーといえるでしょう。
永遠の愛を誓い合う日が舞台なわけですから、「I love you」というダイイングメッセージと相性抜群なのです。
ざっくりした物語は次の通り。
結婚式当日、新郎が式場の階段から転落死しました。突然のことで、新婦も親族も唖然としています。
新郎の手元には「110」という血文字が遺されていました。
警察が到着し、ダイイングメッセージの存在から何者かによって突き落とされたと判断されます。
刑事に尋問されたことをきっかけに、新婦は近頃の新郎の不審な動きに思い当たりました。
寝る前に突然スマホを持って外へ飛び出していったり、誰かとビデオ通話でもしているのか隠れるようにスマホの画面に向かってしゃべっていたり、奇妙な行動を目撃したことがあったのです。
もしかしたら、新郎は別の女性と関係を持っていたのかもしれない。
刑事はそう睨みました。
ちなみに、新郎の死の真相には2通りのアイデアがありました。
担当したプランナーが犯人だった場合、動機をどうしようかなあと悩んでいた記憶があります。
新郎とかつての恋人で、偶然新婦との結婚式のプランナーを受け持つことになったけれど、新郎は自分のことを忘れていてその腹いせに復讐しようとした。
確か、そんなアイデアがあった気がします。
後者に関しては、「別に犯人いらなくね?」という発想から思い付きました。
ダイイングメッセージの謎を輝かせるために事故死にするというアイデアはこの頃からあったんですね。
いずれにせよ、最後には「じゃあ、あのダイイングメッセージは何だったんだ!?」という疑問に行き着きます。
物語終盤、新郎が用意していた新婦へのサプライズムービーの存在を知った刑事は、訳もなく視聴しました。その映像を観て、刑事はダイイングメッセージの答えに辿り着いたのです。
刑事に促されて現場に来た新婦は、サプライズムービーを視聴します。
会場にある大きなスクリーンに映し出されたそこには、新郎が新婦への愛を語る様子が収められていました。
2人が付き合ったときから結婚式当日に至るまで、新郎は一日たりとも欠かさずに毎日短い動画を撮り続けていたのです。そのダイジェスト版を披露宴の中で流そうという計画を企てていたのです。
1つ1つの動画は、「愛してるよ」という言葉で締められています。
サプライズムービーが終わった後、新郎が新婦に向かって「愛してるよ」という言葉をリアルに伝え、余興が完結するというわけです。
「毎日愛していた証」を収めた動画のプレゼント。
なかなかロマンチックだと思いませんか?
ちなみに僕が実際にやろうとした企画ってことは内緒です。
思い付いた頃に付き合っていた子に向けて、こっそり毎日動画を撮り続けていたけれど、ふられてやめました(笑)
自分の披露宴では、それを超えるようなステキなことをしてみたいですね。
新郎からのメッセージを受け取り、新婦ははっとします。
たまに見かけた新郎の不審な動きは、動画を撮るための行動だったのです。
「寝る前に突然スマホを持って外へ飛び出していった」のは、その日の動画を撮っていないことに気付いて慌てて撮ろうとしたから。
「誰かとビデオ通話でもしているのか隠れるようにスマホの画面に向かってしゃべっていた」のは、新婦に隠れて動画を回していたからに他なりません。
かなり手の込んだプレゼントを用意していたわけですから、息絶える瞬間に新郎の頭をよぎったのはサプライズムービーのことでした。
「このまま死んでしまったら、今日『愛しているよ』と伝えられない」
そう思った新郎は、最後に「I love you」と書き遺そうとしたわけです。
結局「I lo」までしか書けなかったわけですが。
なんで最後だけ英語なんだ! というツッコミが来そうですが、この時点では僕もその答えを出していません。
ちなみに、完成した作品の中でもダイイングメッセージが英語である理由に明確に触れていませんが、一応答えを持っているので後で説明しますね。
今すぐ知りたい方は79ページを覗いてみてください。
余談にはなりますが、今、書いていて思い出したことを語らせてください。
結婚式のネタをやろうかなと思ってから、結婚式関連の動画を観漁っていたんです。
披露宴最後に流れるエンドロールとか、余興で新婦のお父さんが歌を歌っている動画とか、ウェディングプランナーの紹介動画とか。
いろんな動画を観て、めっちゃ泣いていました(笑)
この世にはこんなにも美しい場所がある。
そう気付けたからです。
結婚式という場所には、キレイゴトを綺麗な言葉に変える魔法が眠っています。大人になるにつれ忘れがちな、眩しいくらいに真っ白な幸せを何の気負いもなく感じることができるのです。
僕は今、結婚式でバイトをしているんですが、始めようと思ったきっかけも、長く続けられている原動力も、あのとき観た動画たちの中にある気がします。
話を戻しますね。
結婚式のネタに関していえばざっくりとした流れしか決まっていませんでしたが、突き詰めていけばなかなか面白い物語になりそうだなと今でも思います。
「I love you」というダイイングメッセージも輝けますし。
しかし、僕は結婚式のネタを捨てました。
普遍的で王道的なアイデアをやめて、家族の物語にしようと考えたのです。
「I love you」のダイイングメッセージを、家族に向けたものにしようと決めたのです。
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