住宅の移り変わりから見る戦後社会の変化

はじめに なぜ人々の住宅の変化に着目するのか

 今回私が、川崎市を中心に、戦後の社会の変化について調べ、まとめていくにあたり、人々の住宅の移り変わりに着目した理由は2つある。1つ目は、住宅の移り変わりは人口増加や人々の生活の変化を最も分かりやすく示すものだと考えたからである。2つ目は、エビデンスとなる、団地建設などの市政ニュース映画が多く残っていたからである。

1.どのような変化があったのか

 まず、川崎市の市政ニュース映画から、戦後の人々の住宅に、どのような変化があったのかを見ていきたい。




 これらの映像から分かるように、昭和30年代から、住宅街の造成や団地の建設が活発になり始めた。

2.どのような変化を示しているのか

 では、前述したような住宅の移り変わりは、戦後の社会の、どのような変化を示しているのだろうか。私は、人口増加や人口ボーナス期への突入を示している、と考える。まず、人口増加についてだが、実際に、川崎市公式ウェブサイトから「川崎市の世帯数・人口の推移(各年10月1日現在)」というデータを見たところ、昭和30年から、人口・世帯数共に増加していることが分かった。

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 また、本記事の「1.どのような変化があったのか」のところで添付した市政ニュース映画を観ると分かる通り、団地などが建設され始めた時期も昭和30年代からであった。さらに、戦後は、戦災による住宅不足の問題もあったという。

 これらのことから、人口増加や住宅の不足により、団地などを建設する必要があっった、ということが分かった。

 次に、人口ボーナス期についてである。まず「人口ボーナス期」とは、子供が減り、生産年齢の人口が多くなった状態のことを言い、高齢者が少なく、労働力が豊富であるため、経済発展をしやすいとされている。

 私は、住宅建設に関する市政ニュース映画を観た時に、ほぼ同時期にこれだけの数の住宅を建設していくのには、かなりの人手が必要になってくるのではないだろうか、と考えた。住宅が次々に建設されていく状況からは、働き手が増加した、ということも見えてくる。

おわりに 戦後の住宅の移り変わりから見えてくるもの

 ここまで、昭和30年代からの人々の住宅の移り変わりと、そしてそれが、社会のどのような変化を示しているか、ということについて見てきた。結果的に、前述したような住宅の移り変わりは、人口増加や住宅不足、人口ボーナス期への突入を示していることが分かった。しかし、現在は、高度経済成長期に建てられた団地は、廃止されたり、老朽化が進んだりしているという。


 私たちの演習では、社会が抱える大きな問題の一つである、インフラの破壊や老朽化についても考えたのだが、こうした、時代と共に移り変わる人々の住宅からも、社会の老朽化というものが窺える。


参考:

・市政100周年に向けて 川崎市映像アーカイブ、「工都に市営最大の住宅群 【昭和31年7月18日】」「長尾団地の造成はじまる【昭和34年11月25日】」「建設進む市営住宅団地【昭和37年12月25日】」

・川崎市公式ウェブサイト、2021、「グラフで見る各年10月1日現在の世帯数・人口」

・国土交通省、2000、「3.21世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について 中間報告」

・小室淑恵、2014、「人口オーナス期に経済発展するためには」

・川崎市公式ウェブサイト、2007、「川崎都市計画ー団地の住宅施設の変更(長尾団地の廃止)の告示の概要」

・国土交通省、建設白書

(リンクは全て本文に記載)

(最終閲覧日:全て2021年8月11日)