いつか
いま、わたしには好きな人がいます
わんちゃんみたいな髪の毛で、光に当たるととてもきれいな栗色をしています
裸足でいると、目線はそんなに変わりません
いつどこにいても、やさしく、大切なものに触るみたいに頭をなでてくれます
車に乗ってると、リングをはめた、ちょっと男の子らしいごつごつした指で手を握ってくれます
好きだよというと、かわいいねって言います
今度このカフェに行きたいというと、いつかいこうねって言います
会いたいというと、会いたいねって言います
わたしは苦しいよというと、ごめんねって言います
ほしい言葉をくれたことはありません
あげないようにしてるのかもしれません
あげたら後で苦しくなるのがわかってるのかもしれません
だけど、彼は時々うそをつきます
わたしが、ぽつりぽつりと自分の言葉を話すとき
彼は、僕もひとりのとき君のことを考えるんだといいます
だけど、彼が考えるのは、彼の元恋人のことです
わたしのことではないのです
彼は、元恋人から抜け出せないまま私の頭を撫でます
愛おしそうに、やさしく。
会いたくないと思うほど好きで
会えなくなることを考えると吐き気がするくらい好きです
いつか、こんな自分を自分が愛せるときがくるといいな、と
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