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回復期リハビリテーション病棟の義足リハで取り組むべき項目

これは私が200人近くの切断者を回復期リハ病棟で受け入れている間に大切だと気付いたことです。ぜひ多くの人に知ってもらえればと思います。

義足そのものは切断術直後の急性期病院でも作れますが、上に示した項目に取り組む必要があるため、急性期病院で作るのはお勧めしません。

断端の成熟

断端は手術後、時間の経過とともに形が変わっていきます(痩せます)。これを断端の成熟と言います。義足のソケットというのは、その時の患者さんの断端にピッタリとしたものを作らなければいけませんから、成熟具合に合わせて異なるソケットが必要になります。

例えば急性期病院で早めに仮義足を処方してしまうと、回復期リハ病院でリハビリをやっている最中にソケットが合わなくなり、新しい義足が必要になってしまいます。新しい義足を作ろうにも仮義足は1個しか作れませんので、この時点でこれは困ったぞ、、、ということになってしまいます。

本義足を作ればいいのでは?と言っても、本義足は申請してから支給許可が下りるまでに諸々の手続きもあり、1ヶ月以上かかるのが普通です。そのため本義足を作って対処することも術後の早い段階では現実的ではありません。

そのため断端の成熟がある程度進んでから仮義足を処方し、その後仮義足でしばらく過ごしたのちに、その義足が合わなくなってきたら本義足を申請するというのが理想だと私は考えます。

義足を履きこなすための身体機能を獲得する

これは言うまでもないかもしれません。切断手術の前に病気により動けない期間が長ければ長いほど手術後のリハビリ(理学療法)に時間がかかります。身体が衰えるのは早いですが、回復には時間を要するからです。反対に事故などで突然足を失うことになって術後も回復が早ければ、理学療法に時間を要することは少なくなります。ただし上記の断端の成熟のことを考えると、あまり慌てて退院するのはお勧めしません。

義足や断端の自己管理方法を習得する

シリコーンライナーの正しい履き方、シリコーンライナーの手入れの仕方、断端の日々のスキンケア、義足がきつい時の対処法、反対に緩い時の対処法、断端袋の活用の仕方、などなど色々と覚えなければいけないことがあります。

これらを急性期病院に入院している間に患者さんが確実に身に付けることは不可能ではないかと思います。急性期病院ではリハビリの時間が短いからです。とても大事なことなので、回復期リハビリテーション病棟に移ってからじっくりと学習することをお勧めします。

自宅での生活動作を身に付ける

生活動作というのは身の回りのこと、例えば入浴やトイレ、自宅内での移動手段、義足がない時の移動手段、調理、掃除といった生活に関連したあらゆる動作のことを指します。

若くて元気な切断者であればそれほど気にしなくてもいいでしょう。しかし、高齢、低活動な切断者であれば時間をかけて取り組んだほうがいい課題です。皆さんは義足ユーザーがどうやってお風呂に入るか、自宅内での移動はどうすべきか分かりますか?

回復期リハビリテーション病棟入院中に作業療法士が関わって取り組むことが理想と考えます。

退院のための準備をする(退院調整)

高齢、一人暮らし、エレベーター無しの2階以上の住居であれば元の生活に戻るハードルは上がります。その患者さんが義足を履けるようになったとして、その時の移動能力で元の家に戻ることができるのか判断しなければいけません。若い切断者であればエレベーター無しの住居であっても何とかなるでしょう。

元の家に戻れないのであれば新しい住居を探さなければいけません。戻れたとしても介護保険を利用して住居の改修をしたり、ヘルパーをお願いしたりすることも多いです。MSW(医療ソーシャルワーカー)の力が必要です。

高齢者の場合、退院時の移動能力を維持するために訪問リハビリを活用するという視点も大切です。若い人と違って放っておくと歩けなくなっていくことが多いからです。

以上、回復期リハビリテーション病棟の義足リハで取り組むべきことでした。皆様の参考になれば幸いです。

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