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橈骨遠位端骨折後の痛みについて|2023.3.31配信予定

本ブログはYouTubeの台本を、そのまま掲載しています。分かりやすいオリジナルイラスト付きで確認したい方は、YouTubeKindleで確認してください。



はじめに

橈骨遠位端骨折後の痛みがなかなか治せない、、
前腕〜手に痛みがあるけど、何が原因かわからない、、

普段、下肢や体幹ばかりを見ていると、

上肢の知識が乏しくなってしまいますよね。

少しでも知識をインプットしておく事で、

この後のPT人生での、理解度が激変します。

何かと上肢疾患を合併している症例を持つ事があると思いますが、

0知識だと、何も考えられません。

ところが1でも知識があると、少しは考える事ができ、

それが繰り返される事で、自ずと深まっていきます。

そんなわけで、この動画を最後まで見る事で、

既往歴によくある、橈骨遠位端骨折後の痛みについて、

要点を押さえて理解できます。

りはメモを、今後のPT人生をより良くするためのきっかけに使ってもらえると嬉しいです。

いいねやチャンネル登録もお忘れなく。

では、本編に進みましょう〜。

本編

正中神経領域の痛み

詳しい話に入る前に、橈骨遠位端骨折について、

簡単に説明しちゃいましょう。

橈骨遠位端骨折は、転倒により受傷することが多く、

高齢者の四大骨折しても有名な骨折になります。

ちなみに四大骨折は、橈骨遠位端骨折に、上腕骨頸部骨折、脊柱圧迫骨折、大腿骨頸部骨折を加えたモノですね。

橈骨遠位端骨折は、一般的には遠位の骨片が手背方向にずれているGolles 骨折が多く、

その他、手掌方向にずれているSmith 骨折、

関節内骨折で、遠位骨片が手根骨と共に背側にずれている背側Barton骨折、

関節内骨折で、遠位骨片が手根骨と共に掌側にずれている掌側Barton骨折、

関節内骨折で、橈骨茎状突起に斜めに骨折線が入るchaufleur 骨折などがあります。

保存療法が主体でしたが、近年ではlocking plate や創外固定が発達し、

安定した固定性とアライメントが獲得できるので、手術療法が選択されることも多いのが特徴ですね。

ではでは、正中神経領域の痛みに話を戻して、

橈骨遠位端骨折後では、正中神経領域に、

痺れに伴う痛みが出現する事があります。

正中神経は手根管を通っているので、

何らかの要因により、手根管が圧迫され、

手根管の内圧が高まる事で、正中神経に障害をきたし、

痺れに伴う痛みを発生させている、と考える事ができますね。

ちなみに手根管は、

手根管は側面・底面は手根骨、

上面は横手根靱帯で形成されるトンネルで、

横手根靭帯は、橈側では舟状骨結節から大菱形骨側面に付着し、

尺側では豆状骨から有釣骨鉤に付着しています。

さらにトンネルは小管と大管に分けられ、

小管には、橈側手根屈筋が通過し、

大管には、正中神経と浅指屈筋腱、深指届筋腱、長母指屈筋腱が通過しています。

その中で、正中神経は最も上面に位置し、

横手根靭帯の直下を通過しているのがポイントですね。

また、手根管は近位手根レベルと遠位手根レベルに分けられ、

遠位手根レベルのほうが空間が狭くて、手根管内圧が上昇しやすいのが特徴になります。

そんなところで、橈骨遠位端骨折後に、手根管に影響を与える原因として挙げられるのは次の二つ。

骨折による腫脹
固定肢位による圧迫

まずは、骨折による腫脹について、

骨折による腫脹や浮腫、血腫の影響で、手根管内圧が上昇するとの報告があり、

また、疼痛により浅指屈筋腱、深指届筋腱、長母指屈筋腱などの手指屈筋群が緊張する事で、

その影響により、横手根靭帯と屈筋健の間にある、正中神経が圧迫を受けやすくなり、

結果として痺れに伴う痛みが生じます。

次は、固定肢位による圧迫について。

手関節掌屈位では、正中神経が横手根翔帯と屈筋群の間で押しつぶされるとの方向か上がっていて、

保存療法として、ギプス固定が選択され、

掌屈位で固定されている場合、

手根管内圧の上昇に伴って、正中神経が圧迫され、

痺れに伴う痛みが発生します。

これらの原因により、痺れに伴う痛みを発生させない方法としては、次の3つが有効です。

手指の関節可動域訓練

骨折が生じると炎症反応によって、

動脈血が増加し、静脈血がうっ血することで

血発成分が血管外に漏出します。

この、血漿成分が血管外に漏出した状態が、いわゆる浮腫になりますね。

浮腫によって、手根管内圧が上昇し、痺れに伴う痛みを発生させないためにも、

浮腫の予防が必要になります。

特に、手背には皮静脈が豊富に存在していて、皮膚のゆとりが手掌と比べて大きいので、

橈骨遠位端骨折後は、手背の浮腫に注意が必要です。

この浮腫の予防に効果的なのが、手指の関節可動域訓練。

保存療法としギブス固定している状態でも、

手指を動かし、血管外に漏出した血漿成分を血管内に戻す事で、浮腫の軽減かつ予防が期待できます。

限られた可動域かもしれませんが、動かせる範囲で、

手指の可動域訓練を積極的に行いましょう。

最初は自動運動、次は自動介助の順で行えるといいですね。

手外在筋や手内在筋の収縮訓練

次は、手外在筋や手内在筋の収縮訓練について。

ギプス固定や、長期間の不動によって、手外在筋や手内在筋の収縮がない場合、

これらの筋組織の伸長性が低下したり、筋組織同士が癒着してしまったり、

場合によっては、拘縮に落ちいってしまう事も考えられます。

伸長性低下や拘縮を併発すると、可動域訓練も行いづらくなり、

浮腫予防への介入も難しくなるので、しっかり介入していきましょう。

特に、骨折や受傷などにより損傷された周辺組織は、
 
修復過程の中で近くの組織と癒着することがよくあります。

癒着を防ぐ意味でも、個々の筋肉の筋収縮をしっかりおこなうのがポイントになりますね。

外在筋として、浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋、総指伸筋、示指伸筋,小指伸筋あたりの、

手内在として、として、虫様筋、掌側骨間筋、背側骨間筋あたりの筋収縮を促せられればOKです。

個々の筋作用を確認して、その動きを行うのもいいですが、

いちいち調べるのが大変!という方は、

Six pack execiseよ呼ばれるエクササイズがあるので、こちらを行ってみてください。

それぞれのエクササイズを、複数回行えれば、

いい感じに個々の筋肉の収縮を促せます。

固定肢位の改善

ギブスが、掌屈位固定になっている場合は、

中間位での固定を提案してみましょう。

これはなかなか難しいかもしれませんが、ギブスの巻き直しなどのタイミングで、

掌屈位では痺れが出る可能性を説明し、

固定肢位の変更を提案してみましょう。

手関節尺側部の痛み

橈骨遠位端骨折では、遠位腕尺関節に存在している

三角線維軟骨複合体(TFCC)が損傷されるケースが多く、

これにより、手関節尺側部に痛みが生じます。

三角線維軟骨複合体は、

三角線維軟骨、橈尺靭帯、メニスカス類似体、尺骨月状骨靱帯、尺骨三骨骨靱帯で構成される複合体で、

橈骨、尺骨、月状骨、三角骨の間に位置して、

遠位腕尺関節の安定性の確保と

手掌からの圧への緩衝の役割を担っています。

橈骨遠位端骨折の受傷に伴い、三角線維軟骨複合体も損傷を受け、

手関節の運動、特に回内や回外を行うことで、

ストレスが加わり、痛みが生じるってわけですね。

三角線維軟骨複合体が損傷しているかどうかの評価はこんな感じ。

TFCCストレステスト(unocarpal stresstest)

肢位:座位
手順:
①片方の手で対象者の肘把持し、もう片方の手で対象者の手を手関節尺屈位で把持する
②手関節を最大尺届させ、尺側部に軸圧を加える
③さらに前腕を回内or回外させる
判定:
手順②or③で手関節尺側部痛が出たら陽性

この検査で陽性になった場合、

つまり、三角線維軟骨複合体が損傷している時は、

安定性を高めるための組織が、不安定になっていて、

ストレスが、カナリかかりやすくなっている状況ともいえます。

すぐになんとかしてあげたいところですが、組織の損傷になるので、

理学療法介入で改善させるのは困難になります。

できる事としては、治癒力による改善をできるだけ妨げないよう、

「回内・回外を避けるように」という、動作指導くらいになりますね。

加えて、回内・外を防ぐような、サポーターの使用の推奨とかも行なってもいいかもしれません。

橈骨遠位端骨折後で、手関節尺側部に痛みが生じている場合は、

三角線維軟骨複合体の痛みの有無を確認しつつ、

三角線維軟骨複合体由来で痛みが発生していそうであれば、

無理な手関節の運動は控えるような指導を行いましょう。

手関節手掌側の痛み

手掌側の痛みについて、

「VISL、尺骨突き上げ症候群、手関節背側組織の拘縮」、の3つがポイントになるので、

それぞれ説明していきましょう。

VISI変形
尺骨突き上げ症候群
手関節背側組織の拘縮

まずは、VISI変形について。

VISIとは、X線画像で診断にて、

舟状骨と月状骨で成される角度が、30°以下の状態、

つまり、月状骨が掌側回転している状態を示します。

橈骨遠位端骨折の受傷時に、月状三角骨靭帯や、橈骨手根靭帯が損傷すると、

月状骨は掌側回転します。

この状態になると、手関節の掌屈運動時に、

正常より早く、橈骨と月状骨が衝突し、手関節手掌側に痛みが生じます。

アプローチ案としては、

月状骨を背屈させた状態でのROMexを行い、できる範囲での整復を試みましょう〜。

次は、尺骨突き上げ症候群について。

橈骨遠位端長が短縮し、橈骨遠位関節面に対して、

尺骨遠位関節面遠位に位置している状態になると、

尺骨と三角骨の間、もしくは尺骨と月状骨の間の圧力が高まります。

手関節掌屈運動では、月状骨と三角骨が掌側に回転するため、

尺骨と月状骨・三角骨の間に存在する、三角線維軟骨複合体の掌側に圧が集中し、

三角線維軟骨複合体が損傷されることで痛みが発生します。

ちなみに、正常であれば、

橈骨遠位関節面に対して、尺骨遠位関節面遠位はほぼ同じ面に位置していて、

この橈骨遠位関節面に対して、尺骨遠位関節面遠位に位置している状態の事を、

プラスバリアントと呼ぶので覚えておきましょう。

さらに、プラスバリアントによって、三角線維軟骨複合体由来の痛みが誘発される病態を、

尺骨突き上げ症候群とも呼ぶので、こちらも押さえておきましょう〜。

アプローチ案としては、

理学療法介入で出来ることは限られてしまうので、

サポーターの推奨などで、患部の安静を図る事をおすすめします。

最後、手関節背側組織の拘縮について。

手関節背側の靭帯や関節包が拘縮すると、

手関節掌屈時に、月状骨の掌屈が制限される事になります。

そうすると、掌屈時の月状骨の運動が制限され、

代わりに有頭骨が動き、

それにより、月状骨と橈骨に圧迫が加わり、痛みが発生します。

このケースのアプローチ案としては、

拘縮している組織、背側の関節包や靱帯のストレッチが有効になります。

おわりに

僕も数年前までは、給料も時間もほとんど遊びに使ってしまい、

自分の不甲斐なさを、人のせいにしてしまう様なPTでした。

ところがある患者さんとの出会いから、

PTは患者さんの人生を背負っている事、知識がないのは罪にもなりうる事を実感し、

勉強を始める様になりしました。実際には、詰め込みすぎて挫折したり、

学習間隔が空きすぎて、身にならなかったりしたのですが、

そんな中、学習を習慣化させるコツを掴んだ事で、PTとしての人生が激変しました。

そんなところで、今日のまとめです…

今日も最後まで見てくださりありがとうございました~。

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