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筋トレするなら摂るべき「脂質」の最新エビデンス


 筋トレで重要な栄養素といえばタンパク質で、どちらかというと敬遠されやすい栄養素が脂質です。

 しかし、近年、脂質が筋トレによる筋肥大や筋トレ後の筋肉の回復を促進する効果が報告されるようになりました。

 その脂質が「n-3系多価飽和脂肪酸(オメガ3)」です。

 オメガ3による健康への効果については以前から報告されていますが、最近になって筋トレへの効果についてのシステマティックレビューが報告され、新たな科学的根拠(エビデンス)が示されているのです。

 今回は、オメガ3が筋トレ後の筋肥大や筋肉痛に与える影響についての最新エビデンスをご紹介しましょう。



◆ n-3系多価飽和脂肪酸(オメガ3)について知っておこう!


 私たちが摂取している脂質は、その主な構成成分である脂肪酸の違いによって性質や機能が大きく変わります。

 脂肪酸の骨格は炭素でできており、そのすべてに水素が結合して飽和されているものを「飽和脂肪酸」といい、肉の脂やバター、ソーセージやベーコンなどの加工肉に含まれています。

 飽和脂肪酸に対して、炭素が水素によって飽和されていないものを「不飽和脂肪酸」といいます。不飽和脂肪酸は炭素と結合する数によって「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。

 一価不飽和脂肪酸の代表はオレイン酸で、オリーブ油の主成分であり、その他にも菜種(キャノーラ)油やアーモンドなどのナッツ類にも多く含まれています。

 多価不飽和脂肪酸はn-6系とn-3系にわけられます。一般的には、n-6系多価不飽和脂肪酸を「オメガ6」、n-3系多価不飽和脂肪酸を「オメガ3」と呼ばれています。

 オメガ6の代表はリノール酸であり、大豆油やコーン油などの一般的な調理油として使用されています。オメガ3の代表はαリノレン酸やEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)です。αリノレン酸はエゴマ油や亜麻仁油に多く含まれています。EPAやDHAは魚の油に多く含まれています。

 その他にマーガリンやショートニングといった工業的に半固形状態の油脂をつくる副産物として生成される脂肪酸がトランス脂肪酸であり、揚げ物や焼き菓子、スナック菓子、ファーストフードのような超加工食品に含まれています。

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 飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸は体内でも合成できますが、オメガ6やオメガ3といった多価不飽和脂肪酸は体内で合成することができないことから、食事で補給する必要がある「必須脂肪酸」になります。

 そして、筋トレの効果を高めてくれるのが必須脂肪酸である「オメガ3」なのです。

 オメガ3の摂取は心臓の機能改善や血圧の低下、うつ病や認知機能の改善に有効であることが広く知られています(Jiao J, 2014)。また、運動パフォーマンスにおいても疲労の回復や持久力の向上、免疫機能の維持などに効果があることが報告されています(Żebrowska A, 2015)。

 そして、筋トレへの効果についての研究結果も増え、2021年7月、システマティックレビューがポリテクニカ・デ・マドリード大学のLópez-Seoaneらによって世界で初めて報告されたのです。

*システマティックレビューとは、これまでの研究結果をまとめて解析し、全体としてどのような傾向があるかを示すエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

 López-Seoaneらのレビューをもとにして、オメガ3が筋トレの効果に与える影響について見ていきましょう。


◆  オメガ3が筋タンパク質の合成に与える効果


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