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理学療法士が知っておくべき人工呼吸器の基本

1.はじめに

人工呼吸器と聞くと

『うわぁ、難しそう・・・』
『人工呼吸器が繋がれた患者さんの理学療法なんて怖くてできない…』
『呼吸の勉強はしてみたけど英語や難しい単語ばっかりで理解できない…』

などなど、あなたも強烈な苦手意識を持っていないでしょうか?

筆者も昔若いときはそうでした。

でも目の前には自分の患者さんがいます、分からないでは済まされません。

職場の先輩に聞いても、よほど呼吸に詳しい先輩がいない限りそこまで詳しい返事はかえってこないのではないでしょうか?

それもそのはずで、少し勉強したからとか呼吸療法認定士の資格を持っているからとか、その程度の勉強だけでは人工呼吸器の理解は難しいです。

筆者も片っ端から教科書やら文献やら調べたりしましたが、自分が分からないところを理解するための情報がなかなか見つからなくて大変苦労した記憶があります。

その後も様々な研修会に参加して、多職種から多くのことを学び、臨床で悩む日々を過ごしてきた結果、今では人工呼吸器に自信が持てるようになりました。

そして、呼吸分野の認定理学療法士になり日々の臨床で人工呼吸器に接することが楽しみとなっています。

結論から言うと

人工呼吸器がついている患者さんは安心します

ついていなくて呼吸状態が悪い患者さんの方がよっぽど不安です。

そこで今回、今まで学んだことをまとめてみました。

協力してくれる理学療法士、作業療法士さんの意見を取り入れて少しでも臨床に直結するように作成しましたのですぐにでも臨床に活用できる内容です。

また、ご購入頂いた方はフォローアップします、質問にもしっかりお答えしますのでご安心ください。

目次

1. はじめに
2. なぜ人工呼吸器を使用するのか
 2-1. 人工呼吸器の目的
 2-2. 酸素投与と換気の補助
 2-3.定流量システムと高流量システム
3. 人工呼吸器のモードについて
 3-1.代表的な3つのモード
 3-2.調節換気(CMV)について
 3-3.SIMVについて
 3-4.PSについて
 3-5.トリガーについて
 3-6.CPAPについて
 3-7.PEEPについて
4. おわりに

2.なぜ人工呼吸器を使用するのか?

そもそものところを学んでいきましょう。

2-1 人工呼吸器の目的

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非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation,:NPPV)

(つまりマスク換気)

なのか

侵襲的陽圧換気(invasive positive pressure ventilation,:IPPV)

(つまり気管内挿管)

にもよるのですが、代表的なと目的は上記となります。

NPPVとIPPVについては別の機会に説明しますが、ごっちゃにして考えてはいけないのが

気管内挿管と人工呼吸器管理は同義ではない

ということです。

画像2

挿管には挿管の目的があります。

今回は人工呼吸器についてのお話なので詳細は割愛しますが、同様の理由で人工呼吸器管理には人工呼吸器管理の目的があります。

いくつか注意点があります。

まず、酸素投与と換気の補助は分けて考えること。

人工呼吸器においては同時に行うことができるので、混合して考えてしまいがちですが、ここを分けて考えられないと呼吸療法を理解することはできません。

これは1-2.の項で説明します。

もう一つ大事なことは

人工呼吸器が疾患の根本的治療をしているわけではない

ということです。

人工呼吸器が必要となる疾患・病態は実にたくさんありますが、これらの疾患や病態の結果として人工呼吸器の利用が必要となっているのであって、人工呼吸器を装着すればこれらが改善するというわけではありません。

疾患の治療の橋渡しとしての役割を担っているので、必ず原疾患が何なのか、どのような治療をしていてどれくらいで離脱できそうな状態なのか、そこが大事なのです。

2-2 酸素投与と換気補助

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