新曲"Doomsday"とクロスオーバーについて語ります。

regulusです。

本日投稿いたしました、新曲"Doomsday"についてお話させていただければと思います。

こちらが歌詞になります。

歌詞 (英語は訳例)

忘れていた思い出は夢の中にあるの?
Are there memories that I've forgotten in my dreams?
歪んでいた愛情もこの視界も消えて
My warped affections and this vision are gone

揺れる揺れる命が
夜明け前に潰えることすら
"儚い"と呼ぶ?
Can you call it "ephemeral" that a wavering life will crumble before the dawn?
君を守る機構が
徐々に君を壊していくなら
If the system that protects you is slowly destroying you
そんな理不尽が
How inexcusable

終わりの中で伝えたい感情が
きっときっと君を君を
消し去ってしまうから
In the doomsday, the emotion that I want to tell you will erase you

全て無くしてしまえばいいよ
Let it all go
それで何も感じないと
心が叫ぶなら

So if your mind is screaming at you to feel nothing

せめてもう一度だけ
声を聴かせて
At least let me hear your voice one more time
いつか同じように
君のことを呼べるように
I hope one day I can call you in the same way

凍りついた血液は燃えるように熱く
Frozen blood is hot as a flame
同じように想っても境界線を超えて
Even if I loved you like I did before, it would still violate the borderline

指に触れる温度を
当たり前に奪えることすら
"切ない"と呼ぶ?
Can you even call it "heartrending" that you take away the temperature of your touch on your fingers?
誰も罪を裁けないくせに
君を壊しているなら
If they're destroying you, despite the fact that no one can judge you for your guilt
そんな理不尽が
How inexcusable

終わりの中で伝えたい言の葉で
きっときっと君を君を
失ってしまうから
In the doomsday, I perhaps lose you because of the words I want to tell you

全て無くしてしまえばいいよ
Let it all go
それで何も感じないと
心が叫ぶなら
So if your mind is screaming at you to feel nothing

せめてもう一度だけ
声を聴かせて
At least let me hear your voice one more time
いつか同じように
君のことを呼べるように
I hope one day I can call you in the same way

(あなたの声が今僕を呼ぶ
(Your voice is now calling me
まだ独りで歩けないからと
"Because you can't walk alone yet"
優しい嘘は遠く儚く
The kind lie is far and ephemeral
ただ綺麗で僕を導いていく)
It's just beautiful and guiding me)

正しいことも教えてもらえないで
I can't even get them to tell me what's right
腕を伸ばす光求め
人で在り続ける為に
Reaching for the light to stay human being
答えはもう要らないの
I don't need any more answers
独り善がり、それでいいよ
I don't care if I'm called self-satisfaction
君の為になるなら
If that's what's best for you

終わりの中で伝えたい感情が
きっときっと君を君を
消し去ってしまうから
In the doomsday, the emotion that I want to tell you will erase you

全て無くしてしまえばいいよ
Let it all go
それで何も感じないと
心が叫ぶなら
So if your mind is screaming at you to feel nothing

せめてもう一度だけ
唇(くち)を塞いで
At least cover my lips one more time
いつか同じように
君のことを愛せるように
I hope one day I can love you in the same way


今回も、自身7枚目のアルバム「Absolute Zero」収録曲で、アルバムの物語に沿った内容の歌詞になっています。

基本的な設定などについては、以前の記事をご覧頂けると幸いです。

さて、今回のタイトルの"Doomsday"という単語は、終末とか、最後の審判の日といった意味の言葉です。

ただ、実は"Absolute Zero"の物語としてはそこまで世界規模の終末が訪れるようなものではなくて、どちらかというと主人公たちを中心とした比較的小規模なもので、"Doomsday"という単語はこれら登場人物の心象を比喩した意味合いの方が強いということは言っておきます。

また今回は、"Borderline"などでは具体的に描かれなかった設定上の内容が、ある程度分かるような歌詞になっています。前にも述べたように、僕はリスナーが持つ「解釈の幅」というものを大切にしたいと考えているので、正解はこれです、というような作品は作りたくないのですが、これはどちらかというと正解ではなくて問題文に与えられた条件みたいなものですね。

むしろ、個々の解釈を持つという意味では今回の曲はかなり難解なのかなとすら感じています。どちらかというと英語の訳文の方が、主語や所有格を表現せざるを得ないので、日本語の正式な歌詞よりもヒントが得やすいかもしれません。

それと混乱させてしまないように言っておきますが、途中に出てくる"Beautiful Lie"の歌詞の一部は、完全にクロスオーバーであり世界観や物語は別です。過去の作品を持ってくるという、音楽的に試してみたかったことだということと、ある種のファンサービスのようなつもりで入れました。

しかし、他でもない"Beautiful Lie"をわざわざ選ぶのにはそれなりに理由があり、結果としてそれが"Doomsday"をより彩る要素にしたかったというのは間違いないですね。

僕の作る曲は、だいたい察しがつくかとは思いますが、ある程度パターンというか傾向があります。グループ分けできると言ったほうが近いかな。そして今回のそれは、"ABBY"や"Beautiful Lie"などの系譜です。これは曲調に限った話ではありません。作品としてというか、世界観としてという意味です。

"Doomsday"での登場人物は、前述の通りアルバム"Absolute Zero"で共通なので"Borderline"などとも同じわけですが(ちなみに"Borderline"を意図的に意識させるような書き方をしている箇所もあります。これもクロスオーバーと言えばそうかもしれませんが、同じ物語ベースなので関係がないとは当然言えないですね)、"Beautiful Lie"の歌詞をこの世界に持ってくることは別世界の人物の心情や状況を想起させることによって、「全く関係はないけど、こういう風になった世界も何処か別に存在していた」ということを示唆することになり、ある意味で演者が観客に語りかける「第四の壁を破る」ような要素だとも言えるかもしれません。この際、"Beautiful Lie"の世界の語り手が我々聴衆に対して語りかけるのか(作者である僕でさえ、作品の中から語りかけられるのは不思議な話ですが…)、"Doomsday"の世界へ、つまり別世界から別世界の演者同士でなのかは正直言って僕にも分かりませんし、答えはないでしょう。

ごめんなさい。この文章自体、難解すぎることは自覚しています。しかしこのようなことを踏まえると、これは作品同士でそれぞれ独立した別世界の要素のマッシュアップであり、それはやはり「クロスオーバー」という言葉でしか説明しようがないんですよね。先ほどの系譜が同じだというのは、毛色もテンションも掛け離れた世界観同士では、マッシュアップしようとしても上手く溶け合うはずがないということです。(例えば、突然この曲に"FUTURE!!"を持ってきても、意味のわからないことになるでしょう笑)

本題に戻りますが、今回の曲はやはり難解です。その理由の一つに、語り手が一人に固定されていないということがあります。

つまり、主人公であり物語の核を為す女の子側の視点で心情を表す一方で、この曲の主要部分を構成しているのはもう一人の男の子側の視点であるということです。これらが入り混じって表現されていることが、文章として通して理解しようとすることを妨げる大きな要因になっているように思います。(自分で作詞しておいてバカみたいな発言ですが)

では、その主要部分というのが何なのかというと、歌詞にも「理不尽」という単語が出てきていますが、「周囲に対する批判や絶望」なんですよね。

「境界線」を超え、人ならざるものとなった女の子をそれでも人として、その罪を裁くことが誰にできるだろうか?といったことを"Borderline"の時の記事に書きましたが、それを具体的に登場人物である男の子の言葉で語らせているのが、今回の曲の主たる部分だと思います。

"Borderline"とは、人と人ならざるものの間を揺れ動く主人公の境界線であり、もはや人ではないと自覚したなら、人の裁く「罪」と向き合う道理もありません。

このように"Borderline"の記事では書きました。

もしそれなのに、誰も罪を裁けないくせに彼女を壊すなら、そんな理不尽があるだろうか?
いっそ全て無くしてしまって、それで何も感じないと心が叫ぶなら、もう無くしてしまえよ

これらは、発言としては間違いなく登場人物である男の子のものですが、作者であるregulusの人格が乗り移っての発言なのか、あくまでロールプレイとして、舞台上の演者としての発言なのか、これは自分でも本当に分かりませんし、答えも出ません。※これについての余談を下の方に書きます

よく僕の他の作品でも似たような表現を使うのですが、殺してしまえとか、壊してしまえとか、他に無くせ、燃やせとか、まあ言葉は何でもいいんですけど、要するに「だったらもう○○してしまえよ」というニュアンスの表現です。これって、例えば仕事場や部活で「やる気ないんだったら辞めてしまえよ」という発言が飛び出したとして、ほとんどの場合は、本当に辞めろと言っているよりも、その裏に「本当はそうしたいわけじゃないんだろう?」というニュアンスが隠れていると思うんですよね。もちろん一概には言えないですけど。

この例と同じで、

全て無くしてしまえばいいよ
それで何も感じないと心が叫ぶなら

という表現は、正に、人と人ならざるものの境界線で揺れる女の子に対して、人として留まれるように抑制するものでもありつつ、同時に「理不尽」に対しての憤りをぶつけるかのように、もはや女の子にとってそっちの方が気が楽なら、全部壊してしまえと本気で言っているニュアンスも同居しているのかもしれません。

間違いなく言えるのは、この男の子は立場として、一貫して女の子の味方で在り続けるということですね。自分の立場の危うさよりも、そのことを優先していることだけは確実であると言えるでしょう。

独り善がり、それでいいよ
君の為になるなら

という歌詞からもそのことが読み取れます。

ここで難しいのは、下の二つの問いかけです。
(自分で作詞しておいてバカみたいな発言ですが)

揺れる命が夜明け前に潰えることすら"儚い"と呼ぶ?
指に触れる温度を当たり前に奪えることすら"切ない"と呼ぶ?

「夜明け」というのが比喩表現であることは明確ですが、これを誰が誰に向けてどのような意図で問いかけているのかは非常に難しいところです。

パズルのピースは「女の子」「男の子」「周囲」ですが、主語と目的語としてどの位置関係にあるのかが、捉え方次第で変わってしまいます。

これこそ「解釈の幅」として皆さんに残しておき、僕の意見は胸に秘めることにします。


※色々と語りましたが、先ほどの話で出てきた、作者としてのregulusと、登場人物についてのことを少し話したいと思います。

自分で作詞しておいてバカみたいな発言を、かなり述べました。それは何故かというと、本当に僕にも正解を導き出せないことが多くあるからです。

自分自身のことを歌にした作品というのは世の中にごまんとありますし、僕だってそういう作品を作ること自体はあります。それについてはこの話は当てはまりません。

しかし、作品の中に固有の世界観があり、現実には存在しない物語としてそこに時間が流れているとするならば、作者であり日本に住んでいる一人の若者としての僕は、それとは一切関係のない別世界の人間です。

これは、僕が生み出した世界だったとしても例外ではありません。そこに住む人間は、僕とは違う性格を持ち、違う意見を持ち、違う価値観を持つ人間です。しかし、僕も妄想と現実の区別がつかない人間ではありません。作られた世界はあくまで作られた世界として、舞台上の演劇であることは理解しています。

その上で、時としてその演劇の人物に自分自身の人格が乗り移り、演者に自分自身がなってしまう可能性があります。これは意図しない場合も少なからずあります。そしてこれは、ロールプレイとは違います。

Aさんという役の名前がついていて、Aさんとして振舞わなければならないのに、regulusという人間として舞台で立ち振る舞ってしまうということです。本来は舞台の裏から、神の目線で俯瞰しなければならないのに。

RPGってあるじゃないですか、ロールプレイングゲームです。僕が作品を作るのとRPGを遊ぶのって、同じ感覚なんですよね。夢を見るのも同じ。

この世にあるはずもない世界だと当然理解していながらも、そんな無粋な外枠は取り外して、モニターならモニターの中、夢なら夢の中、作品なら作品の中へと旅をする。そして、その世界で割り当てられた人物として演じ切るんです。割り当てられた最後の時を迎える瞬間まで。最後の瞬間を迎えた時、ああ自分の世界はここだったと、自分の部屋で目を覚ますのです。

これがロールプレイということなのですが、この「向こう側とこちら側を隔てる壁」を超えて、世界に干渉してしまうことが作品作りだと起こり得るのです。

稀に夢でも起こります。そのことを明晰夢といいますが、これも同じことだと思います。

"Doomsday"の解説記事として文章を書いておきながら、自分でも分からないと言っているのは、登場人物のままの価値観で発言しているのか、僕自身の価値観で発言しているのか判別が付かない部分があるからだということです。意味不明なことを言っているでしょうか?まあそうかもしれません。

でも、もしかすると、同じような経験を持つ人がいるかもしれませんね。そんな人は話が合うと思います笑


ということで、普段見せにくい、regulusの人間性がかなり語られたような気がします。あまり長々と語る機会が少ないので、許してください。

それでは、また。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

2020.07.09 regulus

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