連作20首「プロトコル」
清潔なふりをしている灰色の空気を深く吸い込んでいる
教室の言語に対応していない僕のノートを埋める文字化け
騒がしいクラスメイトの視線から安全に取り外されている
ディスプレイだけが明るい「ようこそ」と迎えてくれる野戦病院
受け取った以下同文は特別ではないと思い知らせる装置
情熱を持った自分の「次回から表示しない」にチェックを入れる
満員の銀河鉄道いつまでも機械の体は手に入らない
歯車が噛み合ってないわけじゃない歯車なんて持ってなかった
死んじゃうと喘ぐ女を見たあとで命を救う僕のクリック
終わらない充電期間 眠っても赤いランプが消えてくれない
折れている操縦桿を大切に握ってどこへ向かうのだろう
人生をリセットすると間違ってセーブしたところから始まる
適当にスマートフォンを見渡せば救えない人ばかり目につく
苦しみの比較サイトで並んでる僕と途上国の子供ら
間違った選択を責めるみたいに何度も表示される広告
唐突に鳴った電話で意味もなく見続けていた画面が消える
気が付くとずっと喫煙席にいたようでさっさと出ればよかった
五年ぶりに開いたメールボックスで動く絵文字がまだ生きている
薄暗い部屋で干す洗濯物が指を濡らしてちゃんと冷たい
コンビニのコーヒーマシンを扱える程度に何とか暮らしています
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