自選短歌20首
僕だけがインターネットの亡霊で他のみんなは居酒屋にいる
「五時半に起こして」「 ウェブで“助けて”に関する情報が見つかりました」
花の名に詳しい母は無機質な僕の名前を思い出せない
お前はハリーポッターの絵が描いてある電車のロンの車両に乗れよ
友人が去った線路を眺めてはまだ運転を見合わせている
くノ一と一夜をともにしたはずが俺の隣に転がる丸太
後ろから蹴ってほしいと言ったのに火炎放射は話が違う
君の目は実家のシャワーみたいだねあたたかいのに急に冷たい
出欠を取るときにだけまゆぽんと呼ぶのをやめて中村と呼ぶ
この街の治安は悪い君に会うたびに時間を盗まれている
彼に歯を抜いてもらってから胸がずっと痛くて手をあげている
床を這う愛を知らないロボットが私にばかりぶつかってくる
「失恋は予防接種」という説を唱え続ける恋愛博士
声優の怠慢だろうあの人の前だと何も言えないなんて
清純派アイドルだけがユニコーン、他はサワガニに生まれ変わる
遺された留守番電話の音声に何度も同じ相槌をうつ
「感動の結末は90秒後」誰かの指示がないと泣けない
この狭い部屋で観葉植物も声も枯らしたことがあります
紫陽花はどんな色でも紫陽花でひとでなしでも私はひとだ
彼の好きだった漫画が最悪なキャストで実写化されますように
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