【子づれフジロック備忘】小沢健二@ホワイトステージの端っこで起こっていたこと

ライブの感想について「死んだ」という表現を使うことがあるが(例:超久々に○○が聴けて感動していたらさらに続けて××がきて死んだ)、この日のライブは文字通りの意味で「死ぬ」かと思った。

「小沢健二をフジで見る」ことを大目的に16年ぶりの参加を決めたフジロック。妻の目的も小沢健二。娘は何となく連れられてきているだけだけど、「流動体について」は好き。そんな状況だったので、これで入場規制を食らったらたまらんと思いコーネリアスはパス。あと何となくヘブン側から入った方が空いてるのでは?と思って一旦オレンジカフェのほうまで行き、食事をしてから19時過ぎにホワイトへ。ステージ向かって左側のまあまあ前方、通路脇のところにステージの仕切りを背にしてスタンバイ。この時点で何となくステージは見えるし、もうちょい混んできても中心からは外れているのでここがもみくちゃになったりはしないだろうという目論見(その見通し自体が甘々だった)。そこまで迷惑にならない場所だと思っていたのでベビーカーはそのままにしていた。ベビーカー組は他にもちらほら。抱っこされた小さい子もいる。

1時間弱待機。娘が飽きないようにいろいろあやし続ける。そのうち人混みが徐々に激しくなってきて、ヘブン側からの通路が渋滞を起こすように。これ以上人増えたらやべーな・・・という雰囲気になってきたが、もうどうすることもできない。ベビーカーたたむ余裕もない。

かなりぎゅうぎゅうな感じになってきたのでとりあえず娘は抱きかかえて潰されないようにガード。ほんとにこの状況でライブやるのかしら?小さい子ども通ります!!という大きな声も聞こえる。かなり騒然としてきた矢先、そのぎゅうぎゅう感にさらにものすごく強い圧が加わる。なんだ????あとで「目隠し的な役割を果たしていたホワイトの仕切りが壊れた(壊された?)」というのを知ったのだが、それが起こって人が押し寄せてきたのがこのタイミングだったんだろうか。妻はベビーカーごと流されそうになり、自分は何とか踏ん張っているものの娘がおびえた表情で「せまい!せまい!」と言っている。普段は大抵のことで動じない子なのだがこのときばかりはそういうわけにはいかなかった。そりゃ暗い山の中で自分より大きな生き物が大量に押し寄せたら怖いだろう。

そんな状況で「みんなの力で!」(だったかな)という聞き慣れた声が響き、カウントダウンが始まる。おいおい、こっちはそんな状況じゃねーよ!!!ますます周辺はぐちゃぐちゃに。娘が「くつぬげた!」と叫んでいる。実際は脱げてなかったが靴のベルトが外れて脱げそうになっていたので抱っこしながら何とか片手で回収。そして始まったあの曲のイントロ。登場するスチャダラパー。でも見えないし見る余裕もない。ますますヒートアップする会場。さらに強くなる圧迫感。これはマジで危ない。死人が出る。というか死ぬ。自分が手を滑らせたりしたらほんとに子どもが死ぬ。「フジロックで将棋倒しの惨劇」になりかねない。やばい!

そんな矢先、妻が「無理!出る!」と叫んでいるのを聞いてふと我に返る。そうだ、もうこれは強引に出るしかない。「出ます!!!」大きな声で叫ぶ。周りの人たちも子供を抱えた状況を察知したのか、狭いながらに何とかスペースを作ってくれようとする。妻は無理やりベビーカーを押し出す。当然周りの人に引っかかる。おそらく多くの人は迷惑に感じたはずだけど、何人かの人たちがサポートしてくれる。「ありがとうございます!出ます!子供います!すみません!」とか何とか2人で叫びながら人混みを突破する。似たような状況の人たちもわりといて、そういう流れにも乗りながら何とか大混雑を脱出。ステージと平行線上くらい、本来は車両が行き来するあたりの人のあまりいない場所に到着。ちょうどブギーバックが終わるくらいだった。

良かった!ごめんね!よく頑張ったね!と娘を抱きしめる。自分も妻もよくわからない興奮状態になっている。そうこうするうちに始まった「流動体について」のイントロ。「○○ちゃん!流動体についてきた!!」と言ったのも束の間、始まったのは「ぼくらが旅に出る理由」。一瞬がくっとくるも、この曲もMステの録画で何度も見ている娘は微妙に反応。でもまだ先ほどの混乱の余韻が抜けておらずやや呆然としている。

その後はステージは全く見えないけどよく音は聴こえるこの場所でライブを堪能。横に同じくベビーカーを持った夫婦がいて、目が合ったので「最初中の方にいてやばかったです」と言ったら「うちもです。慌てて出てきました」と言っていた。

何やかんやでライブを堪能し(途中娘が「見たい!」と言い出したので、「強い気持ち・強い愛」あたりでだいぶ空いたステージの方に抱っこして一度入ってみた。もう混乱はなかった)、最後のMCくらいで退散。見ていた側の動線は封鎖されておりまた人混みをつっきらないといけなくなったが、最初に比べればだいぶましだった。

ライブ直前からの混乱はほんとに恐ろしかった。子どもをそんなところに連れていくなで終わってしまう話ではあるが、さすがに客席がコントロールを失うあの状況は予期できなかった。オフィシャルのレポには「混雑などの混乱がややあったものの」とさらっと書いてあったが、実際には「やや」どころじゃない体験をしてしまった。今年はマナーが悪かった的な話が各所で出てるけど(久しぶりすぎて自分には検証ができない)、少なくともあの混雑の中では周りの人たちの配慮に助けられたと思う。

いろいろあったけど楽しかった子連れフジロックの話は近々ちゃんとまとめたいと思っています。
まとめました

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