「大型新人バンド」Weekend Brothers 始動インタビュー
こちらのニュースから半年ちょっと経ちまして、Shiggy Jr.の男性メンバー3人が新バンド「Weekend Brothers」として動き出しました。
Shiggy Jr.の皆さんとはインディーでの活動時代から度々インタビューさせていただいてました。
解散時の4人の編成になって最初のインタビューも僕のブログでした。
そんな縁もあって、ある意味で「再始動」という形になる3人のお話をお聞きすることとなりました。Shiggy Jr.について、そしてWeekend Brothersとしての展望について、お三方に大いに語っていただく予定だったのですが…インタビューは思わぬ形で始まりました。それではどうぞ。
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ほんとに3人だけでやってます
(インタビュー開始時間になり、原田・森は揃ったが諸石の姿が見えず)
原田 遅いね。
森 ちょっと電話してみますね。…出ないな。
--もうちょい待ちましょうか。
森 すみません。まだ寝てんのかな。
原田 昨日も3人で制作の後結構遅くまで飲んでたんですよね。
森 最近連日そんな感じで。
--なるほど(笑)。
森 5分くらい経ったらまた電話してみます。出なかったらもう始めちゃいましょう。
(5分後、再度諸石に電話)
森 …あいつ、やったな。
原田 これはやったね、間違いなく。普段遅れるときは連絡する人だから。
森 ほんと申し訳ないです。
原田 ごめんなさい、今日は2人でお願いします。
--了解しました(笑)。(注:インタビュー終了後諸石さんより丁重なお詫びの連絡をいただきました)制作後深い時間まで飲んでるという話もありましたが、ほんとに男だけでワイワイやってる感じですね。Shiggy Jr.の頃の曲でも「dynamite」(『ALL ABOUT POP』収録)なんかはそういう雰囲気も出てましたが。「部室」っぽいというか。
原田 確かにそうですね。
森 3人集まると「合宿感」みたいなものはあると思います。
--その辺は「BROTHERS」っていうバンド名にもちょっと現れているように思いますが、なぜ「Weekend Brothers」という名前になったんですか?
森 えーと、今回2回目にやるバンドということで、あんまりガチガチにかっこいい名前にするのも違うかなと思ったんですよね。ちょっと「ゆるさ」とか「大人の余裕」みたいなものがあるといいなと思っていて、そういう中で「Weekend」、つまり「週末っぽい感じ」がこのバンドには合ってるんじゃないかってなって、じゃあ「Weekend ○○」を考えてみようといろいろ試していたんですけど…あ、でもその前に、シゲ(原田)は「マミー」ってバンド名にしたかったんだよね。
--「お母さん」(mommy)ですか?
原田 いや、「ミイラ」の方(mummy)ですね。「復活する」ってニュアンスが出るといいかなって最初思ったんですけど。
森 すごい推してたよね。結局そうはならなかったんですけど(笑)、「Weekend」につなげるなら何がいいかなってところで「Brothers」が出てきて。The Isley Brothersとかありますけど、そういうソウルっぽさも出るし、あとはさっきも話題になった「男がワイワイやってる感じ」みたいなのともつながるかなというところで。ハッシュタグで「週末兄弟」とかってやると話題にもなりそうだし、そういう使い勝手も含めて決めました。
--なるほど。現状は完全に「インディペンデント」って感じの活動スタイルなんですか?
原田 そうですね。音源の流通はキャロラインっていうところにやってもらっているんですけど。あとはほんとに3人だけでやってます。
森 レコーディングだったりMVだったりで周りの人たちに手伝ってもらったりはしてますが、バンド運営に関する細かいことも含めてほぼ3人でやっていますね。
--そうなんですか。お三方ともその辺の事務作業ができそうな面々で良かったですね。
森 …俺は結構不得意かもしれない。
--(笑)。
原田 つつかないと動かないよね。
森 今のところ破綻なくやってます。
--活動スタイルについては自分たちの手触り感を大事にするというか、とりあえず最初はコントロールできる範囲で回そうみたいな意識があったりするんですか?
原田 うん。結構ずっとそうしていきたいと思っていて。もちろんこの先多くの人に聴いてもらいたいし、そういう過程でまたメジャーでやるようなこともあっていいと思っているんですけど、仮にそうなったとしても自分でちゃんと原盤作って、「介入しないでね」みたいな…そんなこと言ったら怒られるかもしれないけど(笑)。でも、そういう形でやれたらいいなとはほんとに思っています。
最初から「もうやるっしょ」って感じのトーンでした
--このメンバーで新しいバンドをやるということで、Shiggy Jr.の解散に関しても触れておきたいんですけど。ちょっと前になりますが、9月の解散ライブはとても良いライブでしたね。シチュエーションも含めて、いつも以上に曲がエモーショナルに響いていたと思います。
原田 …まあ俺は悲しかったけどね。
森 普段は「ツアーを回って徐々に仕上がっていってファイナル」という感じだから、演奏のクオリティで言えばあの日は「初日」っぽかったというか、必ずしも完璧だったわけではないんですけど…でもいいライブだったと思います。
--改めてShiggy Jr.の活動を振り返ってみて、何が特に印象に残っていますか?
原田 えー、なんだろう…やっぱり俺はメジャーデビューとか、そういう節目のタイミングの印象が強いかな。まともにレコーディングできるというか、でっかいスタジオ使ったりとか、そういうのは昔からの夢だったので。それはすごく印象に残ってます。
森 でかいステージに立てたり、会いたい人に会えたり、そんな経験をShiggy Jr.としてたくさんさせてもらったので、そういうのひっくるめて印象に残っています。あと、「ファンの人」って本当にいるんだっていう(笑)。「ファンのいる人生」を送れるなんて思ってなかったから、ファンの方との交流だったり、いっぱい声をかけてもらったり、それもすごく思い出深いですね。
--なるほど。原田さんから「悲しかった」って話もありましたけど、気持ち的には中途半端さが残る感じだったりしますか?それともしっかりやりきった?
原田 どっちもあります。もともと「長く続ける」っていうのをずっと言ってきたから、それをやれなくなったってことでもどかしさはあったし。ただ、最後『DANCE TO THE MUSIC』っていう明るくポップなアルバムを作って終われたっていう意味ではやりきったともいえるのかな。
--『DANCE TO THE MUSIC』、めちゃくちゃいいアルバムだったと思います。森さんはいかがですか。
森 残念な部分もありますけど、ある意味しょうがないところもあったのかなというのが正直な気持ちで。うーん、難しいな…4人が新しい道に行くにはあのタイミングがベストだったのかなと今は思っています。
--解散発表の際に4人のコメントがあったじゃないですか。池田さんのコメントには彼女の迷いだったり葛藤だったりみたいなものが滲み出ているように思ったんですけど、皆さんは活動の中でそういうのを感じたりはしていたんですか?
森 うーん…そういう「心の声」みたいなのが出てきたのはバンドの最後の方になってからだと思うので、たぶんマネージャーとかもあんまり気づいてなかったと思うんですけど。俺らも鈍感というか、彼女の繊細さに気づけていない部分っていうのはあったんじゃないかなと今振り返ると感じます。
--より付き合いの長い原田さんからするとどうですか。
原田 俺はそもそも鈍感どころの騒ぎではないから。
森 何にも気にしてないよね。
原田 基本的にはそうだから、うーん、わかんないなって感じ。ただ、言われるときに「これ、今来そうだな」感はあった。
森 そうね。そのちょっと前のバンド内での会議からそういう空気はあったよね。ただ、別に仲が悪くて解散したわけではないというのはここでも改めて言っておきたいです。
--わかりました。そこから3人でバンドをやると決まるまではどういう経緯だったんでしょうか。
原田 経緯…
森 ものすごく自然な流れだったよね。池田の話が出た後3人でいつものように飲みに行って、「どうする?俺ら」「じゃあやるか」くらいの。というか、最初から「もうやるっしょ」って感じのトーンでした。
原田 ああ、そうだった。すぐに「どうやるか」って話になりましたね。フィーチャリングを立てるのか、それとも俺が歌うのか、みたいな。
--最初からやる前提だったと。何か3人の息の合い方がすごいですよね。もともとは森さんと諸石さんが学生の頃からの友人で、その後同時にShiggy Jr.に加入されて原田さんとも知り合うわけですけど、今ではすっかり3人が古くからの付き合いみたいになっていますよね。
原田 もう腐れ縁ですよ。
--(笑)。何がそんなにフィットしたんですかね?音楽的な話なのか、人間的な話なのか、酒の量なのか…
原田 まあ「飲む」っていうのは大きいとは思う。
森 みんな酒好きで、かつバンドとしても死ぬほど濃密な経験をほぼ毎日顔合わせてやってたから、ほんとに朝から晩まで一緒にいる感じだったんですよね。そういう中で関係が深まっていったのかなと。
--プレイヤーとしてはどうですか?飲み友達で仲が良くても、音楽的にきつかったら一緒にはやれないと思いますが。
原田 それも長く一緒にいるってのと関係しているというか、どういうプレイをするかがわかってるから、わだかまりなくできるってのが大きいかな。だから俺も外の仕事でも2人を呼んだりするし。外のプレイヤーの人たちって個々でみんなうまいんですけど、森と諸石はセットとしての阿吽の呼吸みたいなのがあるよね。
森 セット感は確かにあるね。
原田 ブレイクとかいちいち打ち合わせしなくてもピタッと合うし。
--森さんはもともとShiggy Jr.の楽曲、つまりは原田さんの作る楽曲に惹かれてバンドに加入したというのも大きいと思うんですけど、そこへの信頼は相変わらずって感じですか。
森 それはもちろん。「ちゃんと曲がいい」っていうのはシゲとバンドを続けるでかいモチベーションになってます。諸石のプレイも含めて、今回のバンドでも音楽的な心配は全くないです。
自分たちが爆笑しながら作れるかどうか
--バンド名のくだりでも少しありましたが、Weekend Brothersとして改めて活動を始めるにあたって「音楽的にこういうことをやりたい」みたいな部分でのイメージはどんな形で共有されているんですか?
原田 「生感」ですね。音としてはアコースティックな雰囲気を残しつつ、より人間臭い感じを出したいなと思ってます。バンド名含めてソウルっぽいのをやるんだろうなというのはもともとあるんですけど、それ以上に「素の自分」というか。
森 「生」とか「素」とか、あとは「バンドっぽい」とか。メンバーの顔がちゃんと見える音がいいなと思っているので、そうなると打ち込みよりはみんなで演奏する感じにしたいなと。この先いろんな曲をやるはずですけど、Shiggy Jr.のときみたいに何でもありというよりは今の方向性を中心に考えていくことになると思います。今回はシゲが歌うから、シゲが曲を作ったときの雰囲気がそのまま出るんじゃないかと。
原田 池田が歌うと一種のフィルターがかかって、その違和感も含めての良さがShiggy Jr.だったと思うんですよね。今回は「より俺になる」というか。さっきも話した通り最初はフィーチャリングを曲ごとに立てるという案もあったんですけど、今はそういうのよりも「ちゃんとバンドとしてやる」のがいいのかなと思ったので自分で歌うことにしました。今でも「ポップでありたい」とか「多くの人に聴いてもらいたい」とかって気持ちは当然ありますが、「自分の好きなものをちゃんとやる」「よりパーソナルな部分を出す」ということも同じくらい大事にしたいと思っています。
森 「求められたものをやろう」ってよりは、自分たちが爆笑しながら作れるかどうかを重視してますね。
原田 そうやって作ったものを好きになってくれる人がいればいいな、という感じです。
--「より原田さんになる」という話で言うと、今回リリースされた「最高の1日を」は山下達郎節というかシュガーベイブ節というか、まさに原田さんの好みが前面に出た楽曲だなと思いました。
原田 これは結構前からあった曲なんです。以前から作った曲に番号をつけてるんですけど、この曲は200番台のもので。今が1000越えていて、「サマータイムラブ」が400とかなんで、かなり昔。俺その時何考えて作ってたんだろ?
森 まあ気持ち良い感じで作ったんじゃない?好きなように。
原田 あー、きっとそうだね。大学時代からヤマタツさんたくさん聴いてて、その流れで純粋にああいうものになっていったんだろうな。
森 この曲のデモはバンド時代にも聴いたことがあって。結局Shiggy Jr.としてはやらなかったんですけどすごく印象に残ってたので、3人で何やる?ってなった時にじゃああの曲でいいじゃんとなりました。
--いわゆる「山下達郎的な音」というか、そういう類のグルーヴ感のあるポップスってそれこそShiggy Jr.が出てきたくらいのタイミングから改めて市民権を得たような感じもあると思うんですけど、そんな中で「Weekend Brothersがやるからこそここが違うぞ」みたいなことってありますか?
原田 うーん、なんかある?
森 結局メロディはJポップっぽいのかな?
原田 でも進行的にはあんまりA-B-Cじゃないんだよなー。A-Cとか、洋楽っぽいのが多い。
森 まあそうね。あと、雰囲気の話ですけど、かっこいいシティ系って「クールでおしゃれなもの」が多いと思うんですよね。俺らはもうちょっとおちゃらけてるというか、隙があるというか。
原田 そうだね。
森 違和感なく曲が進むよりも、1曲にひとつくらいは「この展開、いる?」みたいな謎パートを入れたいと思ってやってます。
原田 そういう「遊び」を入れたい気持ちがありますね、今は。「最高の1日を」以外にも曲はできつつあるんですけど、「ちょっとふざけた感じ」みたいなのは共通していると思います。
「大丈夫っしょ、なんとかなるっしょ」って気持ちを大事にしたい
--Weekend Brothersも基本は長く続けていきたいということだと思うんですけど、他にバンドとしてやっていきたいこと、もしくは歌っていきたいこととかってありますか?
原田 そうだなあ…これもずっと変わってないんですけど、聴いた人が「なんとかなるよね」って思える音楽を作りたいですね。悲しいことはいくらでも起きるから、そういう中でも「大丈夫っしょ、なんとかなるっしょ」って気持ちを大事にしたいかな。そんな感じです。
森 3人とも楽観的だからね。曲と人間性に齟齬がない状態のまま続けていきたいですね。
原田 通勤とか通学とかの時に聴いて気持ちが軽くなったらいいな、というのは何となくイメージとしてある。
森 確かに。ちょっと憂鬱な人に聴いてもらいたいね。
--わかりました。今回のお話を最初にお聞きしたときにはわりと「ユニット」っぽい感じというか、個々人の活動がありつつ3人でも集まるみたいな形態なのかなと思ったんですけど、がっつり3人で「バンド」をやるっていう意気込みなんですね。
原田 基本はそうですね。
森 もちろん各々での活動はありますけど、ここが帰ってくる家みたいになるといいなと思います。
--Weekend Brothersっていうバンドを拠点としたうえで、それぞれの活動について展望はありますか?原田さんは引き続き楽曲提供を続けられるかと思いますが。
原田 そこはこの先も当たり前にやっていきます。もともと作家になろうと思っていたこともあるくらいなので。あと最近はウソツキの竹田くんとYouTubeでカバーをやったりもしてますけど(注:「Living Room Recording」として演奏動画を配信)、ああいうのを通じていろんな人とのつながりを増やせたらいいなと思ってます。
--なるほど。森さんはどうですか、個人として。
森 ベースの仕事はもちろんやるのと、あとまだ何の準備もしてないんですけど、自分の作った音楽をやる場も作りたいなとは思ってます。それから、音楽以外の趣味ももうちょっと仕事にしたいんですよね。飲みとか。
--この前森さんがnoteにあげてた渋谷の居酒屋、美味しそうでしたね。
森 あ、魚蔵居ですか?あそこほんといいのでぜひ。酒場放浪記じゃないですけど、そういうのも仕事としてやれたらとも思うんで、何でも発信していきたいと思います。
--ありがとうございました。最後に、これからたくさんの方がWeekend Brothersの音楽に出会うと思うんですけど、今回は「再始動」の節目なので、特にShiggy Jr.の頃から応援してくださっていた方に向けて一言いただければと思います。
森 うーん、そうだな…まああの、引き続き楽しんでくださいという感じですかね。これからも男三人ですけど楽しくやっていくので、ライブも来てほしいし、いいと思ったら色々な人に広めてもらいたいです。
原田 難しいですね、みんなに何を伝えればいいだろうな。ずっと聴いてくれてた人にはもちろん聴いてもらいたいんですけど、何かのきっかけでShiggy Jr.から離れちゃった人にも一回くらい聴いてもらえたら嬉しいですね。
--逆に「はじめまして」の人にはどうやって自己紹介します?
森 そうですねえ。「大型新人バンド」とか?
原田 やば!(笑)
森 大型新人バンドです。よろしくお願いします(笑)。
原田 1人来なかったしね(笑)。
(編集協力:村上麗奈)
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そちらによると、今後のリリースについて
今回これ(“最高の1日を”)を出して、次の月にもう1曲、そのさらに次の月にもう1曲出して、5月くらいにその3曲+2曲くらいでEPを配信で出そうかなと思ってます。で、10月くらいに、もしかしたらフルで盤を出せたらいいのかなあ、と思ってはいる。どうなるかはわからないですけど、とりあえずそれくらいのタイム感でやれたらいいかなって。
引き続き楽しみにしたいと思います!
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