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持ち込み案件#1

こんにちは。
株式会社REGATEの金城です。

本日も不動産仲介の奮闘記を書き殴ります。

内容は「こんな売主さんいるよね〜」という同業あるある。

嘘かほんとか誠かしやか。。。

人物が特定できないように配慮しますが、
心当たりがある人がいるとしたら
日本中のそこかしこにこう言う人がいるんだな〜と思いながら読んでください。


◆飛び込み来客は低確率


不動産仲介業。
どんな業種も仕入れが命と言われるが
不動産仲介業も仕入れからは逃げられません。
仕入れができないと仲介手数料が稼げません。。。

仲介という仕事柄、他社の物件に既存の買い手さんを紹介していくことで食い繋ぐことは可能ですが、その既存の買い手さんも新規の物件情報を仕入れておかないと繋ぎ止めることはできません。

そんなこんなで日々仕入れに勤しんでいるとある日。
事務所で新規物件の査定資料を作成していたら・・・

カランコローン♪

エントランスのドアが開く。

入ってきたのは真っ赤なドレスを着たマダムと
毛皮のコートを羽織るチンpir(自主規制)風のダンディな男性。
沖縄で毛皮のコートは珍しい。
高い代物だろうけど暑そうで目立つな・・・

「いらっしゃいませ」
事務員さんが対応して着席を促す。

「あの人営業?」
私を指差してご指名。(忙しい中ありがとう。)

なんか乗り気じゃないw
見た目の偏見だけかもしれないけど嫌な予感がぷんぷんw
でも他の営業は全員外出。。。

仕方ない。資料作成の手を止めてPCを閉じ、テーブルについて名刺を差し出す。

◆他社で売れなかった物件


開口一番
「この物件売って欲しいんだよね」
と資料を広げる。

ネットとかで物件を見つけて直接来店はたまにある。
でも売りの依頼で飛び込みは本当に稀だ。

仕入れが一番とは言えこう言うふうにいきなり来店してきた人が持ってくる物件はあまりいい情報がないのが実情。。。。


※すでに他社で長期間売れていない
※他社が相手にしなかった
※問題点が多くて解決できない

こんな感じで何かしら理由があることが多い。
感覚的な数字だが売れない理由が上記の80%を占めると思う。

過去に取引があったお客様からの紹介とかであれば全く話は違うが、
縁もゆかりもない飛び込み客がいきなりいい物件を持ってくることは稀なんだよな。。。

案の定、物件は見覚えがある。
一年位ずっと売り出されている戸建て。
弊社のすぐ近くのエリアではあるが、物件の近くの業者さんが売っていたはず。。。

価格が高すぎてエリアの顧客層とマッチングしない物件だったような。。。



「この物件ずっと〇〇さんとこで出てましたよね?なんでまたうちにお願いするんですか?」
「アソコノオミセノ人ハダメよ〜」
真っ赤なドレスのマダムが口を挟む。よく見たら外国人さんだ。


「アソコノオミセハサービスダメでフドウサンデキナイよー!シカモワタシガハナシスルト・・・6)'&%)'(&0'&$&%('()')(')3#$&%UTYF」
息継ぎなしのマシンガントーク炸裂。まるでカイヤさん。
ダンディはマダムの肩に手を回してニヤニヤしているだけだ。
よくもまあ息が続くな〜と感心しながらカタコトの条件をまとめる。

・一年売れないからクレームを言った
・売れないのは価格のせいだと言い返された
・売る気がないからだとさらにクレームを返した
・じゃあよそに行ってくれと突き返された

という業者が手を引くありがちな理由。
(正直やりたくない。この価格でやってもお客さんをつけることはできない。カイヤさんとお話しするのは正直しんどいし、どうしよっかな〜・・・)

カイヤはまだまだ喋り続けているが他社さんの悪口ばかりで物件に関する情報はない。。。


「どや?あんたなら売れるん違うか?」
ダンディー麻世がドスのきいた声で問いかける。
(う〜ん、売れそうな価格で打診してダメなら引き取ってもらうか)

「はい、この物件のエリアでこの築年数だと顧客相場が〇〇円くらいですね。弊社で預かるには今までの売り出し価格よりも1000万円は下げないと無理だと思います。」

「アンタナニイッテルカ=!!△××〇〇76%#%#'&$&'%0)('=(!!!!!!!!!!!」

カイヤが叫びだす

(いや、無理な価格は無理っていうのがこっちのポリシーだし、、、諦めて帰るかな・・・)

「話にならん!」
って帰ると思ったけど・・・


「なんや?その価格の根拠はあるんか?」
「はい。すぐ近くで同年代の物件を売却しました。その時にきたお客さんの客層が30代〜40代。世帯年収は500万円前後。地銀の融資の状況も〇〇円くらいが多かったです。
近隣の新築マンションの価格も抑えられているので、このままの金額を続けてもこの物件が売れにくくなっていくだけです。
売れない価格で売り出しても不動産は売れません。買い手さんも近隣の物件と比べます。
逆にあなたならこの価格でこの物件が売られていたら書いますか?」

・・・少しの無言。カイヤの顔は真っ赤だ。

「ほう。おもろいこといいよんな。じゃ1000万円下げていいからやってみてや」
(え??下げるの?マジで?なら売れそうだけどwww)


「アンタナニイッテルカ!!!!」
カイヤは鬼の形相。


数分間二人はこちらが聞き取れない言語で会話をする。
英語でもないからナニを言っているか全くわからない。


「んじゃ、金城さん。任せるよ」
麻世が物件の鍵を取り出してテーブルに置く。カイヤの目は怖くて見れない。

「はい。ありがとうございます・・・」

◆販売開始から成約


麻世は媒介契約書の署名の際に免許証と名刺と登記識別情報のコピーを差し出した。
不動産の取引には慣れているのか本人確認資料と謄本のコピーも用意している。
本人確認は問題なさそう。
あと反社でもないwww
(近くの工務店の社長さんでした)

カイヤは名義人ではなかった。
(これも一安心ww)


さて、売れそうな価格まで減額に乗ってくれたならやることをやる。
売ってやる!おー!

売れそうな価格とは言え室内も見れていない。
とにかく現地の確認と物件の調査だな。

普通は調査をして問題点とかを抽出して減額をお願いするが、
今回はイレギュラー。
もしも法的な問題点が出てきたら謝って物件をお返ししようと思いながら現地へ赴く。
物件の外観は悪くない。というか昔からネットでみてたまんま。
室内は、、、そこそこかな。水回りのリフォームは必須だな。外壁の塗り直しも含めるとざっと500万くらいかな。


外構と排水管の確認をするために周辺を散策。

写真とマップだけでは気が付かなかったが後方の擁壁が気になる。
近くには土砂災害警戒区域のハザード表示。
ネットに出ている時には気が付かなかったな。役所で徹底調査だな。

役所の調査も終えての感想。
1000万下げてくれたけどギリだな、、、室内のリフォームと後方の擁壁と土留め工事がネックになりそうだ。。。
というかこれが原因で今まで売れなかったというのもあるだろうな〜。

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結局売り出しをしてから半月で成約になった。
前から気になってはいたが
「ずっと値下げ交渉に応じてもらえない」
と言って電話口で断られていたというお客さんで決まった。

なんでもその時の担当に値下げをお願いしても
「難しい売主さんで減額は絶対しないと断られてます」
と一蹴されてしまっていたようだ。
(カイヤだな・・・ある意味ありがとうw)

1000万円下がることでリフォーム費用も捻出できると喜んでもらえたし、後方の擁壁や土留の工事のことも
「こんなに値下げしてもらえたならなんでも受け入れる」
という前向きな結果に。

学区の関係と実家の関係で探しているエリアが狭いこと。
マンションや別の物件では少し条件が折り合わなかったとのこと。
値下げをすることで色々な条件が合致して即契約となった。
(契約の日にはカイヤは同席せず。よかった〜www)

麻世から聞いたらカイヤは値下げしたことをまだ根に持っているらしいww「あんなに下げたから売れたんだヨーーー!」って怒っていたとのこと。


◆不動産の売買条件はその時の運?


結果オーライだ。

不動産はいろんな物件があっていろんな売主がいて、いろんな事情を抱える買主がいる。
全方向OKの結果にはならないが、売主の考えと仲介会社のアドバイスのタイミングとかで状況が一変することもある。
今回のケースもカイヤが窓口だと契約まで行かなかっただろうし、麻世が私の減額の提案に気を悪くしてしまったらそもそも売れていない。

また、正直なところ、この買主さんじゃなければかなり苦戦していたと思う。

この買主さんからしたら場所はドンピシャだったが、
リフォームや擁壁の件がネックで予算が足りていなかった。
それでも同エリアでずっと検索をしていたら一気に値下げをしたこの物件を見つけて飛びついたとのこと。



単純に私の運がよかっただけだとも言えるが、不動産の仲介にはこう言ったご縁というかタイミングというか、今まで膠着していた物件が一気に条件が揃ってまとまるという不思議な現象がよく起きる。

不動産取引の一つ一つにこのようなドラマがある。

これからもこの不思議とも言えるご縁を感じながら仲介業を楽しんでいきたいな。

〜完〜


カランコローン♪
エントランスが開く。

「いらっしゃ・・・金城さん。お客様です」

事務員さんがすぐに私に声を掛ける。

真っ黒なタイトのドレスのカイヤと革ジャン麻世が立っていた。

「金城さん。この物件売って欲しいんだけど。内緒のやつでさ」


次回へ続く。。。


HPでは不動産に関することとか沖縄の不動産あるあるについてのコラムを公開しています!
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沖縄不動産あるある→REGATEコラム
不動産テックのこととかそんな感じ→REGATEコラム

沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!