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建築条件付き#1

こんにちは!
(株)REGATEの金城です。

本日はいつもよりも少し小難しい内容になりそうです!
でも同業さんがよく読んでくれるみたいなので細かい解説は無しで行きます!

ではど~ぞ~


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友人から一通のライン。

『今度相談に乗ってほしいんだけど・・・』

久しぶりの連絡にも関わらず重たい感じだ。

『オッケー♪いつでも時間とるよ』

不動産の相談だろうけど何だろう?
確かこいつは去年新築したはずだけど・・・離婚か?
めちゃくちゃ仲のいい夫婦だったし離婚だとしたらこいつがやらかしたかな?w
なんて声かけようか?
あと離婚だとしたら築浅の残債モリモリか~いけるかな?
不動産屋として「相談」を受けるにあたりありきたりな展開を想像した。

彼が家を建てると言って土地を購入したことは共通の友人から聞いていた。
確か建築条件付きの土地でガッチガチに建築屋にホールドされている土地だったからウチが仲介に入る事も出来ない土地だし、何よりもその話を聞いたときには購入済みという事だったから何をするでもなかった・・・


彼はすぐに来店。

来店してからしばらくは久しぶりの再会と昔ばなしに花が咲いた。
しばらく雑談をしてから本題へ。

「実は一年前に買った土地の件なんだけど・・・」
「ん?ああ~、あの土地ね。もう家建てた?」
「いや、それなんだけどさ・・・建築屋が全然動いてくれないんだよね」

離婚じゃないっぽい。少し安心w

「あ~。やっぱりな~wハウスセンチュリーさんだっけ?
お前そりゃ動いてくれんよ。あそこは土地を買わせた後になかなか建築しない事で有名よw」
「うん。。。もっと早くにお前に相談しておけばよかった・・・」
「買う前に聞いてくれたらいくらでもアドバイスしたし、まずハウスセンチュリーだったから間違いなく止めてたよw」
「だよな~・・・」
「んで?今さらになって何が引っ掛かってるの?」

このハウスセンチュリーは粗悪な建築屋としてこの界隈では有名。
建築条件付きで土地を三為して、その仲介も自社の宅建部門でやらせるから施主からは三為の利益プラス仲介手数料をしっかりと取る。
更に土地の契約後は今回みたいに一年~二年は着工もしない事もザラ。
施主は待たされている期間もつなぎ融資の利息を払い続ける・・・

着工しない言い訳としては
「プランが早く決まらなかったから・・・」
「打ち合わせのスケジュールが押しちゃったから・・・」
「県(市)からの開発申請の許可が下りない・・・」
「必要書類が足りていないと指摘されて・・・」

などと自社のせいではなく施主や行政機関のせいにする事でのらりくらりと逃げる。やってるふりを続けてあくまでも自社に不手際が無いという姿勢を貫くのがセオリーだ。

さらに土地の契約と同時に建築請負契約も結ぶもんだから、施主としては途中で不信感を持っても、着手金などで払った100万円を超える大金が違約金として取られてしまう事を懸念して泣き寝入りをする人がほとんどらしい。

建築の説明と土地の重説、土地の購入もセットになっているから素人には何が何やら分からないままに進んでしまうし、同日にたくさんの契約書に署名押印をしてしまうから、何の契約書にサインをしているのかもあいまいになってしまうだろう。
そりゃ土地の重説だけでも理解が難しい文言が飛び交うのに同時に建築の請負の説明とかをされても素人さんにはちんぷんかんぷんだ。

謄本や土地の売買契約書を見たら友人も同様で三為でガッチリと抜かれていたwそのせいで土地の売買価格は近隣相場の二倍に膨れている。
更に建築請負契約書を見たら着手金200万。
施主都合の解約だと着手金没収とそれまでに費やした経費は精算してもらうという違約条項付き。

現段階ではかなり不利な状況。

「う~ん。解約するにはかなりハードルが高いね~w」
「うん、だから解約よりは建てさせることを優先してたんだけど、先週になってから予定通りの建物を建てるにはプラスで1500万円かかるって言われてさ・・・ほらウクライナとか円安とかで色々値上げしないといけないらしいし・・・」
「プラス1500万???請負契約書の金額が2800万円。土地が1300万円。じゃあトータルで5600万??毎月の支払きつくない?」
「いや~・・・この1500万の増額の合意書にサインをしてくれたらすぐにでも着工しますって言っててさ。それなら長男の小学校入学に間に合いそうだし。。。そしたら今月中に決断していただけたら上に掛け合って1000万に抑えてみます!って言われて。。。」


なるほど。
施主がなかなか着工しない事にしびれを切らすのを待って、いざ着工できるというタイミングで請負金額の値上げ。土地の売買の時に売主であるハウスセンチュリー側で施主の融資申し込みをしているから施主の与信枠も程度把握できる。
そのギリギリまで狙っての値上げ交渉か。噂に聞くより悪どいなw

そしてすぐに着工できるって言ってふっかけといて、月内で決断したら500万を下げるというあたりが典型的な営業手法だ。どこでもこのやり方で施主から搾り取っている事が伺える・・・


「もちろんそこでサインしていないよな?」
「うん、ここまで焦らされてようやく着工って思ったら少しくらい高くなってもいいかな?って思ったんだよね。更に500万値引いてくれるならって。。そしたら嫁さんが1000万も上がるのは無理って言ってその場は持ち帰る事になったんだ。んでお前に相談したってわけ」

奥さんファインプレイ♪
てか奥さん居なかったらこいつそのまま流されてカモになってたなw

「んで、嫁さんとしては相手に対して不信感しかないからもう200万円の違約金取られてもいいから契約を解除しようか?ってなっててさ・・・1000万追加よりは傷は浅いと思って・・・」

うん。奥さんは冷静だな。

「いや、ちょっと待て。1000万追加よりはマイナス200万の方が・・・ってさ。わからなくもないけどそれ間違えてるからw相手の思うつぼじゃんw
向こうからしたらお前が納得して着工したらプラス1000万。解約になっても200万貰えるし、何よりもこいつら土地の売買でもお前から結構な金額抜いてるからw
ほら、土地の契約書のここ、『本契約は土地の所有者○○からハウスセンチュリーが買い受けた土地を買主に売り渡すため、現所有者○○との売買契約が無効になった場合は本契約も無効になるものとする』って書いてあるっしょ?
これ三為って言って土地の所有者からハウスセンチュリーが買い取る金額とお前に売る金額の差額を抜くって言う契約なんだよね。安く買って高く売るの典型的なパターン」

「さんため?なんか難しいからわからんな。でも200万で済むならよくないか?」
「いや、じゃあ200万を捨てたとして残されたこの土地どうすんの?別の業者で建てる?今から一から設計して?」
「いや、、、ぶっちゃけこの土地も立地としてはかなり妥協したんだよね。子供の学区の為にさ・・・正直希望の立地とは程遠い。だからこの土地をお前に売ってもらおうと思って・・・」

友人が買った土地は市街化調整区域の細長い傾斜地の土地。高低差もあるし周りが畑ばかりだから地盤も弱そう。何よりも三為で買ったせいで近隣の坪単価の倍以上で買わされている。
調整区域の緩和要件に該当する顧客しか建てられないし、細長くて地型も悪い。地盤補強や擁壁、基礎にお金がかかる事を考えると・・・

「うん、売るのを任せてもらえるのは大変ありがたいんだけどさ。
条件としてはかなり厳しいよ。土地を買った金額で売るにしてもさっき言ったみたいにハウスセンチュリーに抜かれている分、周辺相場よりも高い金額で掴まされてるし、その残債を消すためにはそれ相応の価格で売らんといけんし。。。あと緩和区域っていう条件が厳しいのと基礎と外構で金がかかりそうだし・・・」

「まじか~・・・勉強代として200万損しても土地を手放せたらすっきりすると思ったんだけどな・・・」
「かなり厳しいね。解約して別の業者で一から建てるって言うのが一番損が少ない気もするけど」
「でもさ。嫁さんももうこの土地では建てたくないって言ってるんだよね・・・」
「じゃあ土地を売るにしても手出しできる?相場相応で売ろうと思ったら抵当消すために500万くらい出さないと無理かもよ?」
「マジで?200万の放棄だけで済まないの?・・・それは考えてなかったし、500万も出せない。合計700万円のマイナスか。だったらプラス1000万でも我慢して建てた方が・・・」
「いやwwwだからそのプラスとかマイナスの考えがおかしいってw
こんなに嫌な思いして建てた家だとすぐに愛着も無くなって後悔しか残らんよ?よしわかった。ちょっと時間貰える?ダメ元だけど相手の不備を見つけて交渉してみてダメージを低くできないか考えてみるわ」
「マジでお願いします・・・」


ホームセンチュリーはこの手の解約クレームには慣れっこであの手この手で違約金を取りに来るだろう。
できるだけダメージを低くするためには相手が言い訳できないくらいのミスとか不備を見つけ出して突き付けないとな。。。

一番の理想は全て白紙撤回で土地も買い戻してもらえる事だけどかなりキツイかな。。。
最悪でも請負解除の200万は損しても土地だけでも買い取ってもらえるか?だな。
若しくは元々の請負価格で建てさせる。。。か?でもそれは感情的にもう嫌だって言うしな。

考えられる一番最低最悪の結末は200万を取られて土地も残されて、今までにかかった費用を請求される事か・・・

う~ん。なかなか面白くなってきた。当事者の友人からしたら一ミリも面白くないだろうけど・・・


さて、ここからどうやって巻き返そうか。
幸いにも友人は土地の購入前からの資料を全て保管してくれている。
嫁さんが細かい人で日時と打ち合わせ内容を手帳にちゃんと残す人だったらしい。

まずは時系列でまとめてみてハウスセンチュリーの不備を炙り出す作業だな・・・


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2021年11月・・・土地に合う建築プランのラフ図面を見て打ち合わせ
2021年12月・・・銀行に融資相談
2022年1月・・・土地の売買契約締結
2022年2月・・・土地の決済
2022年3月・・・間取りプランの決定
2022年8月・・・緩和区域の建築開発許可申請
2022年12月・・・開発許可が難航していると連絡あり
2023年1月・・・基礎工法の条件付き?で開発許可取得
2023年3月・・・1500万円の値上げ←今ここ

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2月の土地の決済後に緩和区域の開発申請が8月?
申請に半年もかかる?
そこから更に半年で許可?しかも基礎の条件付き?
う~ん、ここが攻めどころな気もするがまだ材料が弱い。
もう一押し何か掴めないかな・・・

あ、隣の土地もハウスセンチュリーの建築計画中って言ってたっけ。
地型のいい土地を無理くり割って細長い変な土地にしやがって・・・
こんな建築屋と不動産屋が増えているから沖縄の土地は意味が分からないくらいに切り刻まれた残骸みたいなのばかり残されるんだよな・・・
こんな土地はいずれ相続した子供や孫が売る時は売り物にならんだろばかやろう。不動産屋ならちゃんと後世に残る資産になるようにさ・・・

よし、いい感じにハウスセンチュリーに対する個人的な怒りも出てきた。テンションが上がる。

とりあえず友人に話してハウスセンチュリーに再度打ち合わせのアポを取ってもらった。
まずは友人夫婦だけで再面談をしてもらう。
奥さんが強気で話せそうだから嫁さんメインで話すように伝える。

『当初の計画だと既に完成して今頃は引っ越しができているはずだった。不手際はハウスセンチュリー側にある』
『建築の値上げも受け入れられない。むしろ解約したい』
『建てられないというなら土地も買い取ってもらって全て白紙に戻してもらう』

この三点を強く主張するようにアドバイス。
箇条書きでメモも渡して抜けが無いように攻めてくるように伝えた。
いい結果を持ってくるためには最初でガツンと強めの要求を突きつけるのが交渉のセオリーだ。


数日後友人から連絡。

『条件は全て飲めない』
『こちらの不手際は一切ない』
『解約したければ違約金を払ってもらう』
『なんなら今までの資料とか全て出して訴えてもらってもいい』
『弁護士でも何でも立てていいですよ』

と強気の姿勢らしい。


ヨシ。楽しくなってきた。



長くなったので続きは次回。

では~



沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!