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ボヴァリー夫人

昔のことだ。
小学校の図書室は地域の大人にも開放されることがあった。
図書室にはガラスケースがあった。
中には本がしまわれているのだが鍵が掛けられていた。
私は好奇心でいっぱいである。
ボヴァリー夫人がその中にあった。
伏字などという言葉は知らなかったが✕印だらけの本なのは知っていた。
どんな本なのだろう?
見てみたかった。
そしてある日、そのガラスケースの鍵が開いていた。
私はボヴァリー夫人を抜き取って陰に隠れてしゃがんで読んだ。
文字が追える程度の私にはまるっきりわからない。
だが問題の✕印の箇所は判った。
なぜか好奇心が満たされるというよりひどく不愉快だった。
汚らしく思えてすぐに本を戻した。
盗み見た自分に対しての嫌悪感なのかもしれない。
今もってボヴァリー夫人を読んでいないのだがあの伏字だらけの箇所はもうないのだろうか?


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