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あの子はゾンビ猫だったのか?

正真正銘のアメショーだった。
だがペットショップの売れ残りで5ヶ月。
いた場所は暗い隅でキャリーバッグの中。
トイレは飲水。
見た途端、頭に血が上って買ってしまった。現金のみの五万円。
ガリガリで抜け毛はひどく無感情。
しかも低体温で硬直するので何度も死んだのかと思う。
抜け毛も低体温もホルモンだろうと言われたが対策はない。
多頭飼いの頃だった。無感情で無表情のアディはやはり猫のコミュニティには入れない。
だが古い猫たちはアディの怖さを知っているから虐めたりはしない。
アディは最弱だ。
力はないし小さいし。
どの猫だってアディには勝てるはずだ。
しかしアディは最強だった。
なぜ?
たぶん、不気味なのだ。
どんな格闘技のつわ者もゾンビは怖かろう。
アディにはゾンビの強さがある。
信じられない程の毛を巻き散らしてゾンビのように倒れない。
新入りはその怖さがわからないからナメてかかるがそんな時、他の猫たちの顔には「馬鹿だな、ソイツに関わるな。怖ろしいヤツなんだぞ」と書いてある。
アディは狸寝入りならぬ狸死にをする猫だった。
無表情なりに家族は好きだったらしく入院すると看護士さんが笑う。
「あらまあ、喜んでる」
何度も何度も狸死にされた。
本当に死んでしまってからもあと1時間もしたら生き返るのではないかとしか思えなかった。
16年一緒に暮らした。
あんなゾンビ猫はアディしか知らない。

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