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稲光

先ほどの激しい稲光も轟音も嘘のように静まり返っていつもの夏の午後である。
外は蒸し暑いし。
本日は生協が届く日でもある。
ちょうどその荷物が届くはずの時間に空が暗くなり始めた。
みるみるうちに雨が降り出し風が吹き荒れて横殴りの雨に視界が消えた。
空には何本もの光の閃光が走る。
こりゃもう生協のお兄さんも配達不可能だ、どこかに避難しててほしい。
でも車って落雷されないのかな?
あれこれ考えていた。
仕事って大変だ。生きるって大変だと雷雨を眺めて考える。
少し雷雨が収まって生協のお兄さんが来た。
「裏手の道まで来たんですけどこりゃ、無理だと思って車の中にいました、もう少し早く来られたんですけど」と謝る。
いや、あんな激しい雷雨の中で配達されたら胸が痛くて泣きそうだ。
「とんでもない、避難してくれていて良かった」と答える。
ふと気がついた。
私は雷雨を部屋の中から眺めながら楽しんだが雷雨に苦労している人もいるのだ。
誰もが満足するユートピアなんて存在不可能だなと思う。


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