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2017年 創作

タイトル:シュガーorニコチンジャンキー

プリンスホテルのアフタヌーンティー
キラキラした甘美なスイーツ達に
キラキラしたアタシとオトモダチ。

完璧、そう。今日も中林愛奈はカンペキ。

目元は二重切開に目頭と目尻も切開をして
タレ目になる様にグラマラスラインも施した
いつでもパッチリな瞳である為に眼瞼下垂の
手術もして眉毛アートもバッチリ。
涙袋には定期的にヒアルロン酸を打っている。

最初は、涙袋のヒアルロン酸を入れる前の麻酔の注射すら痛くて二度とやるもんか。と思ったけれどヒアルロン酸が皮膚に吸収されて見る見るうちに涙袋のぷっくり感が無くなると痛みなんかよりも見目が大事だった。

目元だけでこんなにしているのに、と思うかもしれないけれど愛奈は鼻にはプロテーゼよりも自身の耳の軟骨よりも優れた素材を扱っているクリニックで鼻先を高くし鼻のてっぺんをツンっと尖らせ、小鼻は小さくした。歯列矯正は勿論、ホワイトニングにもずっと通っている。

パーツだけでは終わらない、何故なら完璧じゃなきゃいけないから。初めての脂肪吸引は顎下、フェイスラインだった。いくらパーツを一流にしたとてベースがぼんやりしていたら輝けない。輪郭を直して愛奈は初めて自分の顔にうっとりとした、甘くてとろけるようなチョコレートを食べたときのように。それは、それは、愛奈にとって人生でとてつもない快感だった。

愛奈は勿論体型管理をしっかり行っていたしきちんと結果が着いて来ていた。細身でスラッとしていた、だが悪く言えば貧相であまりソソられない身体だった。愛奈は直ぐにこの顔にこの身体は酷い!と思った。確かに痩せ身ではあるが人それぞれ肉の付き方や落ちにくい脂肪等は異なる、愛奈はいつ裸になっても老若男女に拍手されるような身体が欲しくなった。贅肉は全て脂肪吸引をして、逆に削げ過ぎている所には脂肪注入をした。勿論、豊胸も。ブルーライトで照らされてもバレないように脂肪注入での豊胸だ。シリコン豊胸は暗闇の中ブルーライトで照らされると透けてしまうのだ。

愛奈は遂に顔も身体もカンペキになった。
愛奈は自宅で自身を眺め、これ以上の女は居ないと微笑んだ。

だけど、愛奈はいつでも空っぽであった。
この自宅さえも大きな姿見とベッドだけ。ウォークインクローゼットがあるからタンスも無い、食事はいつも栄養補助食品のゼリーや配達食をキッチンの流しで義務的に食べるだけでテーブルも無い。
シンクには吸殻でいっぱいになった灰皿がひとつ
メンソールのキッついタールのタバコ、やめられない

化粧は姿見の前でするから化粧ポーチがあれば十分。そもそも化粧なんて必要ないくらい完璧だから愛奈は化粧が出来なくなったとしてもそこまで焦らないのである。

愛奈はつい、数分前まで姿見に映るカンペキな
自分を見て微笑んでいたのに何も無い部屋を見渡して次はどうしたらいいのかしら、と目を伏せ思案した。

結果、愛奈はオトモダチを作ることにした。独りだから寂しいのよ、独りだから空っぽなのよ、と思いついたようアハハと笑って手っ取り早くオトモダチが作れる方法を考え、落ち着いた雰囲気のキャバクラの求人に応募した。別に週に何遍も出勤する気は無いし、適当に気の合うコを見付けたら連絡先を交換して辞めてやろうと思っていた。

愛奈はそんな表面上のオトモダチを手に入れた

泉という、源氏名だが愛奈にとっては本名だとか源氏名だとかどうでもいい話なのだ。私の隣に居てくれるのか否か、それだけの話。名前なんて無くてもいい。泉が愛奈の事をどう思っているかは定かでは無いが愛奈は泉を自身の背景を彩ってくれるお人形さんとしか思っていないのだ。

泉は何故、愛奈と会うのか分からないが愛奈が見定めただけはあるというものか。愛奈より美しいとは言わないが何と言うか愛奈とは方向性の違う美しさをもつ女性であった。
そうだ、愛奈が女の子。であれば泉は女性、と評すだろう。それは年齢の話ではなく落ち着いた雰囲気で相手の話を切らないヤマトナデシコと言うような言葉が似合う長身の黒髪ストレートの女だった。

そんなお人形を手に入れた愛奈は週にしばしば泉を呼び出し、見よう見まねとしか言いようの無い若者の流行り事をやり写真に収めいつなんどきも写真写りを気にしてどんなに不意の写真だとしても美しい愛奈が写っていれば満足しニコニコとしていた。

泉も呼ばれればめかしこんで出てくるし愛奈の話を辛抱強く聞きカメラマンをして愛奈の思い付きの時間でお開きになる。

愛奈の話なんてどうせいつ聞いたってひとつしか無いのだ。親が大企業の社長で愛奈に湯水のように金を使わせる代わり愛奈が乳児の頃から一切関わらなかった、仕事が忙しいだとか、そんな理由で。愛奈はいつもベビーシッターに世話を焼かれ、学校では授業参観にも運動会にも親が来てくれないことを馬鹿にされ、それでも欲しいものがあれば同級生の誰よりも良いものを手に入れられた。だけど愛奈が欲しいものは高い玩具でも絵本でもない、本当のお父さんとお母さんとの時間が欲しかったんだ。
愛奈の両親は愛奈がグレたりしたときに手っ取り早く黙らせるものが金であったから愛奈が産まれた時から愛奈には際限なく金を使わせる代わりに自分達は愛奈とは関わらないと言い本当に産まれて一度も顔すら拝んでいない。

愛奈の顔が180度変わったって言っても
愛奈の肉親はそれに気付かない、気付けない。

愛奈は学校を嫌いになり、中学までは出たが高校を通信制にしたせいでなぁなぁになり結局中退して頭はそんなに良くない。愛奈のレールを曲げたのは間違いなく愛奈の両親とそれを止めなかった周りだ。

愛奈はいつも走っている、動くのを止めたら死んでしまうかのように。だから愛奈が整形に手を出した時、マズい、と思った。思ったけど止められなかった、止めてやれなかった。
全身改造人間みたくなって、漸く自分の家の異常さなんかに気付いて友達を作るなんて言い出したけどそのオトモダチもいつまで続くんだろうか。愛奈が泉を呼び出してわがまま放題をするのを見てると毎度ヒヤヒヤする。泉がブチキレて愛奈に現実を刺したらどうしようって。愛奈は現実が分からないんだ、優しくしてやってくれ、そんな手前勝手な願いがいつ_________

パシャッッ____パリンッ________

店内で食器の割れる音が聞こえ、つい愛奈の方へ目線をやると正に愛奈達の席の音だったらしい。何事だ、と思いつつも静かに愛奈と泉の間に直ぐに盾になれるよう数歩ずつ慎重に位置をズレる。

「盲目的で欠いた感情に縋りたいんでしょ?」

「私、貴女みたいな人間が大嫌いなの」

「貴女、いくら見目整えても中身がゴッソリ欠落してるんだもの。ビジネスのお話があるかと思っていたけれど同じ話を10回以上されたらビジネスでは無さそうだし私は今日をもってオトモダチ退職させてもらうわ。さようなら」

泉はそう云うやいなや何時もは割り勘だがオトモダチ退職の言葉通り金持ちが払えということなのか一銭も置いていかず出口に颯爽と歩いていった。とりあえず泉はブチキレてはいたが直接愛奈に危害を加えるような奴では無くて良かった。この点だけに関しては愛奈の人を見る目に感謝しよう。

張本人の愛奈はティーカップを叩き割られたこと辺りから既にショックだったらしくダメージが深そうだ。他の客もいるし面倒だからさっさと家に送り返そう。肩をポンと叩くと愛奈は伏せていた顔を上げ、恐ろしく白い顔で俺を見上げコクリと頷きカードを手渡してきたのでコレで払ってこいという意味だろう。

会計を終え、愛奈に声をかけると無言で着いてくる。パーキングに停めていた車の助手席の扉を開け愛奈を乗せてから自分も車に乗車し無言のまま愛奈のタワーマンションまで送りつけた

駐車場に停め、鍵を開け愛奈が降りたら俺の今日の仕事は終わりだ。だが今日は残業だな。

「愛奈、着いた」

「アタシ、間違ってたかな。泉と仲良しだと思ってた」

「そもそも泉って名前じゃねーし。そんな奴と仲良しってアホか」

「源氏名か本名かってこと?どうでもいいじゃん」

「そうだよ、どうでもいいんだよ。だけど泉は俺達より神経質だったってだけだよ、なんも気にすることねえ【普通】だ【普通】」

「ホントに?コレ【普通】?友達退職されるの【普通】?」

「おん、友達退職はちょっと面白いけど友達やめるなんてクソ【普通】、【普通】過ぎてもっとオモロい話しろやーてなる」

「大和が言うならそうなんだね。ねぇアタシ人間はまだ早かったみたいだから家具を増やすことにしようかなって、世界一綺麗なアタシが床に座って化粧してるなんて有り得ないじゃない?」

「だからドレッサー買おうと思うの、届いたら大和が組み立ててね。アタシはネイル折れたら困るからさ」

「俺運転手なんだけど、お前の執事じゃねえからな、組み立てとかマジで業務外だわ」

俺は中林愛奈という砂糖に依存してしまっているのだろう。何かと近くでドジをする奴だと思っていた、そしてそれをそのままスルーするのもなんだと手を貸していたらコイツの壮大なバックボーンを知らない俺は妙に懐かれてしまい、それを満更でも無い顔で受け入れてしまったから俺は俺達はずぅっと成長せずに傷の舐め合いをして生きている。愛奈の世界を壊すやつは俺が食い止めるし愛奈がどれだけ姿形が変わろうと中身は一生愛が枯渇している悲しい人間なのには変わりない。愛奈の親は名前に愛を入れたのは鬼畜の所業だと思う。まぁ俺は愛奈に唯一懐かれてるってだけの情報を嗅ぎ付けた愛奈の親父が高校卒業の年にわざわざ話に来て愛奈の専属ドライバーにならないかなんてトンチキな仕事を貰ったんだが。そんな話を俺に直接持ってくる暇があるなら娘に会ってやれよと思うんだがね。

全員が全員黒い唾を飲み込んで溜めて溜めて
溜め込んで、いつか決壊しないか心配だ

砂糖とニコチンの依存度は半端ない

俺はいつでもアメを舐めているし

愛奈はあんな面していっつもキツいタバコを吸ってる


それでも俺は愛奈に愛をやれないし
愛奈も俺からの愛は求めていない
だけど2人で共依存していることは確かだ、男女の関係でもなんでもない。ただ側に居るのがコイツが良いってだけなんだ互いに、それくらい互いのことを知っちまって1番近くで見てきちまったんだ。

お互い、どちらかが居なくなれば機能しなくなるのだろう。



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追記
お読み頂きありがとうございます。こちらはタイトル記載通り2017年に書いたものでしてわたくしが中学生の頃の創作物です。そして人生で初めて書いた小説?短編です!なんかもうえらい恥ずかしいですが、出すのはタダなので!と思いままよ!とnoteに載せました。修正等してないので中学生の作文程度に読んで貰えたら嬉しいです。

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