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【落窪物語②】平安物語に見るいじめの実態「阿漕」と「道頼」に救われる

 物語の内容に触れていますので、今読んでおられる方、読む予定の方はご配慮の上ご覧ください。

 「落窪(おちくぼ)物語」は平安時代の継子いじめ譚であることは、昨日お伝えしました。全四巻なのですが、内容的には三部構成となっています。ヒロインが継母にいじめられる第一部、ヒロインの周囲が継母及びその家族に報復をする第二部、第三部ではヒロイン及び周辺の人々と継母の家族が和解して大団円を迎えます。物語は単純な展開ではありますが、三部それぞれがとてもエグいのです。

 ヒロインである「落窪の君」は、琴も裁縫も上手で教養も備えた若く美しい女性です。彼女は、時の「中納言源忠頼」と天皇家の血を引く母との間に生まれたのですが、母は早逝してしまいます。「中納言忠頼」と正妻(「北の方」 継母)には三男四女の子がおりました。この家族へ「落窪の君」が引き取られるところから物語もいじめも始まります。
 「落窪の君」とは彼女が住まわされた場所から、家族にそう呼ばれます。邸宅の中に床が一段下がった場所があり、物置などがあった一角の見窄らしい小部屋に彼女は置かれます。
 彼女は家族の着古したボロボロの服や冬でも薄着で過ごします。実母から受け継いだ上等な調度品を「北の方」に奪われていきます。縫物が達者で、「北の方」から家族の衣服を次々と縫わされます。「北の方」の物言いは本当に意地悪く読んでいてもかなりムカつきます。夫の「中納言忠頼」にはそんな状況を悟られないように適当な嘘を並べます。「中納言忠頼」や娘たちも「北の方」の言いなりで頼りにはなりません。可哀そうな心根の優しい「落窪の君」は、毎日泣いて暮らします。
 そんなヒロインをサポートするスーパーサブの「阿漕」は「落窪の君」のピンチを幾度となく救います。実母の代から仕えている女房で、「落窪の君」への深い愛情が伺えて救われます。近年のマンガでは「阿漕」の視点から書かれているものもあるほど重要人物です。
 ここで白馬の王子様も登場します。「右近の少将道頼」、父は左大将の名門で当然イケメンです。モデルは藤原道長の甥っ子藤原道頼とも言われています。「少将道頼」は「落窪の君」の美貌や高貴さに惹かれ「阿漕」の協力もあり、彼女の部屋に通い出します。彼女の置かれた状況に心を痛めながら、「北の方」に歯向かうこともなく、夜遅くまで泣きながら縫物をしている健気な彼女に心を奪われていきます。
 それに感づいた「北の方」は針子を奪われては大変と「落窪の君」を落窪の中でも粗悪な鍵のかかる物置へ追いやります。その上、年寄りの居候の叔父「典薬の助」の嫁にしてしまおうと、物置に「典薬の助」を送り込みます。「阿漕」が機転を利かせ、「典薬の助」は物置に入れず、寒いところでごそごそしてる間にお腹が痛くなり・・・(雅な平安物語にこんな描写あるんだとびっくり!詳細は避けます)
 「阿漕」とその夫、「少将道頼」の3人は「落窪の君」奪還作戦を成功させます。「落窪の君」は落窪より脱出し、「少将道頼」と結ばれます。
 物語はまだ半分です。ここから「少将道頼」の意地悪な「北の方」へのえげつない逆襲が始まります。物語はこの後、登場人物たちが出世して冠位や役職を上げていくので、呼び名が変わり少々混乱をきたします。
 明日は復讐と驚きの大団円までご紹介いたします。
 長くなって申し訳ありません。明日も読んでいただけたら幸いです。

【REG's Diary   たぶれ落窪草紙  3月2日(土)】
 
 


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