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針葉樹を深掘りしすぎたら深海に行き着いちゃった話。(その5:最後は花粉の話)

針葉樹の花粉は受粉だけが目的なのか

植物に限ったことではないかもしれないけれど、
自然のものには形状やライフスタイルに合理的な意味や役割がある。
奇怪な形状の多肉植物の形にも意味があり、
それは生きる環境の中でそれぞれがベストを尽くして
辿り着いた形状なのだと思う。

中学校に上がると同時に東京で暮らすことになって数十年。
毎年この時期の黄砂の如きスギ花粉の襲来には驚かされる。
幸い私はいまだに花粉症にはなっていない。
人に聞かれる時は、
「田舎の山育ちだからですかねー」などと誤魔化すけれど、
実際のところは、自分が立てた仮説に基づいて、
行っている試作の結果だと思っている。

ひとつは「花粉を嫌わない」という洗脳で、
「花粉なんて嫌い!」ということは絶対に言葉に口に出さず。
「毎年決まってある風物詩」
「梅雨の雨と同じ鬱陶しいけど、仕方ないもの」
と、年間通して思い込むこと。
それは、嫌うという感情や行動は、
好きという感情よりも深く心に刻まれてしまうものだと思うから。
その逆張りで、日頃から杉や檜に触れて「いい木だなぁ」と
呟くこともしている。
「愛情の刷り込み」というやつ。

もう一つは、日本人が昔から食べてきた山菜やクセのある植物や
香辛料を可能な限り少量でも生食すること。
機会があれば、つくしやよもぎ、ヨメナ、イタドリ、わらび、ゼンマイ
たけのこ、銀杏、たんぽぽ、うど、ふき、うるい、行者ニンニク、
せり、クレソン、山椒、からしな、かたばみ、など、
その時手に入るものはなるべく葉っぱ1枚でも食べるように心がけている。

理由は、どれが何に効くかはわからないけれど、
長く人が食べてきたクセのある、アクがある植物には、
人の体を形成する為に必要な物質が含まれていて、
人の体はそれらを効率よく分解して吸収できる能力が備わっていると考えているからで、それらに含まれる物質の何かがうまいこと作用して
花粉症になっていないのだと思っている。

それでも、関東のスギ花粉の量は異常だと思うのです。
花粉の飛散は年々増えていて、その理由は地球温暖化のせいだと
考えられているようですが、本当にそうなのでしょうか。

実はこのコラムを書くまで、
私はスギ花粉は、単純に気温が上がったからだとは考えていなくて、
杉林の土から栄養分が減り続けているからだと考えていたんです。
そもそも植林された杉林は下草があまり生えず、
また、下草を生やさない環境を作っていますよね。
そのせいか、どうも林の香りは美味しくない。

紅葉樹の森は甘さ、酸味、苦味、えぐみ、そういう香りや空気の味が
するものです。
けれど、杉林には不快ではないけれど、酸味と、スパイス的な刺激を含んだ香りや味に加えて、石の粉のような香りがあって、
特に、石の粉のような匂いが増えてきているような気がしていたんです。

とはいえ、そんなに山に行けるわけじゃないから、
行った時の香りがたまたまそうだった可能性もなくはない。
けれど、何かが増えた感じがするということは、
同時に何かが減っている。のかもしれない。

そんな時、花粉の粒が年々小さくなり、
量は増えているという話を聞きました。

それはつまり、粒の大きな花粉が作れないくらい、栄養が足りていなくて、
生産できるのが、粒の小さな花粉になってしまったため、
打開策として、数多く生産するようになったということだと考えたんです。

野菜や花きでもそうですが、大きくて立派なものを作るには、
間引きや選定を行なって、栄養を一つ、もしくが数個に限定させますよね。
つまり、養分が十分にあれば、花粉の粒も大きくなり、
大きな花粉は重いため、それほど遠くへは飛ばず
しかも、花粉の粒が大きければ、
飛散の範囲は現在よりはかなり狭くなるのだと考えます。

花粉の大きさについては釈然としないものがまだあります。
そもそも花粉は植物は受粉するための行為、のはずです。
けれど針葉樹の花粉の量は受粉に対して圧倒的に数が多すぎます。

そこで思い当たったのが、樹木の肥料の直生産システムです。
つまり、広葉樹のうちの落葉樹が自身の葉で養分を作り、
落葉させた後、分解生物の力を借りて腐葉土を生産させ、
できた栄養素を自身の養分として吸収するという、
限りなく無駄のない仕組みで、
針葉樹の場合、落ちた葉やバークが分解するまでには
かなり時間がかかることを考えれば、
もしかして、花粉を分解しやすい養分として生産しているのではないか。

花粉であれば、針葉樹の根元に積もった葉やバークの分厚い層の
隙間を通って土の層まで落ちて行きやすいし、
雨が降ればなおさら下へ落とすことができます。

花粉混じりの雨に当たった傘はそのままにしておくと
臭く匂ってきますが、
それほど花粉の分解(腐敗)速度が速い事の意味わかる気がします。

おそらく針葉樹にとって、ほぼ即効性の養分を手に入れられる機会は、
花粉を飛ばせるわずかな期間しかないから。

短時間で花粉を拡散させるのは受粉が目的というよりも、
もしかしたら自作の養分を樹木の下に落とすことの方が
意味合いは大きく、
その延長線上に受粉を持ってきているのかもしれません。

でも、現在では花粉を重くするだけの養分が足りなくなり、
それでもなんとかして養分を直生産するも、
花粉はどんどん痩せて粒が小さくなり、
樹木の下に落ちるはずの花粉は風に飛ばされてしまう。

また、杉に至っては林業の衰退が原因で
林の管理がおざなりになり、
もともとは針葉樹にはあまり向かない山は、
下草や低木にとっては住みやすい土地なため、
そういった木々が侵食することによって針葉樹が必要な栄養は
奪われてしまう。

肥料の自家製産で栄養が賄えず、
ひたすら花粉づくりのために養分を消費し続ける杉。

もしかしたらそう遠くない将来、
植林された杉の多くは一気に枯れ始める。
そんな現象が起こってしまうかもしれません。

果たして私がこれから挑戦する実験は、
針葉樹のための何かの役に立てるのか。
排除ではない解決法を模索したいと思います。
民間人だけどね。



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