分解・抽象化・言語化する理由

2022.05.21 大幅に加筆訂正
2022.05.22 「抽象化したけど、あまり良くなかった例」加筆訂正


最近・・・というか10年くらい、いろいろな事象を抽象化して言語化してみるブームがきている。それで、伝わらなくてもいいやと思えるようになったので、noteにたくさん記事を書いている。

抽象化すると作る時に便利なんすよね。
新しいものを考え出す時の飛距離が伸びる。目的の解像度が変わる。それとうまく作るためのコツのようなものが見えてくる。
で、逆に良くない抽象化もあると思ったのでそれも書いた。

まだ少し散らかっているが書いてみます。

新しい料理

例えば「新しい料理」を考えるとする。

焼き野菜から新しい料理を考える。

見慣れない海外の野菜を焼いてみよう。
調味料を変えてみよう。
このあたりの、入れる物を別のものにするものは、すぐに思いつきそうだ。
醤油じゃなくてナンプラーにしてみよう、とかね。

別のルートを考える。
野菜を焼くと、なぜ美味しいのだろう?
これを分解し、言語化してみる。

料理番組や本を読んでいると、度々以下のような説明が出てくる。
・火を通すと、野菜の水分が飛び、味が濃くなる
・熱によって細胞が破壊され、調味料の味が染みやすくなる
・熱によって状態が変わる(焼き目によって味を変える)
などなど。

これを元にアイデアを出す。
・水分を飛ばすのに、干してみるのはどうだろう?
・細胞を破壊するのに上から叩いてみるのはどうだろう?
・冷たいまま焼き目だけつけるのはできないだろうか?

このように、分解し言語化することで、
調味料や食材を変えるのとは違ったアイデアが生まれそうな予感がある。
手段を変えると料理名が変わる。

分解して言語化することで、新しいアイデアの土台ができる。
そして焼くという事からすらも解放され世界が広がり自由になる。

この、もの作りの土台を作り、そして自由を得るという事が、抽象化・言語化なんじゃないか、と、ボクは考えている。

良い作品の共通点から言葉に落とす

ミュージックビデオの話をする。

ミュージックビデオを大量に見た時、なんだか良いと感じたミュージックビデオは全てカメラが動いているのに気づいた、という話を少し前に書いた。

作品には良いものにするための文法がある。
物語における「起承転結」や、ハリウッド映画の「ビートシートメソッド」、ダンスミュージックの「4つ打ち」なども、きっと誰かが「自分が好きな作品って/ウケる作品ってほとんどこうじゃね?」と見出したものだろう。どうやらマンガにもあるらしくドラゴンボールの編集者ドクターマシリトはそれを見出している

一度理解すると、作品を作る時にとても便利だ。
少なくとも、どんな作品を作っても、ある程度まではクオリティを底上げしてくれる。たとえその文法から外れた作品を作った時にも、良い物差しとなるだろう。これを自分で見つけるためにたくさんの作品を見て共通点を見つけ、抽象化し、分解し、言語化する。

何を大事にするか、どんなことに感動してきたか、作りたいものは何か、人によってこの結果は変わるだろう。だから作風と言うか、人によってつくるものが変わってくる。
そしてそれが見つかったら、そこからまた作る。

抽象化したけど、あまり良くなかった例

むかしゲーム会社にいたので、「ゲーム」というものを徹底的に抽象化・言語化できないか試みた事がある。

その時は、「障害を乗り越え、あるパラメーターをコントロールする」というのがゲームなのだと考えた。
例をあげてみる。
・ハイスコアを目指す(ピンボールなど)
・ステージ内での進行度を上げる(スーパーマリオなど)
・物語の進行度を上げる(ドラクエなど)

どうだろうか。
マンガや、映画、それにインタラクティブ作品と呼ばれるものには、このパラメータのコントロール要素がない。ゲームだけがもっている要素を抜き出すとこういう書き方になると考えた。

しかし、これでは「ゲーム」は作れても「面白いゲーム」になるかどうかは別の話。なにより「クソゲー」もこの中に含まれてしまう。

思考実験としては面白いけど、良い作品を作るヒントにはなりえなかった。
実際に試みた事もあるんだけど、残念ながら、作品の面白さが思考体験の面白さを超える事はなかった。
そこには、分解する元に感動がないからだと思う。元からないものを分解しても、存在しない。

この場合は、自分が感動した面白いゲームを分解すべきだったな、と今では思う。クソゲーまで含める必要はないんよね。
思考する事は面白い。だからこそ危険だと思った経験。

ただ、ボクもこれが全く意味のない事だとは思っていないし、
ここからほんとに新しいゲームが生まれる事もあるとは思う。

だけど、ユーザーが「新しさ」だけに夢中になることって実はない。
これは残念だけど、ない。
新しさは、その次の瞬間に新しくなくなる。
「新しいし、夢中になるもの」を探す必要がある。

それはエンターテイメントというものが、ユーザーを夢中にさせるものという使命をもっているから。

なので、作品を作るのであれば感動から見出していくと、感動がセットになっていて良いんじゃないかなと思う。

ここまで分解すれば、マンガで見つけた感動を、ゲームに持ち込むことだってできる。

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