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読書録「FACT FULLNESS」

ハンス・ロスリング氏による書籍「FACT FULLNESS」を読了。
個人的な備忘録として、簡単な感想とまとめを記載しておく。

1.本書との出会いの経緯
本屋ぶらり+時間的な焦りで選んだ一冊。同伴していた子供が駄々をこねだし、読んで損はないだろうと思った同書を手に取る。世間よりも遅れての読書になった。

2.概要
10章に渡り10個の示唆を示していく同書。西洋諸国など先進国が思い込んでいる世界は、データから見ると誤っていることを示しており、教育やメディアの報道により刷り込まれた思い込みを信じる危険性を訴えている。

また、机上の世界だけでは思い込みを助長させ、結果的に現場で誤った判断を招く事例が多く紹介されている。そのため、現実を見ること、現場を見ることの重要性が語られた書。

3.要点
著者の実体験と各国で行ってきた世界に対するアンケートの結果をもとに、如何に自分たちが思い描く世界と、現実の世界が異なっているかを示唆している。その過程で、人間が至りがちな思考パターンを10項目に分類し、その結果、どのようなデメリットが有るかが記されている。

例えば、「ネガティブ本能」という章では、メディアがセンセーショナルなネガティブなニュースを中心に取り上げることにより、(特に西洋諸国の人々は)何事も悪くなっていると誤解してしまうことが上げられている。メディアは注目されやすいものを選ぶが、その裏では報道されないレベルの良い発展や緩やかな進化は続いている。メディアの情報がすべてではないこと、を常識として身につけることを促している。

4.個人的な深堀り
本書を読む前に、行動経済学や幸福経済学の本を読んでいたからなのか、10個の項目に関して大きな示唆を得ることができなかった。いずれの項目も人間が陥りがちな心理状態の1つであり、おそらくできている人はできている(自分はそうでもないので気をつけていきたいのだが)。

本書の重要なポイントは、過去の教育やメディアから受けたある種の洗脳によって思い込んでいる世界と、現実の世界が如何に違っているを突きつけたことだろう。専門家や政治家など「頭の良い」と言われる集団ですら、正解率が高いとは言えないことを本書は示した。データによって現実を捉えること、正しいデータを活用すること、そして現場を知ることの重要性がポイントと思う。

一方で、ここからは個人的な意見を交えた話になるが、データというものも扱いが非常に難しいと考えている。本書で取り扱っているデータは、主に国際機関のデータのため信頼性はそれなりに高いのだろうが、データの取得方法、分母となる集団など、統計データの背景も含めて読み取らないことには誤った世界を見据えてしまう。データの怖いところは、信頼できるように見えて信頼できないデータが山のように存在するところだ。データを見極める力も今後の重要なスキルになるかもしれない。

本書ではもう1つ、現場での失敗談が多く語られている。個人的には、データで得た世界を基にした仮説が正しいかを判断するためには、やはり現場を見るしかないと考えている。最新の正しいデータを得て、そもそも誤った現実を正すこと、その結果を確認するために現場を調査することの2つが揃ってこそ初めて身になる項目が多いのかと考えている。

5.所感とまとめ
本書では、「正しく最新のデータを得て自分の思い込みをアップデートすること」、「現場を知りデータが正しいことを知ること」の2点を示唆として得ることができた。また、本書が2019年ビジネス書の中で最も売れた本であることを考えると、10個の心理的示唆は「当たり前」の1つとして認識されていくだろう。

今後は、本書のあとがきに多く記載されていた様々なデータ取得元を参照、活用することを行っていき、「正しいデータ」を如何に得ていくのか、データの取得方法の精度アップなど図っていくことで、自身の思い込みを減らしていくことに取り組んでみたい。

※同書の行き先:メルカリで売る予定。