見出し画像

読書録「ジョブ理論」

クレイトン・M・クリステンセン氏による書籍「ジョブ理論」を読了。
個人的な備忘録として、簡単な感想とまとめを記載しておく。

1.本書との出会いの経緯
2年前からの積み本。もっと早く読んでおけばよかった。会社の研修にてコンサルタント講師から勧められていた1冊。

2.読書録としての要点
・”顧客はある「進歩」を得るために製品・サービスを「雇用」する”
・ジョブ理論は目的論やペルソナ分析など統合的にまとめた理論
・企業視点のジョブの解決する製品・サービスは顧客には響かない

3.本書の概要
「ジョブ理論」という1つの思考法について紹介された書。著者のクレイトン・M・クリステンセン氏は「イノベーションの本質」で有名であるが、本書によれば「イノベーションの本質」よりも長い年月をかけて練り上げた理論が「ジョブ理論」とのこと。イノベーションと聞くと、ビジネス活動に特化した話に思えるが、日常生活でもジョブ理論を用いることで考えさせられることが多くなり、読み終わった後に視野が広くなった1冊である。

ジョブの定義に始まり、様々な会社の成功事例から、なぜそれが成功したのか、ジョブ理論的にはどのように考えられるのか、が状況ごとに説明されている。ジョブの発掘(未知のジョブ)もあり、オペレーションの中に生まれるイノベーションと、新規のイノベーションにおけるジョブの違いもしるされている。

4.本書の要点
要点となる一言は、”顧客はある「進歩」を得るために製品やサービスを生活の中に「雇用」する”に尽きると思う。人は何かモノやサービスを購入するとき、別の何かを「解雇」していると表現されている。この「進歩」のことを「ジョブ」と表現している。

例えば、私は最近、自宅の庭に人工芝を敷いた。毎年定期的に草をむしらないと、雑草だらけで見栄えが悪い。むしる行為もさながら、この庭を有効活用できないかと考えていた。この"庭を有効活用したい"というジョブに対して、人工芝の敷設を考えたこともあったが、値段が高く手が出ていなかった。しかし、今回は知人の紹介で格安で敷設できることがわかり、人工芝を「雇用」することを決めたのだ。この進歩により、”庭を有効活用する”というジョブを解決し、”草をむしる”労働から開放され、”子供と遊べる空間”も手に入れた。

本書では、上記のように顧客が置かれた「状況」を正しく理解し、顧客が解決したいジョブを捉えることが成功するビジネスの秘訣とされている。顧客が置き去りになり、機能的な進歩、技術的な革新、数値目標的な開発など企業の都合が介在したプロダクトやサービスは、顧客が真に解決したいジョブを解決できず、他社への乗り換え(自社製品の解雇)を促したり評判の悪化を招くと示唆されている。

また、新規イノベーションの場合は、目安となる顧客の行動がないため難易度が高いと思っていたが、それは日常生活に潜んでいることが多く、日々の生活の中でジョブを意識することで新規イノベーションを見いだせるということ。世を賑わすサービスの多くは、創業者が生活の中で解決したいと思ったジョブ、それにより得られる進歩を実現するために邁進した結果だという。日常生活の中でジョブを意識し続けることが、新しい種を見つける活動につながるかもしれない。

5.本書の深堀り
ジョブ理論で語られていることは、目的と手段論、ペルソナ分析などいくつかの理論を体系的に取りまとめ、1つの考え方に昇華させたものと理解している。断片的には、他所で聞いたことのある類似理論はあるが、ジョブ理論という1つの形にまとめたことで、統合的に理解することができた。

例えば、3章で示した私の活動とジョブの適用例は、言ってしまえばペルソナ分析の1つでもある。ペルソナの場合、1つのターゲット層の行動を深堀りし、その活動の中からイノベーションの種を見つける動きであり、捉える要素は似ている。また、顧客が雇用する意味を見出すのは、顧客の目的を徹底的に深堀りする行為であると考えている。

6.所感とまとめ
本書を通じて、我々の製品・サービスを顧客は”何のために雇うのか”、”何のジョブを解決するために雇うのか”、この2つの問いを常に意識し続けることが重要な示唆として得ることができた。

事業構築を推進する身としては、上記の問いを日頃から意識した活動を続けていき、顧客のジョブを解決できるサービスを世に出していきたい。