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やっぱり私は‥

新しく有料道路が出来たんだ。今日はこっち通ってみようか。

ピッと音がしてゲートが開くと、彼はアクセルグッと踏み込んた。クルマは新しく真っ直ぐな坂道を勢いよく上り始め、直ぐにトンネルに入った。

この道を使うと、今までの半分の時間で、この山の向こうに行けるみたい。

へー、そうなんだ。

私は興味なさげに返事をした。

トンネルのオレンジ色に光る照明を眺めながら、私はこの春で2年目に入る同棲生活のことを考えていた。結婚を前提として始めた同棲生活。最近は行き違いが多く、彼とは喧嘩ばかりだ。そんなとき会社の先輩から、

もし他に好きな人がいないなら、僕と付き合って欲しいんだけど。

と言われたのだ。
先輩は会社の創業者一族の一人で、しかも仕事もできる。なので時期経営者として、上役から期待されている。それにさりげない優しさやユーモアもあり、後輩からも人気がある。そんな人からの告白に、私は心が揺らぎ、同棲中の彼が居るのを隠して、先輩の告白を受け入れてしまったのだった。

クルマは真っ直ぐ伸びた道を滑るように走っている。いつも通るクネクネした山道とはえらい違いだ。それはまるで、この2年間の同棲生活と似ていた。先行きが見えない、細くて荒れた道。

ドライブから帰ったら、別れを切り出そう。
今日は私たち二人の最後のデートだ。

遠くに見えるトンネルの出口を見つめながら、私はハンカチをギュッと握り締めた。

あれ?

トンネルを出たところで彼が声を上げた。

この先通行止めだって。

どうするの?折り返すの?

いや、迂回路があるみたいだ。

看板の矢印に従い、迂回路に入った。そこはいつもの馴染みのある山道だった。緩いカーブを抜けて、急な坂道を上ると、ガードレールの向こうに見慣れた海が見えてきた。遠くの方に小鳥の鳴き声も聞こえる。

なぁ、この先に、お前の好きなカフェあるじゃん。寄ってく?

うん。久しぶりにあそこのバウムクーヘン食べたいな。

私は彼にそう返事をして、キラキラ光る海を眺めながら、先輩に本当のことを話そうと思った。

(了)

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