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暑かったり、涼しかったり、またまた熱かったり



暑い夏の午後。西日が直撃する風通しの悪い四畳半で、オレは全身汗まみれ。大の字になって伸びきっていた。涼しい場所に行けばいいのだが、あまりの暑さにその気力は失われていた。暑い暑すぎる!このままじゃダメだ。そうだ、涼しい場所を想像して現実逃避したらどうだろう?
涼しい場所と言ったら冷蔵庫だ。オレは自分が冷凍庫の中にいる冷凍食品になっているところを想像した。

スーパーのオープンストッカーの中には、いろんな種類の冷凍食品が並べられていた。オレはありきたりの冷凍コロッケ。

新しく入った方?はじめまして。

隣りに座っている冷凍ラズベリーちゃんが声をかけてきた。可愛らしいパッケージ。それにちょっと色っぽい声。

は、はじめまして。ラズベリーさん。

慌てるオレ。すると彼女が

ラズって呼んでいいのよ。コロちゃん。

あのちょっと色っぽい声でそう言った。更に緊張してカチカチになるオレ。

最初は緊張していたオレも、暫く話しているうちにかなりリラックスしてきた。彼女もオレのつまらない冗談に、楽しそうに笑ってくれている。もしかしてこれってかなりイケそうな感じ?

お互いの話しが途切れ、暫くの沈黙。オレは彼女の目を見つめた。彼女も見つめ返してくる。
あの目、絶対オレの告白待ってる感じ。絶対間違いない。オレは大きく深呼吸する。その様子を彼女はジッと見ている。そして

ラズちゃん、お、オレ‥

と言い出した途端、いきなり脇腹を掴まれた。そしてオレは、ストッカーからひっぱり出され、無造作に買い物かごへと投げ込まれた。



(了)

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