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ウォーキング

朝、うちの周りをぶらぶら散歩。
早い時間なのに、割とたくさんの人とすれ違う。

私と同じぶらぶら散歩。ジョギング、サイクリング、通勤通学。
そして、気になる彼は通勤の人でした。

細身で背は普通。ワイシャツにノーネクタイ。グレーのビジネスバッグ。いつも同じ場所ですれ違いざまチラ見する顔は、めちゃくちゃ私好み。

今日も向こうから、彼が足速にやって来て
そして、私の前で立ち止まった。

突然ですみません。毎朝会うたび
あなたのことがきになってしまって。

と、彼が私に話しかけてきた。
優しいトーンの声も私好み。

びっくりさせちゃったかな。
それで、良かったら今度、一緒にランチでもどうですか?
これはボクの名刺です。ここに携帯の番号が・・・

え!デートのお誘い?いきなりこんな場所で??

と、私は心の中で叫ぶ。こんな幸せな
出来事あっていいの?

それで、連絡先を交換したいので、
ボクの番号にワン切りして貰ってもいいですか?

と、彼がいってきたので、私はズボンのポケットに手を入れ、スマホを取り出そうとした。しかし何かに引っかかって、スマホはなかなか出てこない。下を向いて暫くポケットを真探ったあと、ちょっと顔を上げたら、

彼はもう居なかった。

その代わり、背後に何者かの気配。
振り向くと、なんと足元に大きな茶色のカエルがいた。カエルは

朝からくだらない妄想してんの
お前だけだよ。そんなオンナをイケメンが
デートに誘うわけねーだろ。目を覚ませ!

と、いきなり私に言ってきた。
人の言葉を喋るカエルの存在よりも
その言葉の内容の的確さに私は驚き、
カエルを見つめながら、ただそこに
立っているのだった。

(了)

みどりのカエルのイラスト






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