2021年梅雨。某日曜日。

「すまない、今パスタを茹でているんだ後にしてくれないか。」と言ったのは世界の終わりとハードボイルドワンダーランドだったか、それともねじまき鳥クロニクルだったか。まあ、出典の確かさは今重要じゃない。
ともかくこのセリフは僕の胸に深々と刺さった。
いつか僕がパスタを茹でているときに電話がかかってきたらそう返そうと決心したんだ。でも今僕の手元にある電話はとても進化してしまってハンズフリーでなにも支障なく会話できてしまう。不審な女性から電話がかかってきたってもうあのセリフを言うことはできない。

僕は朝っぱらからパスタを茹でている。いつもなら寝転がりながら本を読んで朝は過ごす。そうして活動量を減らしてエネルギーの消費を抑えるところなのだけど、今日はあまりにも布団を干すのにうってつけの天気だったのでウキウキとベランダへ干してしまった。僕よりもずっと年寄りなこの仮住まいは3LDKの端と端にベランダと寝室があるものだから20、30メートルも荷物をもって3往復してしまった。僕は腹が減ってしまった。

普段朝に食事をとらないから冷ご飯も冷凍ご飯もない。しかたないので5キロ備蓄しているパスタを茹でることにする。生憎インスタントのソースもないし、それになんということだ。普段なら作り置いているトマトソースすらない。冷蔵庫には昨日解凍したあらびき豚ミンチと先週末処理したホールトマトだけ。

トマトソースは即席で作れる。ホールトマト適量、にんにく、たまねぎ適量。それだけ。めんどくさいからたまねぎは5mmくらいのみじん切り。にんにくは薄く切っただけ。本当はどっちも完全にみじん切りにしたほうがいい。

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20分ばかり煮込んで水分を飛ばしたほうがトマト味が濃くなっておいしいけどそこまで僕の腹は待ってらんない。

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即席トマトソースをよけて豚ミンチをニンニクと炒める。やっすい豚ミンチだから油が滴る。この油はおいしくないのでキッチンペーパーでふき取る。さっきつくったトマトソースとあわせる。隠し味に醤油を少々。日本人の口には醤油がよくあう。

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そうして即席アマトリチャーナの完成。

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全工程15分くらい。パスタを茹でるお湯を沸かすところからパスタが茹で上がるまでの時間と一緒。

スマートフォン片手に待ち構えていたけれども不審な女からの電話はなかった。

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