SENNHEISER Momentum 3 Wireless レビュー
先日、twitterでこんな発言をしたところ
ゼンハイザージャパン公式の方が見てくれたらしく、「製品レビューしませんか」というお声がかかりまして。
「ノイズキャンセリングワイヤレスヘッドホンに興味がある」
と伝えたところ、同社最高級ノイズキャンセリングワイヤレスヘッドホン Momentum 3 Wireless をご提供していただけることに。
メールで少々やり取りさせていただいて、製品到着。もちろん新品でございます。
デザインがとてもいいですね。変に外装をカバーで覆ったりせず、全く無駄のない、実質剛健といった佇まいが物欲に刺さります。洗練された機能美とマテリアル感が、純粋にかっこいい。
場合によっては初期充電が必要かもしれませんが、PCとBluetoothで簡単にペアリング、すぐに使えました。
iPhoneにつなぐという手もありますが、今回はPC(Windows10)で、かつ室内での使用を前提としたレビューになります。
スマートホンで利用するのであれば、軽量のイヤホンタイプが選択肢となると思いますので。(私も iPhone用には別のBluetoothイヤホンを使っています)
Bluetooth転送による音の劣化が無いか、という部分で多少気になっていたので少し調べてみましたが、本製品の対応規格は
Bluetooth5.0、NFC、SBC、AAC、apt-X、apt-X Low Latancy対応
となっており、(正直詳しいことはよくわからんのですが)現状のBTヘッドホンとしては最高音質を実現するための転送規格に対応している、ということです。
BTアダプタ(送信側)の規格が古かったりすると本来の性能が出ない可能性もあるのでは、と危惧していたので、ちょっとお勉強しました。
※ここからちょっとBluetoothの転送規格や圧縮コーデックの話になるので、めんどくさいことに関心のない人は適当に読み飛ばしてください。
----めんどくさい話ここから----
上記記事を読む限りでは、BTアダプタの対応規格が"Bluetooth ver2.1+EDR" 以上であれば、転送速度の上では十分な性能が出ます。よほど古い機器でなければアダプタの性能を気にする必要は無いでしょう。BTバージョンや転送速度よりも、圧縮コーデックの方が高音質化のネックになっているようですね。BTアダプタの商品説明に「AAC / aptX対応」と書かれているものもありますが、コーデックの対応、非対応は本来、Bluetoothアダプタの機能ではありません。(詳しくは上記記事参照)また、音声ファイルの保存形式と通信に使われる圧縮コーデックも関係ありません。技術仕様の沼なので、深く考えない方が身のためです。ちなみに私の使っているBTアダプタはこれ↓です。
コーデックについては、OSにインストールされているドライバに依存します。Windows10, Android なら標準で SBC , AAC , aptX , (aptX LL , aptX HD) に対応、macOSならSBC , AAC , aptX に対応(LLとHDは未対応?)、iOSは SBC と AAC、8以前の Windows は(標準では)SBC のみとなります。基本的には送受信機双方がサポートしている一番高音質なコーデックが自動で選択されますが、特にSBCだとかなり音質が落ちてしまうので、Windows8以前で高音質を得たい場合は、(すごく大雑把に言うと)「aptX のドライバを追加でインストールできるBTアダプタ」が必要となります。ほんとめんどくせえな。(下記のBTアダプタにはaptXドライバが付属しています)
若しくは、「BT通信機能を備えた aptX 対応の USB オーディオデバイス」を用いる手段もあります。これは Bluetooth アダプタでは無いのでペアリングの方法が異なるのですが、導入方法はスマートです。(PS4 などでも使えます)
----めんどくさい話ここまで----
閑話休題。レビューに戻ります。
一応、有線接続で通常のアナログヘッドホンとしても使用できるので、有線/無線を聞き比べてみました。ハイレゾの再生環境は無いですが、MP3 320kbpsやマスタリング用WAV音源(32bit/96kHz)など、手持ちのデジタル音源の中では最高音質の楽曲をいくつか。
結果として、ほんのわずかな差はあると思います。ただ、相当な高音質音源かつ、めちゃくちゃ集中して交互に聞き比べないとわからないレベルですので、オーディオマニアでなければ、ワイヤレスで使用することによる音の劣化が気になることは無いと思います。
あとは最近ハマっているDeath Stranding (Original Score)を聞いています。
本体にボタンの機能を示す要素がプリントされてないので最初に暗記しなければいけませんが、本体ボタンの機能は以下。
1番上のスイッチ:ノイズキャンセリング機能切り替え On / Off / Transparent Hearing
2番目:ボリューム+
3番目:再生 / 一時停止 / 長押しでバッテリーチェック
4番目:ボリューム-
5番目:Voice Assistant / 長押しでBTペアリング
(この写真は出荷時に貼られている機能説明シールが貼られています)
特筆するべき長所として、
(1)音が良い
個人的なヘッドホンの好みとして、リスニング用に尖った周波数特性を持った(重低音重視などの)製品ではなく、モニターヘッドホン寄りの、バランスタイプを好みます。
最近使っていたヘッドホンが、SENNHEISER HD 25 ALUMINIUMとSONY MDR-7506と、どちらもモニタ寄りの製品です。
これらと比べると、Momentum 3 Wireless はリスニングに最適化されていますが、非常にバランスの良い音です。
豊かで広がりのある低域、生き生きとしたクリアな中域、高解像度で鮮やかな高域…はちゃめちゃに音が良い…(語彙)
今まで所持していたヘッドホンの中では間違いなく最高音質の逸品です。
エージングは気にせず使ってますが、最初から良い音でした。既に100時間以上は使っています。
(2)ノイズキャンセリングによる静粛性
これまでノイズキャンセリングヘッドホンを使ったことがなかったこともあり、軽いカルチャーショックを覚えました。音楽を流さなくても、装着してノイズキャンセリング機能がONになるだけで、環境音が大幅にカットされます。無音とまでは行きませんが、換気扇の音や外を走る車の音、近くにいる人のタイピング音やクリック音が大幅にカットされるので、デスクワーク、特にイラスト制作における集中力を削ぐ外部要因が減ります。音楽を流してしまえば、ほぼ完全に周囲の人の気配が消えます。
(3)長時間の装着に向く
イヤーパッドの厚さが約25mmもあり、完全に耳を包み込む(耳介に接触しない)ので、長時間装着しても全く耳が痛くなりません。密閉性の高さも静粛性を高める要素になっています。
ヘッドバンドのクッションも柔らかく、頭頂部への負担も軽いです。
バッテリーの持ち時間は他製品と比較すれば少し短いとのことですが、フル充電で17時間の連続再生が可能です。
また、バッテリー切れを起こしても付属のUSB(Type-C)ケーブルを繋げば、充電しながら使用することができます。(この点、SONY WH-1000X M3は充電しながらの使用ができません)
また、折りたたむことでパワーオフになり、自動的に音楽の再生が一時停止になります。
あえて欠点を挙げるなら、
(1)価格がプレミアム
ノイズキャンセリング、ワイヤレスに拘らなければ、同価格帯で多くの選択肢があると思います。しかし、ワイヤレス、ノイズキャンセリング性能、高音質の融合を高いレベルで実現している製品として、随一の魅力を放っている製品です。
(2)ノイズキャンセリング性能は控えめ?
これはゼンハイザージャパンのご担当者に伺った話ですが、他社製品に比べてあえてノイズキャンセリング性能を抑え目に設計してあるとのことです。以下ゼンハイザージャパン様から頂いたコメントです。
「全ては音質のために」が我々の製品開発の原点であり、ノイキャンと高音質の両立に拘りぬきました。
ノイキャン独特の圧迫感やキーンとする不快感がないにもかかわらず、不必要なノイズのみを軽減する。
我々のノイキャンは「音楽を更に洗練させる」「更に音を楽しむ」ためのものです。ここの邪魔をしてしまう、超強力ノイキャンは我々は敢えて選ぶことはしませんでした。
確かに、SONY WH-1000X M3と比べてノイキャン性能は控えめと言えますが、室内利用において実用的に十分な性能を持っています。
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