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無線従事者資格と無線系の海技士の違いとはどこにあるのか?

こんにちは徒然です。『船舶の通信士になる為には一体何をどうしたらいいのか???①〜⑤』では長々とぐだぐだ海技士取得の手順を説明しましたが、海技士取得後の採用に向けてのことはすっかり忘れていました。この辺りはそのうち気が向いたら書きます。

今回は、無線従事者資格と海技士資格についてどのように違うのか?ということを説明していきます。

海技士資格には相応の無線従事者資格が必要ですよ、ということは前回までのnoteに書きました。では、無線従事者資格を持っている人と無線系の海技士である海技士(通信/電子通信)を持っている人では実際はどう違ってくるのか?ということは実はあまり知られていないかもしれません。現役の航海士の方、ここの違いきちんと説明できますか???

まずは無線機器の操作について。3海通持ちの航海士Aさんと3級海技士電子通信持ちの航海士Bさんがいます。無線従事者資格は同じ3海通ですね(ここでもうすでに意味わからない人はわたしのnote『船舶の通信士になる為には一体何をどうしたらいいのか???①〜⑤』を読み返しましょう)。3海通があるならば、目で見える範囲の距離環で使用するVHF無線電話だけでなく、もっと遠距離環用のMF/HF無線機や衛星を利用したインマルサットCも操作もできることになります。

実は操作ということに限っていえば、3海通と3級海技士電子通信の操作範囲は全く同じです、理由は同じ級の無線従事者資格だからです。船舶局にある無線設備については一部モールス通信や船舶局内の航空局などの無線機などの例外はあるものの、3/2/1海通と3/2/1級海技士電子通信は全て同じ操作範囲、つまり操作できる無線機器に違いはありません。(あくまで操作範囲ですよ???)

『なら3海通取ってしまえば、1級海技士電子通信と人と同じ通信操作ができるんだ?』と思われた方、まさにその通りです。無線従事者というのはそのような仕組みになっています。(航行区域が近海や遠洋の船舶局の設備には別途『船舶局無線従事者証明』が必要な場合があります)

『だったら海技士にする必要あるの?無線従事者資格だけ、しかも3海通だけ持っていたらいいんじゃないの?』となりそうですが、それはあくまで無線機器の『通信操作』だけの話。(ここから大事→)船舶の航行区域や無線設備によって法定職員として通信長職の配乗が必要になってきます。そのような船舶というのは、海技士免状を持っている人を雇い入れし、配乗しなければなりません(この詳しい決まりは『船舶職員及び小型船舶操縦者法施行令』という法律によって定められています)。無線従事者資格は海技士免状ですか?というと、これは操作資格であって、海技士免状ではないのです。これは航海や機関の他部書で考えると非常に当たり前の話なんですが、海技士免状を持った人でなければ法定の船舶職員としては扱えません、船舶によっては通信長という法定職員を乗船させなければなりませんが、無線系の海技士免状を持っていることはここで初めて意味を持ってきます。↓は船舶職員及び小型船舶操縦者法施行令の抜粋です。

(海技士がなることができる船舶職員)
第二十一条 乗組み基準において必要とされる資格に係る海技免状を受有している海技士でなければ、乗組み基準に定める船舶職員として、その船舶に乗り組んではならない。

通信長職は海技士免状持ちでなければ、通信長にはなれません(通信士も同じです、海技士免状が必要です)。船舶職員法には、この船のこの役職に就かせるにはこの級以上の海技士免状を持った人を乗せなさい、ということが各部署ごとに細かく規定されています。

先程の3海通の航海士Aさんと3級海技士電子通信の航海士Bさんの話に戻します、この場合通信長ができるのは航海士Bさんのみです。AさんはBさんと同じ無線機器の操作はできますが、通信長には絶対になれません、Aさんには無線関係の海技士免状がないからです。この場合はあくまで3級海技士電子通信で通信長ができる船舶において、航海士と通信長を兼任しているよというパターンですが、中にはこの船は3級海技士電子通信では通信長できませんよ~、うちの組織は通信長は専任ですよ~(どこの部署とも兼任していないこと、専任/兼任は組織内の職務の割り振り上の問題なので海技士の級は関係ありませんが)など、その他いろいろなやり方、決まりがあります(これも大事なことなのでそのうち詳しく書きます)。通信長の配乗が必要な船によっても通信長という役職の乗せ方はいろいろですが、無線機器の発達によって、通信長職を兼任するということがOKになったものの、官庁系の船舶はあまり兼任というシステムを取っていないところが多いので通信士になりたい方はそういった方面狙っていくことが採用される確率を上げる方法だと思います、なんせ少ないですからね通信士の求人。(全ての官庁系の船に通信長が乗っているという意味ではありませんよ、通信長が必要な船には通信長職の人間が専任で行っている場合が多いです、ということです)

船長や航海士は海技士航海、機関長や機関士は海技士機関の免状が必要です。通信長には海技士通信か電子通信が必要です。文字にして見れば非常に当たり前の話ではあります。ですが、通信長の配乗が必要ない大多数の船舶においては各級の海上無線通信士と海技士電子通信の違いはありません。主に近海区域や遠洋区域を航行する船舶では相応の無線機の搭載により通信長職の配乗が必要になってきますが、対象はそういった船舶のみです。

で具体的には『どんな船に通信長が必要なんでしょうか??』というのを最後に。非常に簡単にいうと『国際航海有りの船』がほとんどです。区分上の国際航海の有/無で国際航海有になると、色々と装備品や設備の規定が増えるわけですが、併せて人員の決まりも厳しくなります。その一部が通信長職の配乗というわけです。

この『国際航海』、定義的には他国の岸壁設備に着岸するいう意味で、他国領海に入ることという意味ではありません(一部漁船や着岸の目的によってはこの国際航海というものが適用されない例もある)。国際航海、航行区域、航行海域などなどが通信士にどう関わってくるか?についてはまたやる気ができたときにnoteに書きます。(←これめっちゃ複雑にできているので…)

というわけで、今回は通信長職は海技士免状持ちでないとできませんよ、という話でした。

TKS BIBI OUT


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