泉の女神の婚活道中〜人外魔境の大森林には木こりも勇者も来ないらしい〜

タイトル

泉の女神の婚活道中〜人外魔境の大森林には木樵どころか勇者も来ない!〜

キャッチコピー

泉の女神(魔境在住XXX歳独身)、運命の木こりがなかなか来ないので探しに行きます。

あらすじ

 人里離れた森の奥深く、聖なる泉にて。美しい女神は正直な木こりが斧を落とすのを待っていた。しかし数百年間待てど暮らせど、彼女の下には嘘つきな木こりすらやってこない。痺れを切らした女神は泉の管理をその辺の精霊に押し付け任せて自ら婿探しの旅に出ることに。全てを破壊する金の斧と、全てを切り刻む銀の斧。二つの神話級宝具を携えて、地獄とも称される暗黒大森林の奥地から、溢れる神気によって鍛えられたマッチョ女神が動き出す。
 毒舌な狼狩りの女傭兵レッドフードも仲間に加わり、世間知らずで脳筋な女神の婚活珍道中が始まる!

第1話のストーリー

 深い森の奥深く。聖なる泉に宿る女神がいた。名をヘルミオネと言う彼女は、古より伝わるとある伝承から、正直な木こりが斧を落としてくるのを心待ちにしていた。しかし、彼女が住むのは人外魔境の極地と称される暗黒大森林の奥地。そんなところに人がやって来るはずもなく。日頃の話し相手といえば適当なことを言う精霊や、ちょっかいをかけて来る命知らずの魔獣だけ。
 独身生活がXXX年を超え、ついに痺れを切らしたヘルミオネは動き出す。自ら泉から飛び出し、森の外へ正直な木こりを探しに行くのだ。
 泉の管理を精霊に押し付け、結納品の金の斧と銀の斧を携えて。彼女は暗黒大森林を突き進む。花嫁修行と称して片時も鍛錬を欠かさず続けてきた彼女は、暗黒大森林の強大な魔獣さえ軽やかに薙ぎ倒すほどの力と肉体を得ていた。
 人間たちの間では伝説と恐れられるような魔獣たちをそうとは知らずに屠りながら突き進むヘルミオネ。しかし、その道中で魔氷狼フェンリルと激闘を繰り広げる女性と出会う。窮地に陥っている彼女を助け、フェンリルを追い払ったヘルミオネだが、その少女――狼狩りの“レッドフード”は怒る。あのフェンリルは、彼女の一族の宿敵なのだと。
 戦士同士の宿命づけられた戦いに横槍を入れてしまった。そのことに気がついたヘルミオネは懺悔する。“レッドフード”の仇討ちを晴らすため、己の旅に誘う。婿探しと仇探し、ほとんど同じである。
 ここで、女神とレッドフードの二人が出会った。

第2話以降のストーリー

北風と太陽
 森を出たヘルミオネとレッドフード。そこは灼熱の日光が降り注ぐ荒野だった。町へ向かうにはこの荒野を越えねばならない。しかし荒野にも多くの魔獣が生息していた。地面の下から飛び出すデスワームを斧が輪切りにし、猛烈な勢いで飛び込んでくるバレットホッパーを猟銃が撃ち落とす。
 二人は出会ったばかりにも関わらず、強者同士故の連携で魔獣を撃破していく。
 だが、荒野は過酷を極め、二人も徐々に疲弊していく。特に泉の女神はその性質故に水場を欲していた。

 荒野の中にぽつんとある寂れた村へとやってきた二人。しかし井戸はほとんど枯れており、村民たちも貧しい暮らしを送っていた。
 二人を出迎えたのは美しい青年。数年前まではこのようなことはなかったと、彼は語る。荒野が広がり水が枯れたのは、炎鬼という魔人の力によるものだった。
 炎鬼を倒せばこの日照りも収まるだろう。だが、炎鬼の居城は堅牢。特に城門を突破することは不可能に等しい。彼は苦しげにそう語る。

 イケメンの青年に浮き足立つヘルミオネ。彼女は将来の婿(予定)の願いを叶えようとレッドフードと共に炎鬼討伐へ向かうことに。
 心配する青年は、二人に頑丈な防具を送る。これがあれば炎鬼の火炎にも耐えられるだろうと。イケメンからの贈り物にヘルミオネは喜ぶが、レッドフードは懐疑的。結局、レッドフードはいつもの装いで向かうことに。

 炎鬼の居城へ辿り着いたヘルミオネとレッドフード。レッドフードが門扉を開けようとするが、歯が立たない。だが、ヘルミオネは金の斧を握り、その真の力を発揮する。彼女が正直な木こりへの結納品として用意していた神話級の宝具“ゴールデンアックス”は、三回叩けばあらゆるものを断ち切ることができた。
 鉄扉を3度叩き、破壊するヘルミオネ。城から飛び出してくる魔獣たちも薙ぎ倒し、炎鬼の元へ。だが、そこで待ち構えていたのは炎鬼と嵐鬼。二人の魔人だった。
 炎鬼の炎が二人を包む。レッドフードは魔氷狼の牙を砕き冷気を広げることで耐えるが、ヘルミオネは全身を包む鉛の防具が溶け、身動きが取れなくなる。そこへ嵐鬼の疾風の斬撃が飛ぶ。その素早い連撃にヘルミオネは圧倒されたその時、レッドフードが猟銃を構え、引き金を引く。

「ねえ、あなた。とても足が速いのね」
「ねえ、あなた。とても手が長いのね」
「ねえ、あなた。とても――動きが鈍いのね」

 三つの問いと、三つの弾丸。レッドフードの必殺技、“知らないあなたへの質問スリークエスチョンズ”によって嵐鬼の動きが封じられる。その隙にヘルミオネは鍛え上げた肉体の力で鉛の拘束を吹き飛ばす。
 三回当たらなければいいと逃げる炎鬼だったが、彼女が振り上げたのは銀の斧。一度で三連撃を繰り出す神速の斧によって、鬼の首が落とされる。

 炎鬼と嵐鬼が倒れたことで、荒野にも平和が訪れた。穏やかな風が吹き、恵みの時雨が乾いた大地に降り注ぐ。新たな緑が次々と芽吹くなか、ヘルミオネもまた己の権能によって村の近くに新たな泉を湧きあがらせた。

 だが、ヘルミオネは村の歓待も丁重に断り、足早に去る。村を離れ、疑問を呈するレッドフードに、彼女は悲しげに語る。あの村は炎鬼に従属する野党たちの村だった。炎鬼を倒そうと向かった者にあえて嵐鬼の存在を教えず、耐火性のない装備を与え、不意打ちによって殺す。これによって、旅の傭兵たちの金品を奪い、己の安全を確保していた。
 嘘を看破することができるヘルミオネは、青年の嘘も看破していた。
 それならなぜ彼らの願いを聞いたのか? とレッドフードが問う。彼らはそうするしか、生きる道がなかった。ヘルミオネはそう答える。だが、鬼が倒れ、泉が湧いた今からならば、きっと再起できるはずだと、希望を見出しながら。

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