冬花火



冬に片足を突っ込んだ夜
月の出た空で花火があがる
季節外れの花火のくせに
平凡なやつで
三つ四つとあがると終った
なんだったのだろ
なんだったのだろ


あとには火薬の臭いが漂い
冷たい空気と火薬の
相性の悪さに
僕は顔をしかめる
いや
これは排気ガスだったか
なんだったのだろ
なんだったのだろ


星は一つしか見えないが
一つで十分なのだ
そうさ十分じゃあないか
欲しがりません勝つまでは
はて
なんだったのだろ
なんだったのだろ

僕はエアーで煙草を燻らせ
虚空へと息を吐く
ふと横を見ると
真新しいカレー屋の看板
なんだったのだろ
なんだったのだろ


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