見出し画像

20231118学習ノート『三つのインタナショナルの歴史』第22章-2 シュトゥットガルト決議と、アメリカの民族排外主義

20231118
『三つのインタナショナルの歴史』

[シュトゥットガルト決議]

・大会は、これまでのインタナショナル諸大会が採択した軍国主義と帝国主義に反対する諸決議を承認し、軍国主義に反対する闘争が一般に社会主義をめざす階級闘争とわかちあえないものであることを、ここにかさねて宣言する。

・資本主義諸国家のあいだの戦争は、世界市場をもとめて各国が競争し闘争することからおこる。なぜならば、各国は、たんにすでに所有する市場を確保しようとつとめるばかりでなく、あたらしい市場を征服しようとつとめるからであり、そのなかで、外国の住民と国家を隷属させることが主要な役割を演ずるようになるからである。さらにまた、戦争は、たえまのない軍備競争からおこる。軍備競争こそは、ブルジョアジーの階級支配と労働者階級の経済的・政治的隷従のおもな道具である軍国主義の特徴である。

・戦争を促進するものは、支配階級がその利益のために、文明諸国民のあいだに系統的にうえつけている民族的偏見である。支配階級がそうするのは、プロレタリア大衆を、自己の階級的諸問題および国際的・階級的連帯の義務からそらすためである。

・それゆえに、戦争は、資本主義の本質そのものの一部である。戦争は、資本主義経済秩序が廃止されるか、あるいは、軍事技術の進歩による人と金の多大の犠牲と、軍備がひきおこす怒りとが、諸国民を駆ってこの秩序の廃止におもむかせるかしたときに、はじめてなくなるであろう。

・この理由により、兵士の大部分をさしだし物質的犠牲の大部分をみずからはらう労働者階級は、戦争にたいする本質的な反対者である。なぜならば、戦争は、この階級の目的とするところ——万国国民の連帯を実現するために社会主義を基礎とする経済秩序を創造することと矛盾するからである。

・それゆえ大会は、ブルジョア社会の階級的性質と、民族間に対立をつづけさせようとする動機とを指摘することによって、全力をあげて海陸の軍備とたたかい、軍備のための諸手段を拒否することが、労働者階級の、とりわけ議会に出ているその代表の、義務であると考える。また、プロレタリア青年が、諸国民の同胞愛と社会主義の精神で教育され、階級的自覚が彼らにしみわたるように気をつけることも、その義務である。

・大会は、軍隊を民主的に組織すること、すなわち民兵をもって常備軍にかえることこそ、攻撃的な戦争を不可能にし、民族的対立の克服を促進するもっとも重要な保障であると考える。

・インタナショナルは、労働者階級の軍国主義反対の行動を、きびしく一つの型にはめこむことはできない。なぜならば、このような行動は、諸国民の条件、時、場所の違いによって、さまざまにかわることが避けられないからである。しかし、戦争を阻止するための労働者階級のいろいろな努力を、最大限に調整し強化することは、インタナショナルの義務である。

・事実、プロレタリアートは、ブリュッセルのインタナショナル大会以来、海陸の軍備をまかなう手段をすべて拒否することによって、また軍事組織の民主化につとめることによって、軍国主義反対のたたかいをうむことなくすすめてきたし、その一方、戦争の勃発をはばみ、あるいはこれにとどめをさすために、さらにまた、戦争がひきおこす社会不安を労働者階級の解放に役だたせるために、ますます力をこめて、さまざまな形の行動にうったえ、成功をおさめてきた。

・このことを実証するものとして、ファショダ事件ののち、イギリスとフランスの労働組合が平和の維持とイギリス=フランス両国の友好関係回復のためにむすんだ協定をあげることができるし、また、モロッコの危機にさいしてドイツとフランスの議会で社会民主党がとった行動、おなじ目的でフランスとドイツの社会主義者がおこなったデモンストレーション、オーストリアとイタリアの社会主義者が両国間の衝突を阻止するためにトリエステによりあってとった共同行動、さらに、スウェーデンの社会主義労働者がノルウェーにたいする攻撃をさまたげようとしておこなった力づよい干渉、そして最後に、ロシアとポーランドの社会主義労働者と農民が、ツァーリズムのひきおこした戦争に反対して、ついでそのすみやかな終結をめざして、またさらに国家的危機を労働者階級の解放に利用しようとしてくりひろげた、英雄的な、自己犠牲的な闘争を、あげることができる。

・これらの努力はすべて、断固たる干渉にうったえて平和の維持をいっそうたしかならしめようとするプロレタリアートが、ますますその力をつよめ勢いをましつつあることの証拠である。この労働者階級の行動は、もしおなじような行動で労働者階級の精神がととのえられ、インタナショナルが諸国の労働者政党をはげまし団結をかためさせるならば、さらにいっそう成果をあげることができるであろう。

・大会は、諸国政府の採用するあわれげな諸措置によってではなく、プロレタリアートが圧力をおよぼし、かつ駐在裁判所をまじめに活用することによってこそ、はじめて、軍備縮小から生じる利益を諸国民すべてに確保し、いまは軍備と戦争にのみこまれているかねと精力の莫大な支出を、文化的な目的につかうことができるようになるものであると、確信する。

・もし、戦争勃発の危険がせまったならば、その国の労働者階級とその議会代表の義務は、国際(社会党)事務局の統一的な活動にたすけられながら、もっとも有効と思われる諸手段によって、戦争の勃発をくいとめるよう全力をつくすことである。そのような手段は、もちろん、階級闘争と一般的政治情勢の度合いにおうじて、さまざまにかわるものである。

・それでも戦争が勃発したならば、彼らの義務は、戦争のすみやかな終結をめざして干渉するとともに、戦争がひきおこした経済的・政治的危機を利用して国民をたちあがらせ、それによって資本主義的階級支配の廃絶をはやめるよう全力をふるうことである。

[アメリカの民族排外主義]

アムステルダム大会とシュトゥットガルト大会では、アメリカ代議員団の発議により移民の問題が大きく取り上げられた。
多くの社会民主主義政党が民族排外主義に蝕まれていたが、特にアメリカの社会党ではその傾向が甚だしかった。労働組合では、アメリカへの移民をやめさせようとする扇動が根強かった。この理由は、熟練労働者たちが自分たちの特殊な職業をまもろうとする、独占的傾向からであった。その悪い例として、「中国人は出て行け!」という太平洋岸でのスローガンであり、このような声はヨーロッパからアメリカに入ってくる労働者にもかなり向けられた。
アメリカではゴンパース一派のアメリカ労働総同盟(AFL)が排外主義傾向が強く、小ブルジョア・インテリゲンツィアと労働組合官僚の支配下にある社会党は、これに屈服していた。彼らは1904年のアムステルダム大会で、「おくれた人種(中国人や黒人など)」の排斥を露骨ににおわせた決議案を提出していた。しかし、この決議案は賛成を得られそうもないとわかると撤回したのだった。

シュトゥットガルト大会では、今度はアメリカの代議員団が、同じような内容の決議案を出してきた。それは、「入国した先の労働者と同化できないような」移民を排斥することとするものであった。大会はこの提案を退け、移民問題について正しい決議を採択した。
決議は、請負労働者の輸入を非難する一方、人種や民族に基づいて移民の自由を制限しようという方法を否認するものだった。また、移民を組織し、彼らが経済的・政治的に平等の権利を受けられるよう配慮し、国全体の労働者の生活水準を守らなければならないとした。
当時のアメリカでは、外国生まれの労働者は基幹産業労働者の30から75%を占めていた。彼らは賃金や労働条件の改善、労働組合の組織、マルクス主義政党の確立などのために、常に労働者の側に立って戦っていた。

シュトゥットガルト大会が移民排斥の提案を退けたことに、アメリカ社会党の幹部の排外主義的日和見主義者たちはひどく腹を立てた。
キプニスは、「右翼と中央派ならびに左翼の一部は、シュトゥットガルト決議に憤慨した。ヴィクター・バーガーはすぐさま、アメリカから出た大会代議員、ヒルキット、アルジャーノン・リー、A・M・サイモンズらに非難をあびせ、この『インテリゲンツィア』の一団は、『ジャップ』や『チャンコロ』の苦力をアメリカにいれるような決議を通過させてアメリカのプロレタリアートをうらぎった」と罵った。
バーガーは、「アメリカとカナダで社会主義を実現しようとするのであれば、われわれはこの両国を『白人の』国としておかなければならない」と言った。
このことは、アメリカで黒人に対して差別待遇やリンチなどの暴行が行われるのを、党が黙ってみているのと変わらない、恥ずべきことであった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?