#逃走中出たい

逃走中に出たい。


ガキの頃からの夢。それは逃走中に出ること。

これさえ叶ったら死んでもいいとまでは言わないが、死ぬまでに一度は出てみたいものである。


初めて逃走中を見たのは小1か小2のとき。
当時は『ジャンプ!○○中』という番組の企画の1つだった。

それからは1回も欠かさず見てきた。

録画して何度も見てきたおかげで、数々の名場面を今でもはっきりと思い出せる。

鈴木拓さんが自首用電話ボックスを巧みに利用してハンターをかわした場面。
あるいは小塚崇彦さんが井戸の周りをぐるぐる回ってラスト40秒を乗り切った場面。
今思い返してもあれだけで白米3合はいけちゃいそうなほどの名場面だ。


そんな逃走中、最近は一般参加枠を設ける回が増えている。
次回もその枠があるらしい。

自分も、何度も応募してみようかと考えた。

しかし、そこで手が止まる。

自分のアピールポイントって、何だ…?



スピード…そこまであるわけではない。
平均よりは少し速いだろうけれども、それでも50mを7秒台。あまりにも凡庸すぎる。
走りで魅せられる人はいくらでもいる。


ではスタミナか…
学生時代は長距離の方が得意だった。特段速いとまでは言わないが好きではあったし、中学のときは駅伝大会でエースを務めた程度には自信がある。
ハーフマラソンや10㎞マラソンなんかにもよく出ていた。

問題は、それが「中学時代の話」だというところである。

中3の頃からレース後に酷い頭痛に襲われるようになり、次第にマラソン大会に出るのをやめるようになってしまった。

走らなくなってしまうとスタミナはどんどん落ちる。
中3のときに125回でやめる余裕があったシャトルランは、高3では75回になってしまった。1500mのタイムは…もはや言いたくない。

そして今では6つに割れていた腹筋もどこかへ消えてしまい、つまめる部分が増えてきてしまった。
こんな運動不足の状態でスタミナ勝負を仕掛けようと思っても、その前に肉離れを起こしてしまう。

張り切った一般人が負傷して周囲に迷惑をかけてしまうのが一番しらける。

それは運動会の親子競技を見ていれば自然と学ぶ。


体力がダメなら、愛か。

いや、それが一番本戦で活きない。

なにしろ僕は三四郎・小宮浩信という伝説の男を知っている。
彼は逃走中のDVDをすべて持っているという逃走中愛を語っておきながら、2回連続で一落ちを喫しているのだ。しかも瞬殺。

愛などハンターの前には無力。無情なものである。


何より動画を撮るのがハズイ。

何もアピールポイントがないのに、何を得意げな顔でアピールすればよいのだろう。


「えー…(ニヤニヤ)逃走中、出たいです!(ニヤニヤ)ぜ、絶対逃げ切ります✊」


誰がこいつを採用しますか。


そんなわけでアピールポイントがない自分は逃走中に出られそうもない…



いや、1つだけあった。それは「戦略」だ。

僕は小2の頃、飼い主の手からするりと離れて突進してきた犬を、住宅街の角を素早く三度曲がって撒いたことがある。

嘘みたいな話だが、これが本当なのである。本当なの。信じて。


「角を素早く三度曲がる」これは逃走中においても非常に有効な戦略だ。
Mr. 逃走中ことアンガールズ田中さんもこの重要性を説いている。

これならスピードがなくとも、早く接近に気付きさえすればハンターの視界から外れることができるに違いない。

ポジション取りやミッションの見極めなどは心得ている。
そこは伊達に逃走中ファンやっていない。

よし、この路線でいこう。


そうなると、小2の頃のあの爆走がフィルムに残っていないことがつくづく悔やまれる。
あの動画さえあれば、応募用の動画に困ることもなかったのに。


ということで、偶然あの瞬間を動画に収めてくれていた方、あるいはコネを持っている方、ぜひ僕にチャンスをください。


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