『韓国が嫌いで』と『みんな知ってる、みんな知らない』+少しだけ『殺人者の記憶法』
韓国小説3〜5冊め、「もっと読みたい!!」となって一気に借りた3冊のうち、主に2冊の感想を。
『韓国が嫌いで』、しょっぱなから「もうイヤなんで出てく」って出だしが、「男性作家の書く女主人公もめっちゃはっきりしてる…」との印象…。
そこまで、女性作家との違いは感じなかった。
面白かったところ↓ ――――――――――――――――――――――
なんで韓国を出ていくのかって、簡潔に言えば「韓国が嫌いで」だ。もうちょっとくわしく言えば「こんなところで生きていけないから」。
むやみに非難しないでほしい。生まれた国だって、嫌いになることもあるでしょ。それがどうしていけないわけ?
ライオンが近づくときにおかしな方向に飛び出して捕まる子が必ずいるじゃない。私ってそういうガゼルみたい。
でもね、ライオンが来るのに、黙って突っ立ってるはずないじゃん。死に物狂いで逃げ出してみなきゃわからないでしょ。
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こういう感じに進んでいくのが面白かったな。
家族や彼氏が、「今行かなくても…」とか言ってくるのに多少は引き止められるけど、すぐ「やっぱ今だ!!」ってなるし、「僕が好きなら、一緒にこの国にいてくれ」「そっちこそ、私が好きなら、一緒に来ればいい」ってのには笑った…。
このへんの話がすぐ終わっちゃうから、「展開早!!」と思うし、「読みやすッ!!」って思うポイントになってる。
主人公が"自然と計算高い"のも読みやすい。
つまり、感情だけで生きてなくて、「これをこうするには…あれが必要で…」みたいなことを、まあこの話は特に、「留学するには」「市民権を得るには」という目的があるしね。
なんか、「人間そうだよね」って。誰かへの情だけで生きてないし、いろんなことがあって、常に、生きるための計算はしてる。
それがわかりやすく書かれてるな〜って。
この本以外の主人公にもそう感じるんだけど。
終わりのあたりは、ちょっと拍子抜けだった。
女性作家の方が、より刺さるかな、とも思った。
でもなんか、この主人公、韓国小説を読み始めて感じた、"はっきりしてる女主人公"のイメージではあるな〜。
↓ ※『みんな知ってる、みんな知らない』のネタバレがあるかも※ ↓
『みんな知ってる〜』、これは、「いよいよシリアスな韓国小説…サスペンス映画で名高い国の…」と、少し緊張しながら読んだ。
感想は、「さすが映画大国!!」。ぐいぐい、先へ先へ、読ませるな〜!!
ここまでで、「女主人公たちがなんかハードボイルド」「文章が短くキマって、キレがいい」って印象はあった。だったらサスペンスなんてぴったりなわけで……。
まず、事件の真相や犯人以前に、第三者である、直接関わりのない人々の、無責任な残酷さがとても刺さった。
…これは…見覚えがある。
メディアで時々見てしまうものだ。私がその立場に立たないとも言えない。
無責任で残酷な、その立場に立ってしまってる時、きっと、自分が残酷だとは思えないだろう。「報道されてるものを見てるだけだけど? 見るのが悪いなら、報道しなければ?」と、きっと思う。
「こういう報道のしかたはおかしい。私は見ない」という態度を取ることもよくある。誰かを慮ってというよりも、自分の精神を維持するため。
私は、報道されたものを見て、激しく傷ついたことがあるから。「ただのTVじゃん?」ってだけじゃすまない、時に恐ろしい力を持つものだ、強制的に目に入ってしまうことがあるメジャーメディアは。
そのあたり、実際に群がられてしまった立場から、人々の好奇心の残酷さを、見事に描いていると思う。
胸クソ悪さを胸クソ悪いままに、手加減なく描けることにも、やっぱり、パワーを感じる。
社会の暗部に直に触れるようなシリアスな韓国小説は、これが初めてだったんだけど。
この、メディアなど第三者たちとの闘い、それから、"記憶をなくしている"恐怖との闘い、それがまず印象的だ。直接対決以前の。
犯人像については、今まで読んできたサスペンスと大差ないかな、と思った。そこにはあんまり興味がない。
精神的な闘いを続けてきた主人公が、ついに最後の闘いにたどり着いたあたりは、やっぱり息づまるものがあった。
…最終的に「パワフルさを感じる」のは、こういう部分だ。↓
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余すことなく記憶している。
子どものころに一度は失った四十九日間という時間を。そして、その時間を取り戻そうとひとり闘った時間を。一つ残らずそっくり記憶している。
あなたの望みが、誰一人私を覚えていないことだったなら、そしてこの世界で私が完全に孤立することだったなら、それは大ハズレだ。
誰も私を覚えていなくても、私は私を覚えているから。それで充分。私の記憶をつかさどるのは私、ゆえに私の人生をつかさどるのも私なのだ。
どんな記憶も私の今、私の未来の足を引っ張ることはできない。
私は負けない。あなたに、そして四十九日間の記憶に。私は負けない。
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もう一編の方も、失われた記憶を探る闘いをしている最中の孤独や不安、恐怖が描かれていて、同じ結論になっていた。
私なんかにはやっぱり足りない部分である、こういう力に触れたくて、韓国小説を読み始めたんだと思う。
こういうふうに、「負けない!!」ってなるのは、まあフィクションだしね、とは思うんだけど…。
今、そういうものを読みたいっていうのは、とてもある。
シリアス作品も、文章がビシバシと決まりながら進んで、読みごたえがあった!!
また読みたい。それなりにエネルギーがいるから、疲れきってはいない時に、心がまえをした上で。
まあ、ミステリーやサスペンスは毒物でもあるから、ちゃんとそういうつもりでね。
そして、トータル5冊め、『殺人者の記憶法』。
3冊めが男性作家の女性主人公だったけど、5冊めで初の、男性作家の男性主人公。
…結論を言うと…やっぱり女性作家を優先させようと思った。
充分に面白く、ハラハラさせ読ませる、引き込まれる展開だっだ。
「連続殺人犯が認知症になり…」って、「どこからそんなこと思いつくの?!」って発想力だよ。
でも、今とても読みたい!!ってテーマではないから、特に感想は、述べる必要があんまりない。
これは、内容の面白さがどうこうじゃなく…… 私の立場が、”男が女を殺す”フィクションに、相当飽きている、ってこと。
「設定がすごいな?!」と思ったところについては、充分、面白かったよ。で、やっぱり私は、”男→女Kill”に飽き飽きしている……
決して、面白くなかった、ってわけじゃないんだけれども……
事件ものフィクションが好きで、読んでると、まあ、そんなふうに感じることってある。
これについても、また別に書きたい。
…と、いうことで。
私の"韓国小説読み始め"は、ここでいったんひと区切り。
もう”韓国小説を読むつもりのある人”として、読書日記は、また次回へ続きます……
(まだ読めてなくて取ってあるけど、チョン・セランさんの新しいやつ買った~!!💗)
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