ゲーム闇芝居 サイバーパンク2077の巻

こなさんみんばんわ。
今日はCD PROJECT REDの「CyberPunk2077」(PC版)をプレイしたよ、というお話です。

残念ながらこのゲームを語る上で避けて通れないのがPS4版とXBOX ONE版は超絶劣化のクソゲーで返金騒動にまで発展したよという件なんですが、そこはまあそういうこともあるよねくらいです。ぼくPCなんで。
バグが多いのはオープンワールドゲームの宿命みたいなもんで、私は現在60時間以上プレイしましたが、パッチダウンロードが完全にできておらず2GBほどファイルが足りなかったときにCTDしまくった以外ではクエスト進行不能のバグもなく、ファイル不足時以外でのCTDも一度きりと割と快適にプレイできています。ぶっちゃけ、全てのバグを取り払って発売することなんてできないだろうし。
わりと、というのはレイトレーシングを完全に切っているのでこれがウルトラで60FPS出せて遊んでいられたら十分快適な環境と言えるだろうと思いますね。まあどうでもいいんだここらへんは。
実際遊んでみて、果たしてサイバーパンク2077とはどんなゲームだったのか、そのへんについて語りたいとおもう。

とてつもなく非凡で、このうえなく平凡なオープンワールド。

「サイバーパンク2077」は架空の2077年アメリカに存在する巨大都市、「ナイトシティ」を舞台に、主人公の傭兵“V”に降りかかる過酷な運命を描いた一人称視点(FPS)オープンワールドRPG、ということになる。
一都市を舞台としたオープンワールドというと最も有名なグランド・セフト・オートシリーズを想起する向きも多かろうが、ぶっちゃけそれで間違いはない。ただナイトシティはサンアンドレアスと違い、架空の近未来に存在する架空の暴力都市だ。きらびやかなネオンサインと猥雑なデジタルサイネージ広告が視界を埋め尽くし、空にはAVと呼ばれる飛行可能な戦闘重機とドローンが飛び交う。街道を闊歩する人々は四肢、あるいは全身を機械化し、誰しもがその手に銃を取らなければ生きていけない。
こんなことを思わず口走ってしまう程度には、いやこんな妄言を呟かずにはいられないほど本作の舞台であるナイトシティは優れた舞台なのだ。
複雑怪奇に張り巡らされた道路網は有機的に絡み合い、まるで生き物の血管を彷彿とさせ、乱立するビル群はVの暮らすボロアパートのように老朽化したものから、巨大企業アラサカの所有するホコリひとつ存在しない超高層ビルまでふたつと同じものは存在しない。街を外れた荒野にはアウトサイダーたちのテントやナイトシティ開発の影に隠れて廃墟となったかつての小さな町、地平の果まで並び立つソーラーパネル、打ち捨てられた廃工場など、栄華を見せつけるナイトシティと対比をなす寂静とした光景が広がる。
このゲームをプレイする前にやっていた「アサシンクリード:ヴァルハラ」はとてもすばらしい戦闘ゲームであったが、わずかに残るローマ時代の史跡以外どこを切り取っても丘、平原、森、川、山の連続で、思わず「草っぱらしかねえのかよイングランドはよ」と口に出してしまうほどには見たような光景の連続に辟易してしまっていた。
ナイトシティには、それがない。
ダウンタウン、山の手の高級住宅街、超高級オフィス街、さらには開発途中で破棄されたショッピングモールとそこに住み着いた不法移民(なのかどうかはわかんないけど)が暮らす地区と、ブロックごとに分けられたエリアはそれぞれで違う顔を見せ、飽きさせることがない。
それぞれの地域に根を張るストリートギャングや理由はよくわからんがそのあたりを制圧している企業の軍隊など、敵対するNPCはちょっと目が合っただけで襲いかかってくるしただ歩いているだけでも気が抜けない。
だが、これほど魅力的で恐ろしいほどに作り込まれた舞台で行われるゲームプレイは、しかしながらそれに反するありきたりで平凡なものと言わざるを得ない。
本作はストーリーを語るメインクエスト以外に、メインストーリーの進行に関与しないサイドクエスト、フィクサー(仕事をくれるおっさんとおばはんとババア)からもたらされる仕事、NCPD(ナイトシティの民間警察だがお金がなくて無能で組織自体腐敗してるので仕事がクソ)に代わって暴力沙汰に介入したりするミッションなどで構成されているが、山のように存在するこれらは多くが「〇〇に行って〇〇を取ってこい」か「〇〇を救助しろ」の2パターンしかなく、例によってそれらのエリアはギャングに制圧されているのでギャングを皆殺しにするかスニーキングで目的のものを取ってくるかしろ、でしかないし、NCPDミッションはエンカウントした雑魚を皆殺しにする、以外の何者でもない。
現状のオープンワールドでは無二といえるナイトシティという舞台で、やることは使い古されたカッコつきの「オープンワールド」のクエストだ。この点は残念としか言いようがない。
後述するメインクエスト以外におけるゲームプレイは少々単調で代わり映えがない、というのが現時点におけるぼくのサイバーパンク2077の印象だ。
ではメインストーリーはどうか。

極限までのナラティブ。自分だけの“V”

しかしながら、こと「メインクエスト」(一部のサイドも含む)に限って言えばこれほど個性的なオープンワールド、いやRPGは存在しなかったと言っていいだろう。
物語それ自体は多少強引な点や展開の急さも感じるが、特異なのはその「語り方」である。
まず「ナラティブ」という言葉について、本文においてのみだが定義しておきたい。つまりは「ゲームを通じたぼく自身の個人的な体験」である。
ナラティブという言葉自体の意味については各自で目の前の便利な箱や便利な板で検索していただくとして、ざっくりといえば「あなたの物語」だ。
「伝説の勇者が復活した魔王を倒す物語」ではなく、「勇者であるあなたが魔王を倒す冒険を通じて見聞きした物語」を本文中におけるナラティブとさせていただきたい。
ゲームにおけるストーリーテリングとは大抵の場合においてナラティブ的になるものだし(例えば手強いボスと戦い、味方は次々と倒れ、最後に残った勇者はMPもゼロ、薬は尽きHPも残り僅かだが、最後の攻撃がクリティカルヒットし見事ボスを倒した・・・というのは間違いなくそのプレイヤーだけの物語だ)近年のゲームはナラティブ的な指向を持つものが多い傾向にある。(ような気がする)
サイバーパンク2077におけるメインストーリーは徹頭徹尾、物語がプレイヤーのナラティブになるよう作られている。
主人公の“V”の会話にはほとんど常にと言っていいほど選択肢が介在する。
受け入れるのか、拒絶するのか、皮肉で返すのか、重々しく受け止めるのか、出された酒を飲むのか飲まないのか、煙草を吸うのか吸わないのか。
些細なものからNPC一人を殺害するのかまで、“V”は常に選択を強いられる。結果、出力されるのは唯一人、「あなた」という“V”の物語だ。
RPG面でも“V”は5つの能力値を持っているが、限界である20まで上げることのできるステータスは3つがせいぜいだ。なんでもできる万能の“V”は存在せず、腕っぷしに優れ、神経反射速度の高い“V” あるいはネットランナー(ハッカー)で潜入の達人である“V”など、個々のプレイヤーに依った様々な長所と短所を持つ“V”が出来上がる。
伝説のロッカーボーイにしてテロリスト、ジョニー・シルヴァーハンド、その相棒でありナイトシティの女帝として君臨するローグ、“V”の相棒で鮮烈な印象を残すジャッキー、事件を通じて知り合い、友人、あるいは恋愛関係を持つジュディやパナムなど、多くの魅力的なNPCたちは、言ってみれば“V”の物語を補完するために存在している。彼らと深く付き合うのか、仕事上の中と割り切るのか、喪失を悼むのか、切って捨てていくのか。全てはプレイヤー、つまり“V”の選択だ。
これほどまでに選択肢にまみれたゲームが今まで存在しただろうか。
プレイヤー=主人公の反応を選択肢として用意するゲームは別にめずらしくもなんともない。グラブルだのFGOだので主人公は仲間からの呼びかけにどっちでも大差ないような答えを返し、返された方も聞いといておきながらどうでもいいような薄っすいリアクションをする。そんなもんはわざわざ選ばせる価値もない、クリック数を増やすだけの無意味な存在だ。
“V”の選択には意味がある。言葉ひとつでNPCは敵対するかもしれないし、自殺してしまうやつだっている。そして膨大な選択を繰り返した果てに、“V”の物語は「あなた」の物語になる。
クアンティック・ドリームの「ヘビーレイン」や「デトロイト ビカムヒューマン」を想起する方もいるかも知れない。サイバーパンク2077がこれらの影響下にあるのは明白だが、オープンワールドRPGでありながらこういったストーリーテリングを行うゲームは恐らく本作が初めてだろう。
サイバーパンク2077が特異なゲームである点は以上にある。
そして、残念ながらそれ以外の際立った独自性には欠ける、と言う他ない。

わりとよくあるシステム群

本作における成長要素はレベルアップにより肉体、反応、技術、知力、意志の5つのパラメータを成長させることと、その支配下にあるハンドガンだのハッキングだのクラフトだのといったスキルを成長させることだ。ハンドガンスキルを成長させるにはハンドガンを使って戦闘し、敵をキルしていく。クラフトなら物を作ればよい。ただスキルの成長には後半に行くほど膨大な経験値が必要となり、サクサクとは成長せず非常に面倒くさい。
入手する武器にはコモンからレジェンダリーまでのレアリティが存在し、入手時のプレイヤーLvに応じて性能も変化するため、最強を求めるならば最大の50レベルでレジェンダリー厳選をする必要があるが、多くの人のクリアレベルは20~30代程度で最大レベルを目指すにはその後のやりこみが不可欠になる。
本作におけるユニーク武器であるアイコニックはクラフトでレアリティをアップグレードさせることができるのだが、それにはパラメータの技術を伸ばし、レジェンダリー、最低でもエピックがクラフトできるまで成長させなければいけないので、ビルドの自由度が狭い。
じゃあそこまでして作ったレジェンダリーはさぞ強いのだろう・・・と思うが本作に登場するユニーク武器はせいぜい属性による追加ダメージがある、とかクリティカル率が高い、とかで、「ボーダーランズ」に見られるようなとにかく滅茶苦茶に強いレジェンダリー武器とかは、ない。
防具も同じくで、シリーズで統一したらセット効果がつくような防具はないし、どれもいちいち見た目が反映されるからキャップにゴーグルをかけてタンクトップの上にトレンチコートを羽織りホットパンツ、パンプスを履く、ような変態的な格好のVがしばしば爆誕する。
ぼくは三人称視点のバイクで移動するのが好きなので、どうしてもVが変な格好をしているのが気に入らず、現在はサイドクエストで手に入るジョニー・シルヴァーハンドの衣装で通している。まあサイバーパンクというものが概ねそうであるように、本作の衣装は全体的にちょっとレトロというか、80年代パンクかバブル時代的だ。その中でなんとか許せるのがジョニーの衣装なんだけど、こればっかりになってしまうのが残念。というよりこのゲームでオシャレを気取るほうが間違いなのかもしれない。しかしながら「エッジなスタイルで自己主張すること」はサイバーパンクのまさに「パンク」(反逆、反骨)を体現する意味でもあるので、ここんとこはもうちょっとなんとかならなかったんすかねと言いたい。フォトモードではVを撮影できるんだし、あと髪型くらいは変えさせてくれてもよかっただろう。
サイバーパンクのサイバーな面であるハッキングについても、既にある「ウォッチドッグス」の換骨奪胎に過ぎない点も多い。まあ敵を銃撃しながらハックし、サイバーウェア動作不良や回路ショートなどで倒していくのは人体と機械が融合したサイバーパンクならではといえるだろう。
更に発売前に言われていたほとんどすべての建物にアクセスできる、は大嘘だった。入れない建物がほとんどだし、「GTA」や「龍が如く」にあるようなアクティビティなどは微塵もない。外巻きに建物を眺めてスゲ~な~~と口をポカーと開ける、以外の街遊びはない。これは寂しい。
特に残念だったのが、いくつか存在する街の屋台だ。
メインクエストの途中でひょんなことから手を組むことになったアラサカのエージェント、タケムラ(本作の良い点として出てくる日本人の名前に違和感が少ないことがある)と屋台で謎の焼き鳥を食うシーンが印象に残り、それまで一切屋台で食事をとっていなかったぼくは「ということはこれらの屋台にはきっと他にもオーガニックスシとかブレードランナーの二つで充分ですよとか変なものがあるんだろうな楽しみだなあ」と、その後のサイドクエストでNPCと待ち合わせに使ったラーメン屋で意気揚々とラーメンを注文をしようと店主に話しかけるも、そこにあったのは自動販売機で売ってたりそこらへんに落ちてたり敵の死体からドロップするブリトーだのジャーキーだので、ラーメンはそこらの敵から拾ったインスタント麺があるだけ!!
これにはひどくがっかりした。屋台の意味がまるでないじゃないか!
まあこの世界はすべてがメガコーポに支配され、大衆は大量消費のための単位でしかないからレストランだろうが屋台だろうがご家庭だろうが工業化された製品しか口にできないというメッセジなのかもしれない。いや刑事の家でお手製のパエリア食ったぞ。
とにかく、本筋から離れた遊びがひどく少ないのだ。これは本作のはっきりとした欠点と言っていいだろう。

まとめっぽいもの


サイバーパンク2077が主題としているのはあくまでメインクエスト(といくつかのサイド)を通じたプレイヤーのナラティブだ。
しかしながらオープンワールドでの楽しさは探索であり、RPGの楽しみは装備品を含めたキャラクターの成長だ。
ナイトシティは蠱惑的ながら探索するには狭く、ハック&スラッシュを謳うには本作の装備品は幅が狭い。
プレイしながら思ったのはこれはオープンワールドというよりシティアドベンチャーじゃないか、というところだった。
“V”の役割はむしろ探偵に近く、傭兵という立場が必然的にクエストを戦闘寄りにしてしまう。であればサイバー探偵と伝説のロッカーを名乗るサイバーゴーストのコンビによるシティアドベンチャーであったほうがより幅のあるミッションを用意できたんじゃないかなーと夢想した。原作の2020に探偵はいないけどね・・・。
しかしながら60時間プレイしつつも次は男性のVでハッキングとステルスをメインにして遊ぼうかなーと考えているくらいにはまだまだプレイしたいゲームであることに間違いはない。
本作にはかなりケチが付いた感もあるが、開発陣はめげずにオンラインモードの開発に勤しんでいただきたいものだ(無責任)
最後に、スムーズに動くスペックのPCを所有しているならなんだかんだ言いつつも十分にオススメできるゲームであると言い切れる。
決して万能の超大作ではないが、2020年中、圧倒的な存在感を放つ野心作であることに違いはない。
メディアやツイッターのノイズに惑わされず、自身でプレイした上での判定を下していただきたい。
やった上でつまんなかったんなら・・・ああ・・・うん・・・ごめんね・・・。

では次回のゲーム闇芝居でお会いしましょう。

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