20190112東大

1/12東大『精神障害を哲学する』合評会

東大の『精神障害を哲学する』(石原孝二著、東京大学出版会)の合評会が駒場キャンパスであり、行ってきました。

本自体はかなりごつい本です。あまりに濃厚過ぎて私は胃もたれを起こしたので、休み休みゆっくり読もうと思っています。

UTCPの梶谷さんが書評を書いたそうで、下記のリンクで読めます。

さて、合評会の評者は鈴木晃仁さん(慶大)、北中淳子さん(慶大)、高木俊介さんの三人です。鈴木さんと北中さんは学者で、高木さんは臨床医。
聴衆ですが、いろんな領域の研究者が来ていました。普段は哲学だったら哲学者だけ、医学史だったら医学史学者だけで集まっていたようなんですが、今回は分野横断的に集まったみたいです。
話題は多岐に渡ったんですが、このブログはイベントレポではなく、私の活動報告が目的なので、私がどんな発言をしたかということをもっぱら書きます。

鈴木晃仁さんが「病院で文学をどう扱っているか? 患者待合室というのは、本棚ではない。古い雑誌がただ置いてあるという感じ」と話したので、私は挙手をして、患者の読書事情についてリアルな話をしました。
「私は石原先生から『精神障害を哲学する』をご献本頂きました。ありがとうございました。私は以前東大生協で『精神医学と当事者』を買って、領収書を添付の上、石原さんにサインをして頂いたことがあります。

患者というのは経済的に困窮しているので、本が買えないんです。今回3,200円が浮いてよかったです。ただで頂いておきながらケチをつけるようで申し訳ないのですが、ソフトカバーではなく、ハードカバーだと嬉しいです。患者が読書をするというのはどういうことかというと、咳やくしゃみ、嘔吐をします。私は糖質制限をしていて、お昼、鶏肉を焼いてきました。油がはねるわけです。ソフトカバーだと汚れちゃうんです。ハードカバーにしてくれると汚れなくて嬉しいです。あとダルクの人たちが『大学図書館にいるのが幸せだ』と行っていますが、私も大学図書館を利用したいです。私は東京都小平市というところに住んでいて、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)のおひざ元です。友達がNCNPに入院していて、先月お見舞いにいったのですが、やっぱり本棚は雑誌がメインでした。NCNPの奥に職員用の図書館があるので、そういうところを使わせてくれると嬉しいです」
私がこのような発言をしたのは、研究者が仕事として読書するときと、患者が本(特に医学書)を読むときのギャップに気づいてほしかったからです。生活の中で学問をするということがどういうことなのか。

すると、東京大学出版会の編集者が「本書はソフトカバーではなくハードカバーです。おっしゃっているのはPP加工のことだと思います。でもPP加工にすると本の値段が上がっちゃうんですよ」と言いました。
あ、それは困る。個別にピッチンで対応するべきかもしれない。

別の参加者(当事者)が「ぼくも以前村上春樹のちょっとエッチな本を読もうとしたら、『体調に悪影響を及ぼすから』という理由で読ませてもらえなかった」と発言しました。
その後、鈴木さんが挙手をして、何か学者的なこと(覚えてない)を言いました。
土曜日にわざわざ東大まで足を運ぶような方は、読書についてはみんなうるさいです。

私は「私がNCNPで何の本を借りたいかを話します」と発言しました。会場で発言した通りに書くとまた騒ぎになってしまうので、やや自主規制して書きます。
「私はおととし深刻な症状を経験しました。精神医学系の学会に症例報告をして、公知に還元するべきと思っています。学会誌を蔵書する図書館を探したのですが、その学会の機関誌は国会図書館しか持っていなかったんです。買うことも考えたのですが3,000円もする。できればNCNPで借りたいんです」
私がしているのは娯楽や教養の読書ではないんです。学問の読書です。患者舐めんじゃねーぞ。それと、なぜ私がそんな読書をする羽目になっているのか、大学人にはよくよく考えてほしい。

あとパターナリズムの話をしました。
「日本はアメリカやイギリスを参考にするわけですが、アメリカ人もイギリス人も個人として自立している。一方、日本はお上意識が強い。例えば学校だったら、先生や司会に100点を求めてしまう。しかし司会が失敗したっていいんですよ。とにかく学問の世界のもめごとを安易に警察や裁判所に持って行かない。学問の世界のもめごとは教室の中に治めるべきです」
こういう話を大学でしていくことで、教員や学生が何か気づいてくれると嬉しいなと思っています。

イベント後、誰か大学人が私に名刺交換を求めてくるかなと期待したのですが、誰も名刺交換を求めてきませんでした。私は山田理絵さん(社会学)に「また来ますね!」と元気に挨拶をして帰りました。

生活保護寸前ですが、学問上の筋を通すために学会行脚を続けています。寄付を熱烈歓迎します。