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BEYONDと男闘呼組

1993年6月30日。

当時高校3年生。
夕方のニュース番組で男性キャスターが読み上げたニュース。

「今月24日、フジテレビのウッチャンナンチャンのやるならやらねばの番組収録中に舞台セットから転落し、意識不明となり治療を続けていた香港のロックグループ、Beyondの黄家駒さんは、容態が悪化し、今日午後4時15分、脳挫傷などにより、入院中の東京女子医大病院で亡くなりました」

時間がなくて焦ってたのか、ものすごい早口で淡々と原稿を読んでるのを聞いて、「は?え?うそうそ!?なに!?どうゆうこと!?!?」と、頭が真っ白になったのを覚えてる。

私の部屋の扉にはBeyondのポスターが貼ってあった。
家駒が好きだったから。
ただこの時は熱狂的なファンではなく、Beyondいいよね~駒ちゃんかわいいよね~程度。
だから本当のファンの人からすると、私が受けたショックなんて比べ物にならないぐらい衝撃的なニュースだっただろうけど、でもそんな私でさえ、あの出来事はほんとにショックで悲しくて悔しくてムカついてた。

家強が記者会見で「出来れば僕が変わってあげたい」と泣きながら机につっぷしてたのが忘れられない。
お別れの会で日本語で「ボクハ、ダイジョウブ」って少し微笑んで答えてたのが忘れらない。
そんなはず、絶対無いから。

1993年6月30日は、BeyondとBeyondのファンにとって忘れられない日。

・・・だけだと思ってた、つい最近まで。
でももうひとつ、全く同じ日に同じように心に大きな傷を負った人たちがいた。

男闘呼組。

香港のBEYONDと日本の男闘呼組。
共に4人組のロックバンド。
同じような時期に活動して人気が出て。
ルックスが良すぎたばっかりにアイドル的扱いをされ、それに違和感を感じて苦しんで。
新境地を求めて日本に行ったら、家駒はあんなことになって。
男闘呼組も低迷期を抜けて、さぁここからもう一度!って時に潰されて。

なに?この妙な共通点。

男闘呼組、1993年6月30日、活動休止。
それも突然の。
メンバーも知らなかったとか。
ライブの日程も決まってチケットも売れてたのに!?
いったいこの日はどれだけの人が傷ついたんだろう。

私がこの事実を知ったのは二ヵ月ほど前。
YouTubeのおすすめ動画にふと出てきた、男闘呼組のTIME ZONE。
懐かしいなぁと思って関連動画も続けて見てた時、ある動画の概要欄に書いてあったこの一文に目が止まり、びっくりした。

「1993年6月30日、活動休止」

男闘呼組は、一瞬だけど、すごくはまってた時期があった。
でもほんとに一瞬で、歌も「DAY BREAK」と「TIME  ZONE」と「秋」しか知らなかったし、「オトコだろっ!」ってドラマが好きで録画したのを何度も見てたけど、ほんとにそれだけ。
それ以外の彼らのことは何も知らなかった。
いや、知らなかったというか、違った認識を持ってた。まさに彼らが一番思われたくなかったであろう認識を。

所詮ジャニーズだし、アイドルでしょ、ロックやってるって言っても、どうせ飾りでしょ、ポーズでしょ、歌はうまいと思ったけど、結局キャーキャー言われたくてアイドルやってるだけでしょっ、て。(好きだったはずなのに、ひどいな)

まぁ私が知ってるのは、ほんとにレコードデビューした頃だけだし、あの頃はギターもまともに弾いてなかったようだし、そう思ってもしょうがなかったんじゃないかと。

でも、この1993年6月30日という、Beyondと同じ人生を大きく変える共通点がある、という事実を知り、男闘呼組のことがすごく気になり始めて、この二ヵ月間ずっと、昔の動画やいろんな情報を見漁ってた。

そして私の中で男闘呼組の、というか成田昭次のイメージが180度変わった。
なんならもう、別人に見えるくらい。
違う人を見てるかのように、ギター弾いてる姿がめちゃくちゃかっこ良く見えるようになった。
つまりは、男闘呼組も正真正銘のロックバンド、Beyondと一緒だったんだ、と。

ライブの映像なんか観てたら、そこにはジャニーズの男闘呼組じゃなく、ロックバンドの男闘呼組がいてほんとにかっこ良くて。
なんか彼らの音を聞いてると、すごくBeyondと重なるものがあって、思わず恋しくなって家駒がいた頃の1991年のライブ映像を見ちゃって、案の定、途中から色んな感情が溢れて泣きながら見てしまう、という・・・まぁそれはいつものことだけど。

成田昭次。
私は当時、男闘呼組にはまってたというより、成田昭次が好きだった。
ちょっと悪そうなあの雰囲気。でも笑うと無邪気でかわいい顔してて、何より声が魅力的で。しゃべってる声も、歌ってる声も。
甘めのハスキーボイス。好きだったなぁ、ほんとに。
ただ当時の私の「好き」は、アイドルとしてのあくまでもミーハーな気持ちだった。

でも違うかったんだね。
ほんとの成田昭次は、私が当時抱いてたイメージとは真逆で、しっかりした考えを持ってて、ほんとに一途に音楽が好きでギターが好きで、真剣にロックと向き合ってた人だった。

YouTubeで当時のインタビューやトーク番組で話してる姿、ずっとファンだった人が昔の貴重な情報を書いてたりするのを見て、この人ってほんとはすごく繊細でシャイで、愛情深くて思慮深くて、根は真面目で優しくて、ファン思いな人だったんだなーと、今更ながらに知って驚いてる。

ソロになってずっと音楽活動やってたなんて知らなかったし、あんなに全国飛び回ってライブやって、ファンを大切にまめに交流してたことにびっくりした。

なんだよ成田昭次、見た目も中身もめちゃくちゃ男前じゃないか。

2009年の時は、すでに興味もなかったから、あのニュースを見ても「バカだねー」ぐらいにしか思ってなかったけど。

でも突然の活動休止から、ジャニーズを退所して、色々あって、きっとたくさん辛くて悔しい思いをしてきたんだろうな、てのは今になると容易に想像できるから、なんかもう、仕方なかったんじゃないか・・・とすら思えるようになったよ。
本人もずっと、大切なファンを裏切る行為をしてることに、罪悪感を感じてただろうしね。

なんだか私の知らないこの約三十年の間、当時の歌詞を見ても思うけど、結局この人はずっと何かに苦しんでた人生を送ってたんじゃないか、と思うといたたまれない気持ちになる。

まぁでも多分、もう大丈夫だ。
今までの苦労はこれからきっと報われる。

今改めてじっくり聴いても、やっぱりこの人の声は唯一無二だと思うし、普通にしゃべってる声も、ラブソングを歌う時の物悲しくも優しい歌声も、巻き舌気味で力強く歌うハードな歌声も、とにかくもう全部好き。あの時以上に。
阿Paul以来、久々に声を聴いてドキドキする人を見つけた。

去年からまた音楽活動を再開したということも知って、「哀愁のメランコリー」を聴いて、あ~この声!この声!って、また新たな歌声が聴けて嬉しかったなぁ。ていうか年齢を重ねて渋さが加わって、さらに魅力的な声になってた。
ずっと信じて待ってたファンは、ほんとに生きててよかったと思える瞬間だっただろうな。

成田昭次、これから楽しみだな。
色々と動き出してるみたいで、この先も嬉しいお知らせがいっぱい届くんだろう。多分男闘呼組としても、なにかしらやってくれそうだし。
香港に行けない、日々の楽しみがない、ってやさぐれてたけど、これで少しは生きていく楽しみができた。

こないだやってた岡本健一のライブ。最後に健一とハグして、肩をポンポンとしてる手があったかくて、去り際に客席に向けた笑顔が穏やかで優しくて、なんかホッとしたというか、幸せな気持ちになったなぁ。

これからは大好きなギターを弾いて、歌を歌って、体を大切に、ただただ心穏やかに毎日楽しく笑顔で過ごしてほしい。
そばで支えてくれる友情は、もう二度と離れることはないだろうから。

いいよね、四人いる、四人同じ気持ちでまた繋がりあえるって、大切だしありがたいことだよ。
男闘呼組が、ずっと男闘呼組を応援し続けたファンが、ほんとにうらやましい。

それはもう、Beyondには不可能なことだと思うから。

2006年11月25日。キャットストリートで見つけたBeyondの写真。

あの三人が揃っているのを見ることは、きっともう無理だろう。
それは今や、考え方の違い、音楽に対する方向性の違い、とかだけじゃなく、なんとなく、あっち側とこっち側に分かれてしまってるように見えるから。その見えない壁はすごく高くて、きっと超えられないんだろうな、と思うから。

香港のBEYONDと日本の男闘呼組。
遠く離れた場所で、あの頃は同じような思いでロックをやってたのに、残ったのは男闘呼組の絆だけ。
大きな共通点を見つけて、この二組のバンドを好きでいることを嬉しく思ったけど、この先もう、この二組に共通する何かが生まれることはなく、全く別の道を歩んで行くんだろう。

昭次が何かのインタビューで、バンドに対する思いを「あいつのここが嫌だとか思うこともある、そりゃ人間だから。でもそれは辞める理由にはならない」って答えてるの見て、二十歳そこそこの若者がしっかりしてるなぁと思ったと同時に、あの二人はこんな風に思えなかったのかな、と悲しくもなり、なんだかんだで、ただのアイドルだと思ってた彼らの方がずっと大人で、男闘呼組の四人は出会うべくして出会った運命的な四人だったんだなぁって、Beyondはそうじゃなかったのかなぁって・・・なんだかすごく複雑な気持ちになったよ。

好きでいるのも辛いね。

私のiPod touchに刻印されてる文字


最後に私の願いをひとつ。

「遥かなる夢に~Far away~」を男闘呼組でカバーして、成田昭次に歌って欲しい。

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