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藤井聡太二冠に学ぶ次の一手(4) 番外編 - 百折不撓 -

先日(2021年4月22日)指されたばかりの「森内俊之 九段 vs. 木村一基 九段 第6期叡王戦段位別予選九段戦」から。

両九段とも若手や最新の将棋をかなり研究されていると思われるのでこのコーナーで取り上げても差し支えないだろうということで、というより、この将棋を見よ!という素晴らしい内容だったので、時間のある人はまず下の第1図を眺めてください。

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第1図 43手目 ▲1六歩まで

将棋を見慣れた人にとってはほとんどなんの変哲もない局面かもしれない。確かにそうであるが、木村一基九段はここで長考する。

後手木村九段は8五歩を手抜いたことで先手より先に7三に桂馬を跳ねることに成功しているのに対して、先手はまだ3七の地点に桂馬を置けていない。

ここで後手が△8五歩や△8一飛などを指してしまうと、その間に先手は▲3七桂と打ててしまう。そうなると後手はせっかく8五歩を手抜いてやや先行した局面が消失し、ひいてはおそらく先手有利の展開に持っていかれてしまう。

この時、木村九段が下した結論は、△4五歩。

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第2図 44手目 △4五歩まで

8五歩を手抜いているので8筋での桂馬の活用を考えて△7五歩あたりを指すのではと思っていたが、実際はここで△4五歩。自玉に近いところなのでやや怖い感じもするが、先手が同銀と応じた為、この瞬間、桂馬のサポートがない銀は完全に浮き駒になっているだけでなく、戻りが利かない。

後手はすかさず9筋を突いて歩を入手し、その歩を△4四と打ち込む。

自玉付近で戦いを開始したので案の定この後激しい展開になるが、それを百も承知で△4五歩と強く出た木村九段の勇気を見た思いがした。

この対局の棋譜はこちら


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