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この指とまれ

勝負の世界で生きてきた。
負けたらどんどん存在価値が薄れていっている気がして、自分なんて必要ないって思うようになった。

そんな世界で。

嫌ならさっさとこの世界から逃げればいいのにって思うけど、その頃の私は 普通 に囚われてたから、みんなと違うルートに行くのが怖かったから逃げられなかった。

時間が経つのを待つのみ。
でも心はどんどんボロボロになっていった。

時間が経って勝負の世界から抜け出すことが出来た。
寂しいなんて思わずに、とにかく解放されて嬉しかった。

そこから、いろんな 初めて を体験した。
面白いなって思うこともたくさんあった。
新しいことをたくさん知った。

そんな出会いばかりの日々で、私がライブハウスに通うきっかけになるひとりの人間に出会った。


2023.1

彼とはライブハウスじゃないところで偶然会って、「ライブハウスおいでよ〜見に来て〜」っていうそんな軽い一言で、『行ったことないし行ってみようかな』って思って、彼と出会った1ヶ月後(2023.2)下北沢の小さなライブハウスに足を運んだ。

声をかけてくれた彼は、あの日よりも凄いかっこよかった。音楽ってすごいな、かっこいいな、元気出るなって衝撃を受けた。

結局、彼じゃなくてその左にいたボーカルに私は心を打たれたけど。

そこからライブハウスに通うようになった。
色んなバンドに出会った。
音楽をすごい聞くようになった。

そんな彼らが有名になったのは一瞬で、1年間で大型フェスにも出るようになった。
私はライブハウスに彼らを見に行かなくなった。
音楽は聞いてたけど、なんか行く気が起きなかった。
今考えると、急に人気が出て一気に離れていく彼らを見ることが辛かったのだと思う。


出会った頃はライブ終わりに一緒にドリンク飲んで話とかしていたのに、よくDMで夜話していたのに。気づいたらそんな彼らはもう居なくて、寂しいなって。
バンドが売れるってこういうことなんだろうなって実感した。


彼らを見つけた時、Twitterでバンド名を調べても、公式アカウントのツイートしか出てこないのに、今調べたら、色んな人が「ライブ楽しかった!!」とか、日タグとか、たくさん出てくるようになったね。嬉しいなぁ。

どんどん人気になる彼らを見て、すごいなぁ。大きくなってるなぁってこっそりSNSで情報を確認する程度だった。

2023.10
久しぶりに行ったライブは、ボーカルの弾き語りライブだった。
第一声 「いつもありがとうね、手紙も読んでるよ。」
なんか、救われた気がした。
そういえば、この人は出会った時からずっとずっと ありがとう って言葉にしてくれていたんだ。わたしが気づかなかっただけなんだって思った。
久しぶりに聞いた彼の歌声は、相変わらず優しくて、あたたかくて、包み込んでくれた。
私は、彼が「廊下を走るな」を歌っているのを見て、選曲が彼らしいなぁって思って、彼に出会えてよかったなって、その日に改めて思った。

2024.2
彼らのツアーファイナル公演に行った。
700人くらいのライブハウス、ソールドアウト。
後ろの方で、そのバンドが巡り合わせてくれた大好きな友達たちと一緒にみた。


ちょうど一年前、初めて彼らを見に行った下北沢の小さなライブハウスで、30人くらいしか見ていなかったことを思い出した。


曲のつなぎ方、上手になったな。MCすごい話すようになったなって、色んな感情が溢れた。


この1年間で、700キャパのライブハウスを完売させられるバンドになったこと、こんなにたくさんの人がこのバンドのことを見に来ていることを、目の前でたくさんの拳が上がっているところを見て、後ろから実感した。感動した。嬉しかった。


どの曲も思い入れがあって、今まで4人と話したことを思い出して、彼らがかけてくれた言葉を一つ一つ思い返して、閉じ込めていた感情が溢れ出てきて、たくさん泣いた。

終演後、みんなで思い出に浸って、彼らが挨拶しに来てくれた時に、「え!久しぶりじゃん、元気?」って声をかけてくれたことが嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。

2024.3
私は幕張メッセに向かった。
大型フェス、サブステージのトリだった。
私は彼らを最前で見た。
後ろを見たらすごい人数の人がいた。
横には、初めて彼らを見に行った時に出来た友達がいた。幸せだった。
大きなステージでライブをする彼らは楽しそうだった。
大きいステージになればなるほど、楽しそうな表情をしているのを見て、人生で初めて好きになったバンドが、このバンドでよかったって思った。

何よりも、初めて見た時は少し自信がなさそうに下を向いていたボーカルの彼が、あんなにも笑って、前を向いて、お客さんのことを見て歌っている姿を見れたことが嬉しかったんだ。
君は本当に楽しそうにライブをするようになったね。素敵だよ。かっこいいよ。

そんな彼は、後日インスタグラムに
『「音楽やってて良かった」って思った瞬間ランキング暫定1位』
というコメントとともに、ステージに立つ彼の後ろ姿、そして、たくさんのお客さんが写っている写真をあげていた。

きっと彼のこのランキングはこれからも随時更新されていくと思う。1位はもう変わってるかもしれないしそんなことは全然分からないけど、私は「音楽やってて良かった」って思ってくれたことが本当に嬉しかった。

「数年前、1人でステージに立って、お客さんが居ないライブハウスで、後ろで腕を組んで立ってる大人しかいないライブハウスでライブをしていた」と話していた彼が、「音楽をやっていて良かった」と思える。


今では3人の仲間と共に大きなステージで、たくさんのお客さんが見ている前で歌っている。
きっとこれは彼の実力だし、完全に彼の努力だと思う。

彼がかく歌詞は、あたたかくて柔らかい。スポンジみたいに、辛いことも嫌なことも全部吸収してくれる。
私は彼がかく歌詞が好きだ。
言葉一つ一つがもちろんだいすきだ。

彼だけじゃない、ギターの子はとにかくいい音を出す。私好みの音を。
ベースの子はいーっつもにこにこしてる。初めて会った時、背高すぎてびっくりしたなぁ。君の明るさが私はとても好きだよ。
ドラムの子は作詞作曲ができる。私は彼が書く真っ直ぐな、直球な歌詞が好きだ。最近でた新曲も、彼らしくて私はとても好きだ。
私は4人がだいすきだ。


そんな彼らは今秋、キャリア初のワンマンツアーを開催する。

ツアーファイナルの会場のキャパは1300人。
1300人が彼らを見に来る。
彼らだけを見る時間が流れる。
考えるだけでわくわくする。

私は大好きな4人をまた見に行くんだ。

彼らがどんどん大きくなる姿をこの目で見に行くために。







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