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ミニ四駆を科学する~”重心”と、たからばこセッティングや走行性能との関係性を考察する~

[始めたばかりの方へ]ローラーセッティングって?で触れた「たからばこセッティング」。
記事内でも触れましたが、そのような配置のはずでもLCでコースアウトする場合もあり、その微調整には皆苦心するのはご存知のとおり。

LCでの状況を説明する時、マシンが左右いずれかに傾いてコースアウトする事を触れますが、その原因が”重心”とローラー位置の不適正と説明されるものの、「その重心とは何ぞや」と言う話はあまり出てきません。

なので「その重心とは何ぞや」と、たからばこセッティングや走行性能と、重心がどれだけの影響と関係性があるのかを研究してみました。

私が長い間色々調べてみたところ、本件にも関連する考察が一昔以上前に少しされた事があったようですが、その際結論には至って無かったようで、それも踏まえつつ、出来るだけの検証結果から答えを導いていきます。

先ずは「たからばこセッティングにおける片側ローラー3個が作る三角形の重心とマシンの重心高の相関関係」について。

まず、三角形の重心とは?

A.B.Cをローラーの接点として、それぞれのローラー間の真ん中から対角に線を結んだ中心が”G”で、ココが三角形の重心となります。

では、車体の重心とは?

ミニ四駆の前後左右の重心の出し方は、「車体バランスを考える」でも記述していますので、詳しい位置出しはそちらを参照いただきたいのですが、一般的に片軸シャーシの場合、大概はモーターと電池ホルダーの間または電池ホルダー付近となります。

問題は「重心高」です。
実車においても、計算式で弾き出すには非常に難しい話で、ミニ四駆においては安定感の有無程度にしか触れられていません。
ココの説明が無いから、「たからばこセッティング」をしても不完全で、マシンにより挙動が大きく変わります。

先に書いたように、重心高は計算式で弾き出すには難しいので、分かりやすい方法で説明します。

実車では、例えば上記のように車両を斜面の角度を変えてひっくり返るギリギリの角度を出してやる事で概ねの重心高が導き出せます。

ミニ四駆の場合、タイヤが大概ツルツルで車重も軽いので、あの様な角度になる前に滑って落ちてしまいますが、例えば、セッティングボードに楊枝を貼り、タイヤ外側に引っ掛け、ボードをタイヤを掛けた側に持ち上げていって、マシンがひっくり返りそうなギリギリを調べる事で、同じように概ねの重心高が導き出せます。

実際にマシンで見てみると、こうなります。

余程ボディ等が重い、電池落とし等で重いものを下げて搭載してなければ、大概が車体中心、シャフトの僅か上辺りとなります。
これが所謂一般的な「重心はシャフトの上辺り」の根拠です。

車体を横から見て、導き出された重心高と前後の重心位置を結んだ中心が、そのミニ四駆の重心点となります。
一般的には、車軸の僅か上辺り、モーターと電池ホルダー間辺りになるでしょう。
重心点は、電池落としや前後重量配分でも位置は変化します。

普通に考えれば、たからばこセッティングにおける三角形の重心と、車体の重心点(線)が一致するのが理想というか、1つの基準となります。
つまり、リアローラー間中心からフロントローラーを結ぶ線と重心高が一致している(またはローラー構成による三角形の重心と重心点が交差する)のが良いとなります。
一つの例えで、先を基準に一般的な配置でベストバランスなら、上記写真のようにフロントとリア下のローラーの2点で立たせることも出来ます。

何故、括弧書きで注釈したか?
先の基準はあくまで車体剛性の高い、その重心点がズレにくい場合であって、車体が非常に柔らかい、捻れるシャーシの場合は本来の基準よりフロントローラーの接点位置が下がります。
簡単に言うと、「捻れて最適位置に合う」ようにする必要があります。
最近のシャーシだとVZがそうで、素組みすると分かりますがフロントローラーは他シャーシより低い位置に配置されています。
これは、車体が旋回運動を始める時、速度と荷重により壁に押し付けられながらシャーシ上側に向かい捻れが発生し、マシンのフロントがアウトリフトします。この時、壁側のフロントローラーは、シャーシが捻れた事により本来の配置より高い場所を斜め下から上に噛んでいますが、この状態で配置の関係性が重心に寄って最適化されていくので安定します。
逆言えば、パワー強すぎると捻れが過多またはローラー位置が一般的(高い)でも、重心からズレるので飛んでいくとも言えます。
ココは運動性能にも直結する話で、詳しい話は別に原稿が必要なほど長くなり、私の検証不足もあるので、運動性能の話は別の機会に触れられたらと思います。


実際には上記のようにマシンにより前後にも上下にも重心点と三角形の重心との関係にズレを生じますし、それを運動性能でも一応の解決は出来る(私のようなノーマスダン・プラボディ提灯の場合は必要な考えの一つ)のですが、一般的には、不完全かも知れませんが、大概の人は今の立体ミニ四駆の構成上無意識でもその整合をさせています。

それは何か?

「マスダン」です。
立体では、マシンを安定させる為に、大概の人がサイドマスダンか、提灯でマスダンを付けていると思います。
重心点を基準に、三角形の重心を調べます。重心点を0とし、XY軸で考えます。重心点の位置が本来マスダンが叩く最適な位置ではあります。

で、セッティングする上でのポイントとしては “マシンの重心点とローラー三角の重心の位置関係をどうするか”でマシンの性格が変わりますが、作成された車体の重心点はほとんど変更出来ないので、普通はセッティングの際に変更するのはローラーによる三角の重心位置です。 
ローラーによる三角の重心位置変更は“三角形をどう変形・移動させるか”を考えるかなのですが、本来は先に書いたように重心点(線)と三角形の重心が重なるのが良いものの、マシンの構成上難しい場合、安定させる為に相対する位置に”別に重心を作る”かです。

電池ホルダー斜め上後ろあたりがX´、三角形の重心。その対称位置がY´。それがマスダンの位置になります。
三角形の重心は、立体の場合特にローラー配置により、重心点より高い位置に来る可能性が高く(主にバンクスルー等の理由から下側が短くなる為)、その為に最適位置より低い対称位置に重量物をおいてやる。
つまり、マスダンを重心点より「前に低く」となります。上記重心点と三角形の重心の距離までと同じだけ、相対位置にマスダンを配置させることでベストなバランスに近づきます。
これが「マスダンを前タイヤに近づけろ」と言われる理由でしょう。上記の話を簡単に言った例えで、知らずに闇雲に近づければ今度はバランスを崩します。

コレらを含めて、実際にはどうなるか?

写真は正転(VZ)ポン付けの場合で位置関係を調べています。

車体の重心点とローラーの三角形の重心、その相対位置にマスダンの配置位置が来ています。
私の提言では、ベストな位置になりますが、ローラーはほぼスターターパックと変わらない配置である事を考えると、メーカーのサイドマスダンプレートの長さは計算されている事が分かります。
そして、前ローラーとリヤ下段ローラーの延長線と重心線の交差する場所がほぼマスダン配置場所の軸線上で交差する点が興味深い。

ココから導かれるのは、このマシンの構成上、X軸線上の重心点と三角形の重心までとの距離と同じ分、相対位置が前ローラーとリヤ下段ローラーの延長線と重心線が交差する位置に持ってこれればローラー配置的には良く、マシンを安定させる為にはXY軸線上で重心点と三角形の重心と相対位置にマスダンを配置出来れば良いとなります。

ではFM車はどうなのだろうか?
基本的な概念は同じと思われますが、全てのシャーシを検証は出来ないので、手元の一番特異なFMXで確認します。

少なくとも私のマシンの構成上で言うと、ローラーの最適な位置は、X軸線上だと、三角形の重心から重心点と相対する位置を「0基準」に”重心点からの距離と相対する位置で、前ローラーとリヤ下段ローラーの延長線と重心線が交差する位置”に出来るのが、ローラー配置上は望ましい(写真だとタイヤの前付近)と分かります。
そしてマシンを安定させる為には重心点より若干前側、重心点下側に出来るの三角形の重心にマスダンを配置出来るのが良い(私のマシンは少々ズレていますが、検証の為、構成上可能な位置・付け方を複数試験し、確認した中でベターな位置で現状で落ち着いている)のが分かります。
これ位のズレならば、マルチセッティングウエイト等で前後バランスを取るか、提灯の調整でも実際何とかなるレベルではあります。

検証結果から振り返ると、

マシンの重心高

前後やじろべえの重心位置

ローラーの三角形の重心

マスダンの配置場所

ローラー配置微調整の有無

と、見えてくると思います。
勿論マシンを作っていく過程から確認するのがベストですが、既存のマシンを見直すにも基準となるでしょう。
そして、これらはローラーベース等でも変わっていきます。
特にLCで苦しんでる場合には、重心点と”たからばこセッティング”の関係性は有効と思われます。

私のこの提言は、過去の数少ない文献と長い時間繰り返してきた考察、多数の検証結果から導き出したものではありますが、絶対ではなく、本当は正しいものが別にあるかも知れません。
とはいえ、少なくとも私や本件を教示した方々は解決の糸口になっているのは間違い無く、公開する事で少しは皆さんの役に立てば幸いです😌




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