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ギヤを考える

最近ネットを見てると、ギヤの穴の遊びを無くしたものやギヤ加工ツールの話題など、ギヤ関係の話もよく見るようになった。
ざっと確認はしてるのだが、皆がやってるから、それが良いと言われたから、速そうだから。そんな感じなんだろうと思う。

ギヤの位置だしや抵抗抜き、ギヤ固定する事には目がいきやすいのですが、”ギヤの遊び”や”ギヤの大きさ”等について着眼してる人はどれくらい居るでしょうか?

ミニ四駆のギヤも工業製品であり、個体差があるのは一部知られてる話ではあります。
例えば、旧タグや当時物キットのカウンターと現行では大きさが違うとかは有名だし、ギヤ刻印の型番で違うとか、同じパッケージ内でも大きさが違うなんてのもある。

シャーシの基本設計は、その当時の規格内で作られていて、その都度修正が少しは入ってますが、時が流れるにつれシャーシ自体も混在しており、「(金型)何番がイイ」って話もよく出ますね。

たかが0コンマ数ミリ位だろうと思う人もいるでしょうが、ミニ四駆で0.4mm(ワッシャー1枚)が実車換算だと1.3cmも違うのです。噛み合うギヤ同士にこれだけ径の差があれば、またはシャーシ側が違えば、位置だしも必要になってくるのは理解出来ると思います。
試しに在庫のギヤを精密なノギスで測ってみて欲しい。

ギヤの遊びは、タミヤ製品の精度が悪くてある訳ではありません。
本当に精度が悪いなら、タミヤも流石にブランドを潰すような製品は売らないのは考えれば分かると思います。
つまり、許容範囲内で「ギヤが遊ぶように作ってある」のであって、許容範囲内のパーツの組み合わせ次第では、遊びは大きくも小さくもなります。
例えば、規格内であっても、市場流通しているシャフトは、その種類や生産時期でも微妙に太さが違います。
それが尚更に話を複雑にしてしまうのですが…。

駆動機械は理論上、適正な位置でほぼ無駄な遊び無く噛み続ける、不動かつ精密なクリアランスが理想ですが、ミニ四駆は精密機器ではなく「玩具」であるし、特に立体コースではアブソーバーも基本的に無い状態であるから、衝撃やタイヤロックの負荷はバカに出来ないものがあります。
場合によっては、あの堅いオレンジクラウンでさえ負荷で歯が欠けたり歪むのです。

たまに「逃げを作る」、「逃がす場所は○○ギヤ」等聞いた事があると思いますが、そうした負荷が掛かった時に、五月雨式に壊れないように、負荷が集中する場所を自分で意図的に作り出すことを指します。

ミニ四駆は、ノーマルをベースに耐久性を確保しつつバランスを保った構成であり、多少のロスを受け入れて、各ギヤの遊びが負荷を分散させているから壊れにくい。

ロスを減らして速度向上を目指すために、結果的にギヤ位置出しをするのですが、正確には、位置出しとギヤ固定は別の話です。

位置出しは、あくまで”最適な位置に留めおく”ことを目的とします。
ギヤを固定する(遊びを無くす)ということは、絶対的な位置関係を指し、ギヤそのものや、全体の構成そのものの極めて高い精度とクリアランスを要し、全てが揃って初めて本当の効果が出ます。
確かに、そのように固定されれば加速レスポンスが上がるのは間違いはないでしょう。

しかし、ギヤ固定の恩恵を受けるには、ウン百万の工業機械やマイクロゲージで徹底的にクリアランス管理され、TAMIYA製を越える程のパーツ精度や組み上げ精度に拘れるなら可能ですが、一般的なユーザーには概ね不可能な話です。
ギヤの穴を圧縮で小さくしたとして、ギヤの真円の中心にシャフトの中心を垂直直角にもってくるような神業を求めるのが一般的に極めて困難な事は分かると思います。また、一度変形させた素材は元々より弱くなります。
固定場所がズレれば逆にロスになり、場合によってはマシンが壊れます。
各ギヤが固定されていけば、最終的に負荷が集中するのは”モーター”で、最悪の場合すぐダメになります。
逆を言えば、遊びがあるから多少ズレても踊っても、受容して噛み続けられるということです。

ギヤ固定の問題点はもう一つ、「費用対効果が薄い」ことです。
ここまで頑張ったとして、極端に速くなることは無いし、”ギヤは消耗品”なので交換も出てくるからです。

それだけの労力とお金を掛けるのであれば、各ギヤを色々沢山買って、自分にベストなサイズ・型番を見分けて選別し、正しい位置だしを試みた方が、そしてメンテで毎回ギヤ交換した方が、他方面に労力が割けて結果的に速く出来ます。

せっかくなので、お寄せ頂いた豆知識(常識?)を1つ。
両軸と方軸で、同じ3.5:1(もちろん他のギヤ比でも)でも微妙にギヤ比は違います。
ギヤの歯数数えて計算すると分かりますが、知識として頭に入れておくだけでも良いでしょう。

ギヤの改造もトライする事自体は悪いことではないですが、有名であっても意外とちゃんと理屈を知らない事もある話です。そのような側面がある事は知っていて損は無いので、”優先順位”をよく考えて取り組んでもらいたいと思います。



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