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黒澤明全作レビュー『姿三四郎』

黒澤明の映画を全作レビューマラソンしてみたいと思います。まずは記念すべき第一作目『姿三四郎』(1943年公開)
戦時下に撮影された本作、当然内務省の検閲は入ったわけですがスカッとする活劇は大ヒットした。

かんたんにあらすじを紹介します。ネタバレしているので未見の方はそっ閉じください。
■田舎から上京してきた三四郎(藤田進)、闇討ちを見事撃退する矢野正五郎(大河内傳次郎)に衝撃を受け弟子入りする。
■その後メキメキと上達した三四郎、矢野以上ともいわれたが喧嘩っ早く人間の心が欠けていると矢野には指導された。やけになった三四郎は冬の池に飛び込みそこからみた蓮の花の美しさに人間の心を理解した。
■良移心当流柔術の達人、檜垣源之助(月形龍之介)が来訪し三四郎の兄弟子に重傷を負わせるなど実力を見せつけた。
■三四郎は門馬との対戦で死なせてしまう、、その娘の悲しい目。柔道を続けることに迷いがあった三四郎は女性小夜(轟夕起子)にであう。彼女は次の対戦相手良移心当流師範、村井半助(志村喬)の娘であった。三四郎は衝撃を受けるが尚名乗り立ち去った。
■警視庁武術大会では三四郎が技で村井を圧倒し勝利。その後村井は暖かい言葉を三四郎にかける。右京が原でのライバル檜垣との対決、三四郎は投げ技で勝利。三四郎は小夜への思いを胸に横浜から旅に出た


★1作目にして十分な黒澤映画になっているのがすごい。最後の決闘シーンなどは、吹きすさぶ風や速い流れの黒い雲など自然の方も黒澤的スペクタクルに力を貸してくれている。自然も黒澤明の味方なのだ!
黒澤映画というと三船敏郎と志村喬の印象が強いのですが、この一作目から5作目の『わが青春に悔いなし』までは藤田進が主役をはることが多かったです。当時は藤田進といえば新進のスター
誠実そうで芯のしっかりした男、不器用だけど戦ったら強い、そんなキャラにぴったりの藤田進
その後黒澤明映画=三船敏郎の時期が長く続きます、しばらく黒澤明映画にでてないけどどうなったんだ藤田進、、、しかし『隠し砦の三悪人』ではかの三船敏郎と重要な役でがっつりと組んでおり藤田ファンとしては非常にうれしいものがあります。その話は別途『隠し砦』レビューで

ヒロインは小夜(轟夕起子)、父を倒した敵の三四郎への密かな想い、、かなり当局の検閲で恋愛要素はカットされたらしいんですが、逆にいうと二人のほのかな気持ちがちょうどよく表現されているような、、、、
まあ今の映画はもっとドストレートで全部見せですからね

本作の有名なシーン、蓮の花をみてわが身を振り返る三四郎。このような印象的な小物使いもうまいですね

本作での敵方、檜垣を演じる月形龍之介の異様さも際立つ。ブレードランナーのガフを思い出す異様な風体なのであった。

黒澤明作品では主人公は単純に成長はしなくて悲劇的な結末を迎えたり、強靭な意思の力はあるんだけどなにか諦めの境地に達するみたいなケースが多い。特に三船敏郎期はそうですね
ただこの三四郎はシンプルで骨太のビルドゥングス・ロマンになっていて、大ヒットしたのもわかる。その意味では藤田進はぴったりの配役といえましょう

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