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第2回 人材派遣の闇。派遣会社は悪なのか?

転職エージェントを利用して派遣社員を募るという訳のわからないことが起きている昨今。
ピンハネ!ピンハネ!と中抜きを責められる派遣会社は本当に悪なのか?
転職エージェントがメインだけど、派遣の取り扱いもやっている会社からのクローズアップ現代+。(NHKは番組やめへんで)

派遣社員という雇用形態

日本では大きく分けて4つの雇用形態がある。
・正社員
・契約社員
・パート(アルバイト)
・派遣社員
ざっくり言うと、正社員が正規雇用、以下は全て非正規雇用という括り。
正規雇用と非正規雇用の最大の差は「雇用期間の定めの有無」であり、正規雇用であれば、よっぽどのことをやらかしたり、会社が潰れた・潰れそうという状況に陥らない限りクビになることは無いが、非正規雇用はちょっとしたことであっさりクビになってしまう。

コロナ禍の今、まさに問題視されているのが非正規雇用という雇用形態であり、特に簡単に切られるのは「派遣社員」という事実。
なぜ派遣社員が一番煽りを食っているかというと、働く会社と直接雇用契約をしているかしていないかの違いによるもの。
時給制として比較されやすいパートは企業と直接雇用を結んでいるので、シフトの数は減らされても、クビを切られるということはそうそうない。
派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社の顧客である、派遣先の企業で働く、すなわち、派遣先の企業が「もう派遣イラネ。」と言ったらそこで試合終了なのである。


ただ、これは「有期雇用派遣」という派遣形態の話で、派遣には様々な働き方があり…働き方によって色々異なるわけで…

有期雇用派遣と無期雇用派遣

言葉だと長くなるので図解↓

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有期雇用派遣は先に書いた通り、契約期間が定められているので、派遣先または派遣会社との契約が終了した途端に働けなくなってしまう。次の派遣先が見つかるとも限らず、待っていても無給であることから、有期雇用派遣で働く人達が転職を繰り返す要因の一つになっている。

一方の無期雇用派遣。この派遣形態は2015年の派遣法改正で新設された派遣雇用形態で、有期雇用の派遣社員を一定期間雇用した場合、無期雇用に転換することを義務化し、安定した就業の継続ができることを目的としている。
一見正社員と変わらない働き方に見えるが、正社員と異なるのは、雇用主はあくまで派遣会社であり、派遣社員として派遣先で勤務すること、別の派遣先へ移る際に、派遣先がスムーズに決まらず待期期間が発生した場合、給与補償があるものの、全額補償ではない
ということ。(6割補償が多い)
これを逆手に取り、盛大なアプローチをかけてきたのが大手派遣会社である。

「ほぼ正社員」として働かないか?

派遣法改正当初は「派遣社員無期雇用とかコストかかるーマジやべー」という空気感が満載だったが、大手派遣会社は考えることが違った。
求職者に対し「ほぼ正社員として働けるよ!」を売りにしてきた。
企業は企業で、容易に切り捨てしたい職種(主に事務職)や自社で用意するにはコストも時間もかかる職種(主にITエンジニア職)については派遣を使いたい。という思惑が合致したかどうかは定かでは無いが、現在、大手派遣会社は無期雇用派遣の社員を数百名単位以上で大々的に募集している。そしてその募集の手段として、転職エージェントを利用しているのだ。

派遣会社が大量雇用をするワケ

ここでピンハネ問題に触れてみたいと思う。
派遣会社は派遣先と「派遣社員一人あたりいくら」という形で契約を結ぶ。
派遣社員は派遣会社と契約を結んでいるため、社会保険料は派遣会社が負担する。
つまり、派遣社員に渡る給与に「派遣社員の社会保険料と儲け分」を上乗せした金額を派遣先の企業に請求する。(上乗せ部分を「マージン」と呼ぶ)

ピンハネ―!と叫ぶ人は、このマージンが全て派遣会社の取り分と思っているから。
社会保険料を差し引くと実はそんなに儲けは得られないというのはあまり知られていない。

Q. では、派遣会社が儲けるためにはどうしたらいいのか?

A. たくさん派遣社員を雇ってたくさん派遣する。

薄利多売を地で行くのが派遣会社なのである。
実際に名が知れていないような中小の派遣会社は集客力が弱く、派遣社員の人数が少ないため、結構運営が苦しかったりする。

派遣の何が問題なのか?

ここは求職者(派遣社員)目線と派遣会社目線とで分けたいと思う。

■求職者(派遣社員)目線
収入としては年収ベースだと正社員で働くのとそう変わらない、人によっては正社員で働くより稼げる。が、
日本の企業における「正社員経歴」信仰はまだまだ根強く、有期雇用だろうが無期雇用だろうが結局「派遣社員=非正規社員」とみなされるので、後々の転職に響いてくる。既に転職回数が多い人にとっては死活問題。
職種によっては、年齢が上がってくると仕事が無くなる(派遣先が決まらない)という事態も発生する。
派遣で働く人こそ、明確なキャリアビジョンを持っていないと流されるだけの人生になってしまうことを強調しておきたい。

■派遣会社目線
大手派遣会社が幅をきかせ、非正規雇用という波に流されるがままの人材を多数輩出し、回収せずにそのまま放置していること、一部大手派遣会社が日本政府とズブズブの関係であることが、派遣の待遇もイメージも向上しない原因と言えよう。派遣法改正の話題が出ると、とある大手派遣会社が絡んでいると思っていい。
更にこのとある大手派遣会社、就職に失敗した新卒を淡路島にかき集め、契約社員として2年間、農業やサービス業を中心に派遣。座学含め様々な研修を受けながら社会人としてのスキルを積むことができる。という制度を打ち出したのも記憶に新しいだろう。
とても良さそうな内容に思えるが、2年間のキャリアは非正規社員で、その後の転職にプラスになるかは甚だ疑問、それよりも給与の低さと天引き内容に愕然とした。
日本人全員が有能というわけではない。新卒からいきなり派遣社員として働いたら?氷河期世代のように自己責任で片づけるのか?
儲け最優先の大手派遣会社が日本の雇用を牛耳っていると言っても過言ではない状態が、「派遣は悪」を生み出してしまっているのである。

そんなの派遣で働くメリットゼロじゃん

派遣の取り扱いを行っている会社に所属している身としては、デメリットばかりを書き連ねるわけにいかず、派遣で働くメリットはゼロでは無いこともお伝えしておこう。
明確なビジョンさえ持っていれば悪くない働き方である。下記にメリット例を記載する。

①未経験からチャレンジできる
若年層に限られてしまうが、大手派遣会社の無期雇用派遣は未経験職種への就業が可能なものがある。
例えば事務職の場合、Office系ソフトが使えないばかりか、タッチタイピングすら怪しい…という程度でも就業できたりする。(ポテンシャル採用なので、人柄の良さと就業意欲を見る。)
ただし、自分でスキルを上げて行く努力が必須。努力ができない人は派遣法改正の罠にまんまと引っかかるだけである。
スキルが上がると派遣先の業務グレードが上がり、給与も上がっていく。
確実にスキルを身に付けたい、かつ転職回数が少ない20代にオススメの働き方。

②派遣先にそのまま引き抜かれる
仕事ぶりが優秀であれば派遣先から「直接雇用に切り替えたい」という申し出が来ることも。大手企業の正社員として働くことも夢ではないのだ。
別記事として取り上げようと思うが、派遣は紹介予定派遣というシステムも存在し、派遣先の企業に直接雇用されることが前提の働き方もある。

③とにかく自分都合で働きたい
完全に経験者でスキルが高いことが前提の働き方だが、有期雇用であれば自分の希望するエリア・時間・日数で働くことができる。
即戦力になれるけど、キャリアアップとかを考えていない経験者にオススメである。
派遣社員としては、本来これが正しい働き方でもある。約20年前までは派遣法の規制があり、専門職のハイスキルな人材しか派遣社員として働けなかった。

狙われているのは情報弱者

派遣という働き方自体が悪というわけではない。物は使いようで、派遣社員として上手く世渡りしている人もいる。
派遣社員を儲けの手段としか見ていない派遣会社が悪であり、その派遣会社がターゲットとしているのが情報弱者である。
これだけネットが普及した時代なのに、何も調べず、派遣会社の誘導に素直に応じてしまう人は後を絶たない。
転職活動全般に言えることだが、「その雇用形態で、その会社で」働くメリット・デメリットをしっかり把握した上で、今後自分はどうなっていきたいのか?ということを常に念頭に置いて動く力が問われている。

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