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第13回 昭和63年、実質昭和最後の年。

昭和天皇は昭和64年に入ってすぐ崩御されたので、昭和63年(1988年)が実質昭和最後の年である。
筆者、小学校1年生になる年。まだ世の中の景気なんてわからなかったあの頃。
当時の新聞が丸っと出てきたので、タイムスリップ。

1988年3月14日の新聞

先日、庭で収穫したさくらんぼを持って、私と夫双方の実家に届けてきた。
その際、夫の母から「ちょうど良かった、これ持って帰ってちょうだい。」と渡されたのが、夫の大学の卒業証書等、学生時代の品々。

夫は実家を離れるときにほとんど持ってきたつもりでいたらしいのだが、大学の卒業証書なる大事なもの(※資格取得などで学歴証明のため必要になることがあります。卒業証書がない場合、学校に卒業証明書を出してもらわないといけないので、卒業証書があった方が便利です。)が放置したままだったらしい。

渡された袋から、古めかしい新聞が覗いていたのだが、受け取った時点では気にせずにいた。

その日の行程を全て済ませ、家に戻って一息ついたときに、「あの新聞何?」と夫に聞いてみると、夫も記憶になかったらしく、二人で広げて見ることにした。

その新聞の日付の前日が日本の一大イベントだった。

「青函トンネル開通」
「青函連絡船運航終了」

当時の夫(日付当時小学5年生)は日本の歴史の中でも、とても大きな出来事だ!と思ったらしい。
政治や事件事故ではなく、交通の歴史の1ページが変わったことが一大事と思ったのが何とも夫らしい感じがした(笑)

そして一枚ずつページをめくり、私の目が釘付けに。

2021年の新聞の求人広告

私の実家も夫の実家も同じ新聞を取っており、そんな二人が結婚したのだから、当然今も同じ新聞を取っている。

今朝の新聞の求人広告欄における求人広告数はたったの7件だった。

求人が埋まらなさ過ぎて、「求人情報」の大きな文字だけで1段使っている。
それでも足りなくて、最低賃金、完全週休二日制と週休二日制の違い、月給とは?、社会保険完備とは?、履歴書の写真はどんなものが良い?という、ありがたいのか何なのかよくわからない情報を載せてしまっている。

また、求人広告を掲載してくれる会社があまりにも少ないことから「ITとコールセンターの社員募集は1回分の掲載料金で最大4回ご掲載いただけます!」の告知さえも載せている。

新聞社も中々の死活問題である。

1988年の新聞の求人広告

見開き全て求人で埋め尽くされていた。(更に他のページにも求人広告あり)
そして今より新聞の文字サイズが小さい。

今となってはほぼ見かけない三行広告(「求む!〇〇」と連絡先しか書いていない)もびっしりで、読み出すと目眩がしそうな構成になっている。

インターネットが無い時代。
フリーペーパーもあまり存在していなかっただろう時代。

求人媒体のメインが新聞であったと言っても過言ではない。

賃貸不動産も同様である。
SUUMOやat homeなんぞあるはずもなく、「瞬湯、バ歩4分※」とか書いてある時代。

※「瞬間湯沸かし器付き、最寄りのバス停まで徒歩4分」の意

まだバブルが崩壊する前、日本の景気が最高潮を迎えようとしていた頃__求人の中身も少しご紹介しようと思う。

最低賃金500円

東京の最低賃金が508円。地方は430〜460円程度が主流の年。
今のほぼ半分である。

大卒初任給が15万円程度。

今も当時も物価がほとんど変わっていないのに、その賃金で十分にやっていけていた、むしろ潤っていた。ということは、私達が今何に金をむしり取られているかわかってしまう現実。
消費税なんていう税金も無かった頃である。賞与から税金が引かれることもなかった。

そして今とは比にならないくらい、考えられないくらい求人数が少なかったのに、最低賃金を地で行く職種があった。

介護職である。

介護職の待遇が改善しない真髄を見た気がする。

今と変わること、変わらないこと。

「女子一般事務員募集。19歳〜30才位迄。」
「営業募集。25才〜35才位迄の男子。」

書きたい放題である。

しかし、現在も一般事務員は「20代女性」を求めている会社がほとんどなので、実態は変わりないし、実態が変わらないのなら、正直に書いてくれてあるほうが逆に親切なようにも思えてくる。

賃金の額は異なるが、職種による給与差も今と同等である。

賃金以外で今と大きく違うのは、経理事務に求められる資格が、簿記の他に「珠算」ということだろうか。
そろばんを弾ける人が優遇されていた。
保育士が「保母」、社宅の管理人が「寮母」という性差表現も今とは異なっている。

IT系の求人がポツポツ出始めたのはこの頃だ。

聞いたことのない会社だらけ

びっくりするほどたくさん求人企業はあれども、今も現役という会社は半数満たないと思われる。
最近無くなったな。という会社もある。
会社を30年維持するのは容易ではない。

いつか片っ端から生存企業の検索をかけてみたいが(笑)1件胡散臭い募集内容の求人があった。

「システム説明と入会案内」の仕事。女性のみ限定。当時で月給20万円〜と高給。

会社の名は「アルトマン」

こんなの詐欺系かネズミ講だろ!と調べてみた。

日本初の婚活マッチングシステムを導入した、西ドイツ発の日本法人だった。

○ーネットとか、ネット婚活では主流になっているシステムのハジマリ。

西ドイツの戦後の復興→高度成長からの離婚急増、出生率の急減→国総出で何とかしなくちゃ!→婚活マッチングシステム開発という、まぁどこぞの国と経緯が全く一緒ですね!というところから、次のマーケティング先として日本が選ばれたらしい。

成果報酬型のお見合いシステムとは違い、サブスク型は敬遠されるのでは?という懸念は関係なかったようで、このマッチングシステムは空前のヒットになった。
「あなたの結婚相手をコンピュータで〜」がウケた。

きっと求人も婚活アドバイザー増員募集だったのだろう。
当時は婚活という言葉はなかったので、「結婚」の一言でも入れてくれたら何の仕事かすぐわかるのに…
いや、入れなくても「アルトマン」だけで、当時の人達は何屋かわかっていたくらいにメジャーな会社だったのかもしれない。

じゃあ胡散臭い会社じゃないんだ!失礼した!と安心したのも束の間、

「アルトマンシステム事件」

モテない男性がシステム上でもモテなくて、2週間に最低2人は紹介してくれるって言ったのに!!(その他も色々!)と訴えたらしい。

アルトマン側のシステムのズルい調整がバレて(釣り的な)、バブル期の財テクにも失敗。
バブル崩壊と共に弾け飛んだ会社だった。

昔の求人からは、そんな時代背景も読み取れるから面白い。

求人情報量は今の方が圧倒的

おそらく求人数が当時のように戻ることはないだろう。
ただし、求人1件の求人情報量は、現在の方が圧倒的に多い。
時給や月給の記載すらなく、「委細面」で他は電話番号しか書いていなかったら……当時はそれに応募している人が相当数いた。
口約束で就業して、泣き寝入り。のような人も多くいただろう。

求人情報開示について、特に労働待遇面の開示の精度は厳しくなり、たくさんの情報が得られるようになったことは大きな進歩である。

そんな情報を得られる時代にも関わらず、昭和と同じ泣き寝入りをする人がいる。
情報弱者にも程があると思ってしまう。

必要情報開示に表情を曇らせる会社は止めておけ

転職エージェント経由で応募した企業の情報は、エージェントが動いてくれるので得やすいが、それ以外の応募でも、不明点は必ず問い合わせるべきである。
まともな会社はしっかり開示してくれる。

先日とある企業のエージェント向け説明会に参加したが、普通なら口が裂けても言わない内情を話していた。
その内情を猛省し、立て直したいということだった。
真摯に採用を行っている会社であれば、そういう内情までしっかり話してくれるはずなのだ。

話はズレてしまったが、昔と今を比較することで見えてくる背景、違い、不変性、それを鑑み、これからどう動くべきか。
転職に限った話ではない。
感染症、災害、何でもそうである。
先人に習うべきこと、改善すべきことを見極めながら令和を生きて行きたいものである。



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